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8-4 死神

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「死神に会えた。死神って、もっとおどろおどろしいものだと思ってたから、驚いたな。死神がこんなにしゃべりやすいとは思わなかった」
 自然と笑顔がこぼれた。
 こんなふうに笑ったのも、何日ぶりだろう
 いや、何か月ぶりなのかもしれない。
 ここのところ、ずっと気分が沈んでいたから。
 死神も来たことだ。
 やっとこの苦しみから解放されるだろうな、と思ったよ。
「えっと、きみ。名前なんだっけ。……木曽川トウヤ、十一歳。……うん、なるほどね」
 死神が俺のことが書かれた名簿のようなものをながめて、うんうんとうなずいている。
 いきなり、どうしたんだ?
「トウヤくん。もう少しだけ、ここでサボらせて」
「えっ、死神の仕事は?」
「大丈夫。まだ定時まで、よゆうある。午前四時まではギリギリセーフ」
 そう言って、死神は床に置いた鎌を拾うと、大きくふりかぶった。
 そして、その刃を俺のほうへと振りおろしてくる。
 ツインテールがやけにゆっくりと揺れていた。
 ああ、なんだ。
 やっぱり時間だったんじゃないか。
 さようなら、もう思い出せない俺の家族。
 さようなら、何も刻まれなかった俺の人生。
 これでやっと、本当に楽になれるんだ。

 *

 気が付くと、真っ白い天井があった。
 見慣れた天井だ。
 ここは、俺がいつも寝ているベッド。
 いつも過ごしている、真っ白な部屋だ。
 ……どうして。
 俺は死神の鎌で死んだはずじゃあ、ときょろきょろあたりを見渡していると。
「おはよう、トウヤくん。もう朝だよ!」
 顔を上げると、ツインテールの死神がいた。
 相変わらず、ガイコツの仮面をつけているんだけど、死神のくせに陽気なしゃべり方だから、その下がどんな表情をしているのか、だんだんとわかるようになってきていた。
 今はどうやら俺に、にこにこと笑いかけているようだ。
「お前、俺に何をしたんだ?」
「ちょっと、いたずらしちゃった」
「い、いたずら……?」
「きみに、冥土の土産をあげたくてね」
「何だよ、それ」
 ベッドから体を起こし、ようやく気づいた。
 一人用のベッドしかなかった部屋に、もうひとつ大きなベッドが置かれている。
「なんの冗談だ、これ」
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