アポロ・ファーマシー

中靍 水雲

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7-1 ヒュギエイアの整腸薬

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 ミンティの住む森は、秋になると黄金色に一色になる。
 なので妖精たちは、秋が大好きだった。
 もちろん春は桜のネックレスが作れるので大好きだし、夏は虹色のシロップがかかったかき氷が食べれるので大好きだし、冬は秋の間に作ったもこもこ綿毛の毛布にくるまって飲むコーンスープが飲めるので大好きなのだけど。
 妖精たちにとって、秋はお祭りなのである。
 黄金で町が彩られる、素晴らしいお祭。
「さて。今年も、もうすぐでイチョウ町に秋がくるわねえ」
 涼しくなってきた風を浴びながら、ミンティはハンモックで伸びをする。
 羽を休めるには、あみあみのハンモックが一番なのである。肩がこらない。
 その時ふと、「そういえば。」とミンティは思いを巡らせた。
「あの子、何してるかなあ。今ごろ。元気かなあ」
 妖精の気まぐれだった。
 暑かったあの日に遊んだ人間のことを思い出したのだ。かくれんぼをして遊んだ。
 モコとか言う、天然パーマの女の子。
「さて、そろそろ帰りましょ」
 ミンティはハンモックから身を起こし、羽をはためかせた。
 大きな木の根元に建っている可愛いログハウス。ミンティはそこで妹といっしょに住んでいた。
「ただいまあ。……ライム? もうお昼なのに、まだ朝につけたランプを消してないの?」
 ライムのお気に入り、藤の花のランプ。
 そのスイッチを消し、ミンティは家のなかをのぞいた。
 ベンチソファに、ライムの羽が見えた。
 それを見て、ミンティは何かを一瞬で悟り、ライムに駆けよった。
「ライム、大丈夫っ?」
 案の定、ライムの顔は真っ赤だ。汗もかいている。
 あきらかに、体温が高い。熱があるようだった。
「はやく、氷まくらを……!」
 ミンティはライムを寝室につれて行き、寝かせると、頭の下に氷まくらを敷いた。
「えっと、あとは薬……!」
 ミンティは、まっすぐに玄関を飛び出すと、ひんやりした風に小さな体を乗せて、羽をはばたかせた。
 目指すは、アポロファーマシーだ。
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