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9-8 闇オークション

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 バッコは時計の針をくるくると回しながら、ギザギザの歯をルドンに見せつけた。
 鬼や妖怪、幽霊たちがどよめき、叫ぶ。
「人間界に地獄だって……!」
「本気なのか、バッコ!」
「地獄と人間界、両方のルールが崩れたら、俺たちどうなるんだッ?」
 これまでの〝平和な日常〟が変わる。
 それは、人間以外にも恐怖となるようだった。
「る、ルドン……! 僕たち、どうすれば……!」
 サクマが叫ぶと、ルドンはニヤリと笑ってほほ笑んだ。
 それは今までに何度も見た、不敵な笑顔だった。
「サクマ。安心しな」
「本当……?」
「ああ、あいつの好きにはさせねえよ」
 ——パリーン!
 バッコの力によって大きくなりかけていた鏡が、突然割れた。
 破片が、きらきらとあたりに降り注ぐ。
 サクマはそれを呆然と見上げた。
「なんだこれは! 何が起きたんだ?」
 苛立ち、叫び散らすバッコに、ルドンは冷静に返した。
「バッコ。現閻魔大王が誰なのか、忘れたのか」
「ああ?」
「俺じゃねえ。ザザだ」
 バッコの目が、忌々しそうに見開かれる。
「あいつがやったのか!」
「ああ。ザザは俺よりもよっぽど冷静だぜ。お前のやることなんざ、お見通しなのさ」
「どうして……! 懐中時計は盗んだことがバレないようにしたし、痕跡は全て残さなかったはずなのに」
「どうしてだって? それはバッコ、お前が……」
 そこで、ルドンは息をつまらせた。
 バッコから視線をそらし、投げ捨てるように言う。
「バッコ、終わりだ。〝あの〟言葉を言え。そうすれば、今回のオークションは終わり、闇は去る」
 すると、バッコは悔しそうに顔を伏せた。
 そして観念したような力ない声で、それを呟いた。
「……〝もう朝だ。それでは今日は……おやすみなさい〟」
 すると、嵐のように闇オークションが去っていく。
 まばたきの瞬間に、目の前はいつも通りのスプーキーリサイクルに戻っていた。
 時間を見ると、まだ今日の逢魔が時の最中だった。
 ルドンが言っていた通り、これっぽっちも時間は進んでいない。
 しかし……。
 いつもは客が座るソファに、見慣れないすがたがあった。
 サクマが訝しげな目を向けると、彼はすっくと立ち上がった。
「やあ~。仕事の最中だったんだけど、やっぱり心配でね。すっ飛んできちゃったよ」
「あ、あの、あなたは……」
「ぼくは、ザザ。地獄で閻魔大王をやってるよ」
「ええ、あなたが……ザザさんっ!」
 見れば、着ているものもさっきまでのルドンとよく似ている。
 ルドンと違い、体格は細かったが、それでも地獄の裁判長だけあって、そのオーラはすごかった。さすが現閻魔大王!
 ただ……。
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