メゾンドストレンジはこちらです

この町では今、近日オープン予定のとあるお化け屋敷が話題になっていた。

その名は『メゾン・ド・ストレンジ』。

それは、あたかも自分がVR空間の主人公になったかのように体験できるお化け屋敷だ。
森の匂い、風のそよぎ、ものをさわる感触などが完璧に体験できる。

どうやら、ただのヴァーチャルリアリティではないらしい。

そんな時、ホラー好きの大早子規は学校帰りに、史上最高の幽霊・サイコと出会う。

サイコは子規の名前を「オバケ・ヤシキ」と勘違いし、メゾン・ド・ストレンジのお化け屋敷コーディネーターに勧誘しに来たのだ。

そう、メゾン・ド・ストレンジとは幽霊と妖怪たちが運営するお化け屋敷だったのだ。

誤解はとけたものの、どうしてもサイコの話が気になった子規。
勧誘を受け入れ、ウワサのお化け屋敷のコーディネーターとなった。
店長であるキュウビと打ち合わせを重ねながら、次々とお化け屋敷のストーリーを書いていく子規。

そして『よくない人形』というストーリーで、これまでで一番の絶叫を引き出すことに成功する。

初めは一台だったVRゴーグルも、追加で四つに増やし、順番待ちを減らした。
幽霊・妖怪たちはお客さまの絶叫に毎回大喜び。
人間たちの恐怖の表情にお腹を抱えてヒイヒイ笑う。

それに子規は嬉しくなると同時に、もっとがんばって怖いストーリーを書こうと思った。

しかし怖すぎて、泣かれてしまうんじゃないかと心配になったこともあった。
その時には、キュウビが「むしろ、喜ぶべきだ。怖いものを書いたのだから。

そんなことは〝怖くなかった〟といわれたときに、悩むべき」と励ましてくれたのだった。

ある日、友人の一颯が遊びにやって来た。
ホラー好きの一颯はただのお化け屋敷では驚かない。

つまり、『本物が目の前に現れる』。

キュウビとサイコの正体をバラす……それが、一颯にとっての恐怖だった。

子規はホッと胸をなで下ろす。
「よかった。一颯に最高の恐怖体験を味あわせてあげられた」

表紙:ノーコピーライトガールさま
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