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8-1 死神
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闇オークション開催まで、あと一日。
あと一匹、黒い虫が手に入れば闇オークションの開催地をスプーキーリサイクルにすることができる。
しかし、その一匹がなかなか手に入らないまま、今日を迎えてしまっていた。
何しろ、逢魔が時にしか開かない店だ。
客は一日に一人くればいいほう。
「こんなんじゃ、闇オークションをここに呼べないよ~」
「焦っても仕方ねえよ、サクマ。来ることを信じて、待つしかねえだろ」
ルドンは、黙々と買い取った商品を清掃している。
ここで買い物をしている人なんて見たことがない。
前にそのことをルドンに聞いたら、「たまーに妖怪や悪魔が来て買ってくぜ」と言っていた。
なるほど。そっち側の客に需要があったらしい。
仕方なく、サクマも焦る気持ちを抑えつつ、作業していく。
それでも何となく集中できないでいると、コックリさんからラインが届いた。
【コックリさん
トウヤだ! トウヤが帰ってくる!】
「え?」
トウヤは今、神隠しされ、バッコに捕われているはずなのに。
「どう言うこと……?」
「サクマ、どうかしたのか」
作業の手を止め、ルドンがサクマの手元を覗き見る。
画面に映る内容を見て、頭をぼりぼりと掻いた。
「ルドン、これって……」
「ああ、こいつが言うならそうなんだろうなあ」
「でも、トウヤはバッコに捕まってるはずじゃ」
「コックリさんは、動物霊の集合体だと言ったよな」
「う、うん……前に聞いた」
「動物霊は、俺たちが使う神通力と似た、不思議なちからを持ってるんだ。それは、予知能力」
「ええ! そうなの?」
「災害が起きる前日は、ナマズが暴れたり、犬がたくさん吠えたり、鳥たちが群れをなしてどこか遠くへ飛んでいくといったすがたを見かける。つまり動物にはきみたち人間には察知できないものを感じ取れる能力があるということだ。それは、コックリさんとなった今でも健在というわけだな」
「それじゃあ、トウヤは本当に……」
「まあ、それが〝本物のトウヤ〟なのかは、実際に会ってみねえとわからねえ」
サクマはハッとする。
バッコの作戦の可能性もある、ということに。
ニセモノを寄越して、油断させるつもりなのかも知れない。
何しろここは鬼が経営する店だ。
そして相手は、鬼のバイヤー。
サクマは、これから何が起こっても動じないようにしなければ、と唇を引き結んだ。
その時。
スプーキーリサイクルの入り口に、誰かが立っているのが見えた。
サクマにとっては、毎日遊んでいた友達の、見慣れすぎているシルエットだ。
あと一匹、黒い虫が手に入れば闇オークションの開催地をスプーキーリサイクルにすることができる。
しかし、その一匹がなかなか手に入らないまま、今日を迎えてしまっていた。
何しろ、逢魔が時にしか開かない店だ。
客は一日に一人くればいいほう。
「こんなんじゃ、闇オークションをここに呼べないよ~」
「焦っても仕方ねえよ、サクマ。来ることを信じて、待つしかねえだろ」
ルドンは、黙々と買い取った商品を清掃している。
ここで買い物をしている人なんて見たことがない。
前にそのことをルドンに聞いたら、「たまーに妖怪や悪魔が来て買ってくぜ」と言っていた。
なるほど。そっち側の客に需要があったらしい。
仕方なく、サクマも焦る気持ちを抑えつつ、作業していく。
それでも何となく集中できないでいると、コックリさんからラインが届いた。
【コックリさん
トウヤだ! トウヤが帰ってくる!】
「え?」
トウヤは今、神隠しされ、バッコに捕われているはずなのに。
「どう言うこと……?」
「サクマ、どうかしたのか」
作業の手を止め、ルドンがサクマの手元を覗き見る。
画面に映る内容を見て、頭をぼりぼりと掻いた。
「ルドン、これって……」
「ああ、こいつが言うならそうなんだろうなあ」
「でも、トウヤはバッコに捕まってるはずじゃ」
「コックリさんは、動物霊の集合体だと言ったよな」
「う、うん……前に聞いた」
「動物霊は、俺たちが使う神通力と似た、不思議なちからを持ってるんだ。それは、予知能力」
「ええ! そうなの?」
「災害が起きる前日は、ナマズが暴れたり、犬がたくさん吠えたり、鳥たちが群れをなしてどこか遠くへ飛んでいくといったすがたを見かける。つまり動物にはきみたち人間には察知できないものを感じ取れる能力があるということだ。それは、コックリさんとなった今でも健在というわけだな」
「それじゃあ、トウヤは本当に……」
「まあ、それが〝本物のトウヤ〟なのかは、実際に会ってみねえとわからねえ」
サクマはハッとする。
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ニセモノを寄越して、油断させるつもりなのかも知れない。
何しろここは鬼が経営する店だ。
そして相手は、鬼のバイヤー。
サクマは、これから何が起こっても動じないようにしなければ、と唇を引き結んだ。
その時。
スプーキーリサイクルの入り口に、誰かが立っているのが見えた。
サクマにとっては、毎日遊んでいた友達の、見慣れすぎているシルエットだ。
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