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旅の仲間

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~前回までのあらすじ~
 シノ様がフミル王国に行くと言い出したので反対したら、機嫌を損ねました。絶対よした方がいいと思うんだけどなぁ。

 ***

 喧々諤々の議論の結果、とりあえずはサイラス山のトモン峠を目指すことになった。行ってみてダメそうならまた考えるのだ。

 現在地はナンキの町から西にしばらく行ったところにあるサラウイ山系の丘陵地帯。茶色の土と新芽を出した背の低い灌木が生い茂る場所だ。
 ボクらはそんな場所を、道を探しながら毎日とぼとぼと歩き続けている。

 さて、ここでイカレた仲間たちを紹介しよう。

 まずはアズマ。
 たぶん二十歳にならないくらいの筋肉男だ。

 髪は短く刈り上げ、手には盗賊から巻き上げた槍。時々、剣がないと落ち着かねぇ、とか物騒なことを言い出す。
 シノ様ともセリナさんともよくケンカするトラブルメーカーだ。

 最近まで上半身裸で血に黒ずんだ白のズボンを穿いたクレイジーな格好をしていたが、今は近くの村で手に入れたくすんだ茶色の布を身体に巻き付けている。

 しかし彼の鍛え上げられた身体の魅力は布切れ一枚程度には収まらない。
 ちらりと覗く横腹とかがセクシーな気配を漂わせ、夜になると寒そうにして、ボクに、あれやってくれよ、とせがむ。

 仕方がないのでボクが火の霊力を送り込んで身体を温めてあげると満足そうにして寝入り、しばらくするとまた寒いと言いだす。
 あの術はずっと使い続けないと意味が薄いのだ。
 使おうと思ったらボクはずっと起きていなきゃいけないし、相応に疲れる。

 あんまり眠いからめんどうになって、なら身体を寄せなよ、と言うと、アズマは嬉々としてボクの身体をがしっと引き寄せる。
 ボクを動かすんじゃなくてお前が寄れよ。

 するとボクを引きはがされたシノ様が文句を言い出す。

「あんた、あっち行ってなさいよ」
「寒みーんだよ。凍死させる気か」
「しなさいよ。それが嫌ならゴドーさんにでも温めてもらえば」
「ゴドーのおっさんにか?気持ちの悪いこと言ってんじゃねぇ、張っ倒すぞ」

 どうやらボク以外の誰にも頼めないらしい。シノ様ともセリナさんともそりが合わないから。

 早くどこかで服を手に入れてほしい。

 シノ様が睨んでくるし。

 さてお次はゴドーさん。
 中年の槍使いだ。

 アズマと同じぐらいの背丈があって、がっしりとした体つきをしている。いでたちは基本的に黒ずくめで、帽子を脱ぐと見える髪に混じる白が目を引く。
 黒いから威圧感があって夜に見たら結構怖いんだけど、実のところ優しいおじさんって感じ。歩いていてもよくボクのことを気遣ってくれる。

 アズマと同じように髪は短く刈り上げて、頭には布を巻き付けた帽子を被っている。身体にはズボンとシャツを着て、その上に黒い布を巻き付けるようにゆったりと着込んでいる。
 手には重そうな槍。これも黒い。それから腰に三つくらいナイフを差している。一つが食事用、もう一つが山刀、もう一つが戦闘用っぽい。

 熟達した戦士といった感じで、気遣いのできる優しい紳士でその上強いなんて、アズマなんてぽぽいのぽいだ。
 あとセリナさんのキス攻撃を止めてくれたこともあったのでその点も好感度が高い。

 ゴドーさんには国に帰れば奥さんと子どもたちがいるらしい。

「うちの次男がな、大きくなったらお父さんみたいになるって言ってくれるんだ。
 昔は俺も子どもなんて面倒だとしか思ってなかったが、いざできてみるとこれが可愛い。俺みたいになるって、戦士になんてなっちまったらどうしようと慌ててるところだ。早死にはしてほしくないからな」

 ゴドーさんはしみじみと語っていた。

「ゴドーさんもですよ。どれだけ強い人でも死ぬ時にはすぐですから。ボクのお父さんは護衛士として働いていたんです。強い人だと思ってたけど、突然いなくなりました」

 ボクが言うと、何も言わずに頭を撫でてくれた。
 ちょっと止めてよ、泣いちゃうから。

 次はセリナさん。
 まだ若そうに見えるけど、一体いくつなんだろう。二十代か三十代か、そんな感じ。
 呪術師らしいけど、よく分からない。でもゴドーさんと組んでるってことは腕が立つんだろう。

 髪は長く伸ばして後頭部で結わえていて、その上からゴドーさんと同じように帽子を被っている。
 全身をゆったりと覆うくすんだ白のマントのようなものを身につけているのだけれど、マントの内側は太ももの露出した短いパンツに胸元の大きく開いた艶やかな緑色のシャツを着ている。

 ちょっと、旅向きな服装とは言い難い。

 ゴドーさんが言うには、あれはボクみたいないたいけな少年を誘うための服で、ちゃんと重ね着するための服は別で持っているらしい。

 いや、ボクは女の子だから!

 そう主張したらセリナさんは結構ショックを受けていたように見えた。
 きっとプライドに傷がついたんだろう、その後ボクに対する態度がちょっと冷たくなった。

 いや、勝手に勘違いしたのはそっちだろ!
 きっ、キスなんてしやがって……。
 ボク、初めてだったのに……。
 傷ついた心はお金じゃ解決しないんだよ……。
 うう、シノ様に上書きしてほしい。
 言わないけど。
 言えないけど……。

 えーと、気を取り直して。
 最後はシノ様。

 シノ様は以前と変わらない目の荒い布で作られたくすんだ茶色の上着に緩やかに広がった白いズボンを穿いて、頭にはボクと同じように帽子を被っている。
 肩口まで伸ばした髪は頭の後ろでまとめてオレンジ色のひもで縛り、耳には緑色の石が光る。
 腰には黒塗りの鞘に反りのある短めの剣が収められて帯に挟まれ、鍔の飾りが時折ちりりと涼やかな音を立てる。

 肩から灰色の大きな布を身体に纏わせるように垂らしているのは物入れで、ここには何でも入っている。
 呪術に使う符とか、物を書く道具とか、ちょっとした食糧とか、とにかくふとした時に欲しくなるものがいろいろだ。

 ボクが紹介したいのは何と言ってもシノ様の服の刺繍だ。
 襟元や袖口、裾などのほつれやすいところに生地の補強を兼ねて施されている。

 刺繍は幾何学模様を組み合わせたもので、風邪をひきませんように、とか、危険から守られますように、とか、そういうお守りとしての意味もある。
 布自体は着古されて色もくすんでいるから、新しい糸の明るい色がよく目立って絶対素敵になったと思う。

 実はこれ、ボクがこつこつ縫い込んでいったんだよね!

 シノ様は、ボクがせっせとやっているのを見て、いいよー、大変そうだし、と微妙な顔をしていたけど、できあがってみたら喜んでくれた。

「へー。かわいい!」
 最後に刺繍を入れた帯を渡したら、シノ様はボクの前でくるりと回って笑った。

 ボクはその姿を見てご満悦だった。
 うん、うん。やっぱり可愛い子には可愛い服が似合うね!

 そして願わくは、刺繍した魔除けがシノ様を守ってくれますように。
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