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2-6 アプロディテの吐息
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モコは家に着いたとたん、ランドセルを置くと、そのままアポロファーマシーに急いだ。
玉野に、エイキが薬局に来てくれることを報告しなければならない。
アポロファーマシーのドアを開ける。
カラン、と言うドアベルの音とともに店内のいい香りに気づく。
玉野が、窓際のテーブルでお茶を入れていた。イスには、エイキが座っている。
玉野に出されたよくわからない透明の赤いゼリー状のものを見つめているようだった。
「エイキくん。もう来てたんだ」
「行くって言っただろ」
玉野にイスを引かれ、モコもエイキの正面に座った。二人して、赤いゼリーをつつく。
すると、スプーンをくわえたまま、エイキが口をへの字にした。
「あっま。何だよ、これ」
「えっ。お口に合いませんでしたか。ジェーロ・ディ・メローネ」
「聞いたことない。何だ、それ」
首を傾げるエイキの向かいで、モコはゼリーをもぐもぐと食べ進める。
プルプルとしたジューシーな食感に、シナモンとジャスミンの甘く華やかな香り。そのなかに、みずみずしくフルーティな味わい。
「スイカのゼリーだ。そんなに甘くない。おいしいよ」
「甘すぎる。俺、甘いの苦手なんだ」
「もう、わがままだなあ」
「うるせ」
言いながらも、仕方なさそうにゼリーをつつく、エイキ。出されたものは、文句を言いながらも完食するタイプらしい。
すぐに食べ終わると、ごくごくとティーカップのお茶を飲み干した。
「今日は爽やかなルイボスティーにしてみました。一宮さま、いかがですか?」
「スースーする。不思議な味」
空になったティーカップをソーサーに戻す、エイキ。
「あのさ、症状がもっとくわしく分かれば、いろいろ対処できるって聞いたんだけど」
「ええ、もちろん。どんな症状でもご安心を。アポロファーマシーには万能薬しかありませんから」
玉野に、エイキが薬局に来てくれることを報告しなければならない。
アポロファーマシーのドアを開ける。
カラン、と言うドアベルの音とともに店内のいい香りに気づく。
玉野が、窓際のテーブルでお茶を入れていた。イスには、エイキが座っている。
玉野に出されたよくわからない透明の赤いゼリー状のものを見つめているようだった。
「エイキくん。もう来てたんだ」
「行くって言っただろ」
玉野にイスを引かれ、モコもエイキの正面に座った。二人して、赤いゼリーをつつく。
すると、スプーンをくわえたまま、エイキが口をへの字にした。
「あっま。何だよ、これ」
「えっ。お口に合いませんでしたか。ジェーロ・ディ・メローネ」
「聞いたことない。何だ、それ」
首を傾げるエイキの向かいで、モコはゼリーをもぐもぐと食べ進める。
プルプルとしたジューシーな食感に、シナモンとジャスミンの甘く華やかな香り。そのなかに、みずみずしくフルーティな味わい。
「スイカのゼリーだ。そんなに甘くない。おいしいよ」
「甘すぎる。俺、甘いの苦手なんだ」
「もう、わがままだなあ」
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