上 下
75 / 75

9-11 闇オークション

しおりを挟む
 トウヤが眠る向かい側のソファでは、ふてくされた表情のバッコが足を組み、座っていた。
「バッコ」
「何かな」
「今、地獄に着いたザザから連絡があったぞ」
「なんだって?」
「〝すっかり忘れてたけど、懐中時計はすみやかに返してね〟だと」
「……仲良かったんだね、きみたち」
 バッコが口笛を吹くと、手に持っていた懐中時計が消える。
 ザザの元へ返ったらしい。
 サクマの驚いた表情に、バッコは得意げに「ふふん」と鼻を鳴らす。
「俺は、闇のバイヤーからね。一度場所を把握した品物は口笛ひとつで呼び寄せ、そして用が済んだら元の場所に戻すことができるんだ」
 人間だったら大問題だけど、鬼はそうでもないらしい。
「お前、これからどうするんだ」
 ルドンが言うと、バッコは大きくため息をついて、足を組みなおす。
「……俺はこれからも、人間にもっと恐怖を味合わせたいと思ってるよ。それが、鬼である俺の仕事であり、誇りなんだもん。閻魔大王みたいに、公平な判決なんて知ったこっちゃないね。俺は俺の考えて、動くよ。これまでも、そしてこれからもね」
 そう言い残し、バッコは現れた闇の中へと消えていった。
 サクマはルドンを見上げる。
「ねえ、ルドン。さっき言いかけていた、バッコがルドンに負けた理由って……なんなの?」
「ああ……」
 ルドンはどこか遠い目をして言う。
「バッコは、あんな感じで飄々としているが、頭が固過ぎるところがある。だから、闇に取り憑かれやすいんだ。鬼として、あれほど致命的な弱点はねえよ。闇に取り憑かれた鬼。そんなのはな……ただの化け物だ。だから、俺はあいつを兄として、きちんとしつけてやんないといけねえのさ」
 そう言って、ルドンは店のカウンターの中へと入って行った。
 棚のなかの試験官には、もうひとつも恐怖の虫は入っていない。
 ルドンはこれからまた、たくさんの恐怖体験を買い取っていくのだろう。
 ザザに言われた頼みを思い返す。
 そして、思った。
 スプーキーリサイクルの店主であるルドンがこれからまたどんなものを買い取るのか、もう少し見ていたい、と。

 ——草笛町にある不自然な空き地。
 そこには、ある噂があった。
 夕方の逢魔が時になると、近くて便利なリサイクルショップ「スプーキーリサイクル」が現れる。
 どんなものを売るか。
 それは、あなた次第——。


 おわり
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

呟怖千夜一夜

だんぞう
ホラー
twitterにてハッシュタグ「#呟怖」をつけて投稿している136文字怪談作品をまとめたものになります。 お題の大半はいただいたお題です。 霊や妖怪、名前もないナニカ、田舎の因習、人怖から意味怖、時には奇譚、猟奇、艶のある話からカニバリズム、クトゥルフまで、話ごとにテイストが異なります。ごくたまに実話も混ざることも。 毎晩、零時に一話ずつお届けする予定です。 他の場所(NOVEL DAYS)でまとめていた呟怖が千話を超えたので「千夜一夜」というタイトルを付けましたが、こちらへはお題画像の転載を基本行わない予定なので、お題画像がないと楽しめないものは省いたり、また、お題画像の使用許可が降りなかったものを画像なしで載せたりなど、差分は多々あります……というか、なんだかんだでほぼリライトしていますね。中には全くの新作も混ざっています。 念のためにR15をつけておきます。

怪異の忘れ物

木全伸治
ホラー
さて、Webコンテンツより出版申請いただいた 「怪異の忘れ物」につきまして、 審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。 ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。 さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、 出版化は難しいという結論に至りました。 私どもはこのような結論となりましたが、 当然、出版社により見解は異なります。 是非、他の出版社などに挑戦され、 「怪異の忘れ物」の出版化を 実現されることをお祈りしております。 以上ご連絡申し上げます。 アルファポリス編集部 というお返事をいただいたので、本作品は、一気に削除はしませんが、順次、別の投稿サイトに移行することとします。 まだ、お読みのないお話がある方は、取り急ぎ読んでいただけると助かります。 www.youtube.com/@sinzikimata 私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。 ※タイトルに【音読済】とついている作品は音声読み上げソフトで読み上げてX(旧ツイッター)やYouTubeに順次上げています。 百物語、九回分。【2024/09/08順次削除中】 「小説家になろう」やエブリスタなどに投稿していた作品をまとめて、九百以上に及ぶ怪異の世界へ。不定期更新中。まだまだ増えるぞ。予告なく削除、修正があるかもしれませんのでご了承ください。 「全裸死体」、「集中治療室」、「三途の川も走馬灯も見なかった。」、「いじめのつもりはない」は、実体験の実話です。 いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

孤独な戦い(1)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

やってはいけない危険な遊びに手を出した少年のお話

山本 淳一
ホラー
あるところに「やってはいけない危険な儀式・遊び」に興味を持った少年がいました。 彼は好奇心のままに多くの儀式や遊びを試し、何が起こるかを検証していました。 その後彼はどのような人生を送っていくのか...... 初投稿の長編小説になります。 登場人物 田中浩一:主人公 田中美恵子:主人公の母 西藤昭人:浩一の高校時代の友人 長岡雄二(ながおか ゆうじ):経営学部3年、オカルト研究会の部長 秋山逢(あきやま あい):人文学部2年、オカルト研究会の副部長 佐藤影夫(さとうかげお)社会学部2年、オカルト研究会の部員 鈴木幽也(すずきゆうや):人文学部1年、オカルト研究会の部員

ちーちゃんのランドセルには白黒のお肉がつまっていた。

犬咲
ホラー
 ちーちゃんのランドセルに詰まっていた白黒ぶちの肉っぽいなにかと、ひとりぼっちのちーちゃんの話。  ほのぼのホラーファンタジー。  全7話。7月20日、なんとか完結しました。  キーワードに苦手な物がある方は、ご注意ください。

処理中です...