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6-8 石の意志

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「うわっ?」
「なんだ、これ」
 ケイトとタイシの消えかけていた体が、巨大蜘蛛の巣にぴったりと引っ付く。
「大切な商品を傷つけないようにするには、こうやって網を張るのが一番だよ。さあ、エレガントにいこうか」
「させるか!」
 ルドンは、バッコを捕らえていない方の鬼の爪をぐんぐん伸ばす。
 そして一定の長さになったとき、それは五本の指から銃弾のように発射された。
 蜘蛛の巣を見事に打ち抜く。
 糸は切られ、巣から解放されたふたりの魂がすうっと消えていく。
「ああっ、何だよもう!」
 バッコが悔しそうに唇を噛む。
「ルドン! あのふたりはっ?」
「大丈夫だ。あの石の呪いから解放されるには、石の名前を逆さまから呼んでやればいい。さっき、ふたりに教えておいた。今、公園に向かってるだろうさ」
 サクマはホッと胸をなで下ろす。
「さあ、さっさとトウヤの魂も解放しな」
「ルドン。言っておくけどね」
 バッコはルドンの爪から逃れると、一回転し、カウンターの上に降り立った。
「俺は、俺の信念で仕事をしているだけだよ。きみはもっと〝昔の頃のように〟クールに仕事をするべきなんじゃないかな。そんなんじゃ、客に足元を見られるだけだよ。そうか、君は人間の魂は食べないベジタリアンだったねえ。今でも、虫を食っているのかい。それとも人間の女子が好むスイーツとやらかな。落ちぶれたものだねえ、アッハッハ」
 そう言い捨てると、まばたきの瞬間にバッコの姿はそこからいなくなっていた。
「サクマ」
 ルドンの姿はいつの間にか、元に戻っていた。
「トウヤのスマホ、ちゃんと持ってるか」
「う、うん」
「ちゃんと持ってろよ。今後、何があるかわからねえからな」
 ルドンの言葉に、サクマはズボンのポケットに入れていた、呪われたスマホをギュッと握りしめる。
 今のところ、スプーキーリサイクルの商品を掃除するときにしか使っていない。
 初めはトウヤのスマホなのだし、気が引けた。
 しかし、使わないとコックリさんから次々にラインが来るのだ。
 『私を使ってよお』と。
 このごろは、慣れたものでコックリさんとラインのやり取りをしている。
 トウヤが見たら、びっくりするだろうなあと思いながら。
「ルドン」
「なんだ」
「改めて、お願いするよ。トウヤを救いたい。手伝ってほしい」
「今更だろ。安心しな……必ず助けるさ」
 さあ。
 そろそろ、今日の逢魔が時が終わる。
 刻々と、闇オークション開催の日は、近づいていた。
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