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7-4 観覧車
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——ガタンッという激しい音とともに、観覧車が止まってしまったのです。
カエデとチサは抱き合いながら、「何」「嘘でしょ」と顔を青ざめています。
不安がるふたりのようすに、何かしなければと、私はスマホを取り出しました。
SNSの検索ボックスに『**遊園地 観覧車』と打ち込みます。
もしかしたら、という微かな希望を抱いてのことでした。
(観覧車、何組か乗っているのが見える。もし、SNSをやっていれば、メッセージでやり取りができる。何もしないよりは、周りと情報を共有したほうがぜったいにいい……お願い、誰か投稿して……)
すると、たった今、書き込まれた投稿が!
『**遊園地きてんだけど、観覧車とまった。おわったわ』
私はすぐに、その書き込みに返信をしました。
『初めまして。私も今その観覧車に乗っています。何があったんですかね』
『どうも。この観覧車、ボロかったですからね。遊園地自体も閉園するみたいですし、観覧車も限界だったのかもです』
『**遊園地が閉園するの、知ってたんですね』
『そりゃね。この遊園地好きだったんで』
『ええ、私もです』
すると、目の前で怯え、体を寄せ合っているカエデとチサが言いました。
「マユナ。何してるの」
「この観覧車に乗ってる他のお客さんが、SNSでコメントを投稿してたから、色々話を聞いてるんだ」
「観覧車、どうなるって? ねえ、落ちちゃうのかな。このまま」
涙を浮かべながら、言う二人に私はなんと返せばいいのかわかりませんでした。
観覧車が落ちるだなんてできれば考えたくない。
まだ、死にたくなんてない。
カエデとチサは、双子みたく同じような角度で、ジッと外を見つめています。
そのようすが何故か一瞬マネキンのように見えて、私はゾッとしました。
その頃からでしょうか。
私も、ふたりのように、恐怖に取り憑かれはじめたのは。
二人が、合成音声のような抑揚のない声で語りかけてきました。
「ねえ、マユナ。私らがいるゴンドラの位置、そんなに高くないんじゃないかな」
「ドア開けてさ、骨組みをつたってったら、下に降りられるんじゃないかな」
観覧車は時計回りに上っていっています。
そして、私たちがいるゴンドラの現在地は時計でいう〝九〟の位置。
まだ上り始めている途中の位置です。
しかし、そうはいっても地上からの高さは八十メートルほどはありました。
落ちたら、ただではすみません。
「ほ、本気で言ってるの?」
「何で?」
「この高さから落ちたら、死ぬんだよ」
「このままここにいたって、死ぬだけじゃん!」
吐き捨てるように言いながら、カエデが観覧車のドアに手をかけます。
しかし、何度ガチャガチャとやってもドアが開きません。
「そんな! どうして。カギがかかってる」
「そうか。外からしか開けられないんだ。乗るときにスタッフさんがカギかけてたよね。……あっ、ねえ待って。ここにカギ穴があるよ」
チサがドアの取っ手の下に、小さなカギ穴があるのを見つけました。
カエデとチサ、二人だけでどんどん話が進んでいくのを私はただ、呆然と見ていることしかできません。
「観覧車は普通、スタッフがいる外側からしか開けることはない。なのに、中にカギ穴があるってことは……もしかして! 非常時に乗客がドアを開けられるようにこのゴンドラのなかにカギが置いてあるんじゃないっ?」
カエデとチサは抱き合いながら、「何」「嘘でしょ」と顔を青ざめています。
不安がるふたりのようすに、何かしなければと、私はスマホを取り出しました。
SNSの検索ボックスに『**遊園地 観覧車』と打ち込みます。
もしかしたら、という微かな希望を抱いてのことでした。
(観覧車、何組か乗っているのが見える。もし、SNSをやっていれば、メッセージでやり取りができる。何もしないよりは、周りと情報を共有したほうがぜったいにいい……お願い、誰か投稿して……)
すると、たった今、書き込まれた投稿が!
『**遊園地きてんだけど、観覧車とまった。おわったわ』
私はすぐに、その書き込みに返信をしました。
『初めまして。私も今その観覧車に乗っています。何があったんですかね』
『どうも。この観覧車、ボロかったですからね。遊園地自体も閉園するみたいですし、観覧車も限界だったのかもです』
『**遊園地が閉園するの、知ってたんですね』
『そりゃね。この遊園地好きだったんで』
『ええ、私もです』
すると、目の前で怯え、体を寄せ合っているカエデとチサが言いました。
「マユナ。何してるの」
「この観覧車に乗ってる他のお客さんが、SNSでコメントを投稿してたから、色々話を聞いてるんだ」
「観覧車、どうなるって? ねえ、落ちちゃうのかな。このまま」
涙を浮かべながら、言う二人に私はなんと返せばいいのかわかりませんでした。
観覧車が落ちるだなんてできれば考えたくない。
まだ、死にたくなんてない。
カエデとチサは、双子みたく同じような角度で、ジッと外を見つめています。
そのようすが何故か一瞬マネキンのように見えて、私はゾッとしました。
その頃からでしょうか。
私も、ふたりのように、恐怖に取り憑かれはじめたのは。
二人が、合成音声のような抑揚のない声で語りかけてきました。
「ねえ、マユナ。私らがいるゴンドラの位置、そんなに高くないんじゃないかな」
「ドア開けてさ、骨組みをつたってったら、下に降りられるんじゃないかな」
観覧車は時計回りに上っていっています。
そして、私たちがいるゴンドラの現在地は時計でいう〝九〟の位置。
まだ上り始めている途中の位置です。
しかし、そうはいっても地上からの高さは八十メートルほどはありました。
落ちたら、ただではすみません。
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「何で?」
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しかし、何度ガチャガチャとやってもドアが開きません。
「そんな! どうして。カギがかかってる」
「そうか。外からしか開けられないんだ。乗るときにスタッフさんがカギかけてたよね。……あっ、ねえ待って。ここにカギ穴があるよ」
チサがドアの取っ手の下に、小さなカギ穴があるのを見つけました。
カエデとチサ、二人だけでどんどん話が進んでいくのを私はただ、呆然と見ていることしかできません。
「観覧車は普通、スタッフがいる外側からしか開けることはない。なのに、中にカギ穴があるってことは……もしかして! 非常時に乗客がドアを開けられるようにこのゴンドラのなかにカギが置いてあるんじゃないっ?」
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