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7-1 観覧車

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「とても怖い思いをしたので……買い取っていただきたいんです。私の記憶を……」
 ソファに座る津島マユナは震える両手を膝の上で組んだ。
 それでも、手の震えが止まることはない。
「そんなに怖い思いをしたんですか……」
 サクマの問いに、マユナは目をつむり、頷く。
 ガタガタの字でサインされた、保護者同意書を見つめながら、ルドンは言った。
「これ、本当にきみの保護者のサインなんだよな」
 ビクリと肩を弾ませたマユナは、そのまま黙り込んでしまう。
 大きく息をついたルドンは目を細める。
 目の前のマユナを観察するように。
「サクマ。接客を頼む。俺は査定表をつけるから」
「わ、わかった。それじゃあ……、津島マユナさん。まずはあなたが売りたい恐怖を教えてください」

 【津島マユナ 観覧車より降るものは】

 どうか聞いて下さい——昨日のことです。
 私は中学の友人らと、地元に古くからある小さな遊園地に行ったんです。
 年季の入ったメリーゴーラウンドに、色褪せたコーヒーカップ。
 私が小さな頃は、もう少しカラフルだったんですけどね。
 時の流れは残酷、ってやつでしょうか。
 なかでも園の目玉である観覧車なんかは、乗るとギシギシと音を立てるくらいです。
 ゆっくり眺めを楽しむのが観覧車の醍醐味でしょう。
 なのに、スリルを味わいたい人におすすめ、なんて言われてるんですよ。
 今にも落ちそうだから、という由来から〝不吉〟なんてあだ名までつけられてるみたいです。
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