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8-2 死神
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サクマは胸が締め付けられるのを感じた。
見間違えるはずもない……トウヤだ。
サクマは、ポケットに入れているスマホに無意識に触れる。
——バイブが鳴った。
コックリさんからのラインだ。
【コックリさん
トウヤってば、体をどっかに落としてきちゃったのかなあ】
「え……っ?」
驚くサクマの声に、ルドンがスマホを覗き込む。
「なるほど。目の前の彼は、正真正銘のトウヤのようだ」
「どういうこと……?」
「バッコの、何かしらの罠だってことだ」
ルドンは「ったく、アイツは昔っからよお」と髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。
「ねえ、ルドン。ずっと言おうと思ってたんだけど、ルドンはどうして僕らの味方をしてくれるの? バッコとはどういう関係なの?」
「……それは」
ルドンが言いかけた時、トウヤが「あの」と声をあげたので話は中断されてしまった。
トウヤはキョロキョロと店を見渡しながら、サクマたちの方へと歩み寄ってくる。
まるで、初めて店にやってきたかのように。
「あの、ここが恐怖を買い取ってくれるリサイクルショップですか?」
「と、トウヤ……?」
サクマは動揺を隠しきれない。
「トウヤ、覚えてないの?」
「何を……? お前、誰だっけ。俺たち、どこかで会ったことあった?」
「そんな……!」
サクマはトウヤのそばに駆け寄り、その手を握る。
トウヤの皮膚から、ひんやりとした冷気が伝わった。
サクマはびっくりして、その手を引っ込めた。
(トウヤの体……死んだように、冷たい!)
その時、スマホのバイブが勢いよく震える。
見ると、コックリさんからラインが来ていた。
【コックリさん
トウヤってば、呼んでも返事してくれなーい。体も心も冷たくなっちゃった】
ルドンが、サクマを引き寄せた。
「トウヤは今、魂ごとバッコに操られているみたいだな。バッコがどこから見ているかわからん。あまり近づくな。お前も神隠しされるかもしれない」
「わ、わかった……」
サクマは泣きそうになるのをグッと堪え、トウヤをソファへと案内した。
トウヤの向かいに、サクマとルドンが並んで座った。
「それで? きみは今回どんな恐怖を持ってきてくれたのかな」
「話すだけでいいのか? それだけで、買い取ってくれるんだっけ」
「そうだよ。前もそうしただろ」
ルドンの言葉に、トウヤはキョトンとする。
「あんたも、隣のそいつみたいなこと言うのか。悪いけど、俺……何も知らないんだよな。さっきまで、自分の名前すらわからなくてさ」
「へえ。さっきまできみはどこにいたんだ」
ルドンが言うと、トウヤは「えーと」とななめ上を見上げる。
「俺、昨日までずっと白いな病院のようなところにいたんだ。長い間、ベッドの上にいた……ように思う。そうしたら……昨日、死神がやってきたんだ。ついにこの日が来たかって思ったよ」
見間違えるはずもない……トウヤだ。
サクマは、ポケットに入れているスマホに無意識に触れる。
——バイブが鳴った。
コックリさんからのラインだ。
【コックリさん
トウヤってば、体をどっかに落としてきちゃったのかなあ】
「え……っ?」
驚くサクマの声に、ルドンがスマホを覗き込む。
「なるほど。目の前の彼は、正真正銘のトウヤのようだ」
「どういうこと……?」
「バッコの、何かしらの罠だってことだ」
ルドンは「ったく、アイツは昔っからよお」と髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。
「ねえ、ルドン。ずっと言おうと思ってたんだけど、ルドンはどうして僕らの味方をしてくれるの? バッコとはどういう関係なの?」
「……それは」
ルドンが言いかけた時、トウヤが「あの」と声をあげたので話は中断されてしまった。
トウヤはキョロキョロと店を見渡しながら、サクマたちの方へと歩み寄ってくる。
まるで、初めて店にやってきたかのように。
「あの、ここが恐怖を買い取ってくれるリサイクルショップですか?」
「と、トウヤ……?」
サクマは動揺を隠しきれない。
「トウヤ、覚えてないの?」
「何を……? お前、誰だっけ。俺たち、どこかで会ったことあった?」
「そんな……!」
サクマはトウヤのそばに駆け寄り、その手を握る。
トウヤの皮膚から、ひんやりとした冷気が伝わった。
サクマはびっくりして、その手を引っ込めた。
(トウヤの体……死んだように、冷たい!)
その時、スマホのバイブが勢いよく震える。
見ると、コックリさんからラインが来ていた。
【コックリさん
トウヤってば、呼んでも返事してくれなーい。体も心も冷たくなっちゃった】
ルドンが、サクマを引き寄せた。
「トウヤは今、魂ごとバッコに操られているみたいだな。バッコがどこから見ているかわからん。あまり近づくな。お前も神隠しされるかもしれない」
「わ、わかった……」
サクマは泣きそうになるのをグッと堪え、トウヤをソファへと案内した。
トウヤの向かいに、サクマとルドンが並んで座った。
「それで? きみは今回どんな恐怖を持ってきてくれたのかな」
「話すだけでいいのか? それだけで、買い取ってくれるんだっけ」
「そうだよ。前もそうしただろ」
ルドンの言葉に、トウヤはキョトンとする。
「あんたも、隣のそいつみたいなこと言うのか。悪いけど、俺……何も知らないんだよな。さっきまで、自分の名前すらわからなくてさ」
「へえ。さっきまできみはどこにいたんだ」
ルドンが言うと、トウヤは「えーと」とななめ上を見上げる。
「俺、昨日までずっと白いな病院のようなところにいたんだ。長い間、ベッドの上にいた……ように思う。そうしたら……昨日、死神がやってきたんだ。ついにこの日が来たかって思ったよ」
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