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6-7 石の意志
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「もういいよ、ケイト。気にするな」
タイシとケイトが泣きながら抱き合うのを、サクマは悲しそうに見つめていた。
「まさかきみたちまで、バッコが関わっていたとはな」
「え……?」
ルドンがハッキリと口にした名前に、サクマの背筋にゾワッとしたものが走る。
トウヤを神隠しし、闇オークションに出品しようとたくらむ鬼のバイヤー・バッコ。
「ルドン。このふたりがこんなことになったのも、バッコのしわざなの……?」
「やつは例の公園の石を利用して自動的に魂をたくさん回収し、闇オークションに出品しようとしていたんだ」
「そんな……!」
バッコのせいで、また魂にされてしまった人を目の当たりにして、サクマは胸が締め付けられるようだった。
「それじゃあ、あの石はやっぱり普通の石じゃなかったんだね」
「恐らく、バッコが用意した、〝魂のゆりかご〟のひとつだろう」
「その通りだよ、ルドン」
突然、朗らかなトーンの声が天井から降ってきたので、その場の全員が反射的に上を向く。
「いやはや、俺としたことが。まさか、魂のゆりかごが満タンで、せっかくの魂を取りこぼしちゃうとはね」
「バッコ……!」
「ふふ。でもちゃあんと、そこのふたつの魂を回収しに来たよ☆」
見上げると天井から、全身真っ黒の男がコウモリのようにぶら下がっている。
その男の頭からは、ヤギのようなグルグルとしたツノが二本生えている。
ニコニコと笑顔を浮かべながら、バッコは四人を見下ろしていた。
「まったく敏腕バイヤーなのに、失態失態。定期的にゆりかごの中身はチェックしていないといけないねえ」
「バッコ。いつからそこにいた」
ルドンがパチンと指を鳴らす。
頭のツノが伸び、目つきが鋭くなっていく。
黒い爪が刃物のように尖っていく。
瞬間——ドンッという鈍い音が店内に響き渡る。
サクマが気づいた時には、ルドンの爪がバッコの上等そうなスーツの肩口に食い込んでいた。
バッコは天井に縫いつけられ、身動きが取れなくなっている。
「バッコ、この間の人間の魂はどうした。ポッドキャストとかいうので、たぶらかしたトウヤって子の魂だよ」
「〝魂のゆりかご〟にいれて大切に保管しているよ。大事な商売道具だからね」
聞きなれない単語に目を丸くするサクマ。
「なんなの、その魂のゆりかごっていうのは」
「鬼があらゆる魂を保管するために使う穴のことだよ」
ルドンがバッコを睨みつけつつ、答えた。
「神通力を使って、空間に穴を空ける。そこに、魂を保管すんのさ。それを鬼は魂のゆりかごと呼ぶんだ」
「じゃあ、あの石にも穴が空けられていたの?」
「石は、確かにあの公園の都市伝説だったみたいだが……バッコはそれを利用しようとしたんだろう。強制的に穴を空けられたんだ」
バッコが「はあ~」と大げさにため息をつく。
「そもそも、ルドン。きみって、商売の仕方が本当に下手だよね」
「あ? なんだよ、急に」
「非効率的っていうかさ! 恐怖を手に入れたいんなら、魂ごと手に入れたほうが早いじゃん。なのに、いちいちこんな店まで作って人間と取引をするなんて。どうして? もっと現実的に商売をすべきだよ」
「そんなの、俺の勝手だろうが」
「あらら。商売人としては俺のほうが先輩なんだから、ありがたいアドバイスだと思うんだけどなあ。あ! それより早く回収しないと! せっかくの魂が浄化しちゃうね」
バッコが、ピュウと口笛を吹く。
すると店内にどろどろっと、大きな蜘蛛の巣が現れた。
タイシとケイトが泣きながら抱き合うのを、サクマは悲しそうに見つめていた。
「まさかきみたちまで、バッコが関わっていたとはな」
「え……?」
ルドンがハッキリと口にした名前に、サクマの背筋にゾワッとしたものが走る。
トウヤを神隠しし、闇オークションに出品しようとたくらむ鬼のバイヤー・バッコ。
「ルドン。このふたりがこんなことになったのも、バッコのしわざなの……?」
「やつは例の公園の石を利用して自動的に魂をたくさん回収し、闇オークションに出品しようとしていたんだ」
「そんな……!」
バッコのせいで、また魂にされてしまった人を目の当たりにして、サクマは胸が締め付けられるようだった。
「それじゃあ、あの石はやっぱり普通の石じゃなかったんだね」
「恐らく、バッコが用意した、〝魂のゆりかご〟のひとつだろう」
「その通りだよ、ルドン」
突然、朗らかなトーンの声が天井から降ってきたので、その場の全員が反射的に上を向く。
「いやはや、俺としたことが。まさか、魂のゆりかごが満タンで、せっかくの魂を取りこぼしちゃうとはね」
「バッコ……!」
「ふふ。でもちゃあんと、そこのふたつの魂を回収しに来たよ☆」
見上げると天井から、全身真っ黒の男がコウモリのようにぶら下がっている。
その男の頭からは、ヤギのようなグルグルとしたツノが二本生えている。
ニコニコと笑顔を浮かべながら、バッコは四人を見下ろしていた。
「まったく敏腕バイヤーなのに、失態失態。定期的にゆりかごの中身はチェックしていないといけないねえ」
「バッコ。いつからそこにいた」
ルドンがパチンと指を鳴らす。
頭のツノが伸び、目つきが鋭くなっていく。
黒い爪が刃物のように尖っていく。
瞬間——ドンッという鈍い音が店内に響き渡る。
サクマが気づいた時には、ルドンの爪がバッコの上等そうなスーツの肩口に食い込んでいた。
バッコは天井に縫いつけられ、身動きが取れなくなっている。
「バッコ、この間の人間の魂はどうした。ポッドキャストとかいうので、たぶらかしたトウヤって子の魂だよ」
「〝魂のゆりかご〟にいれて大切に保管しているよ。大事な商売道具だからね」
聞きなれない単語に目を丸くするサクマ。
「なんなの、その魂のゆりかごっていうのは」
「鬼があらゆる魂を保管するために使う穴のことだよ」
ルドンがバッコを睨みつけつつ、答えた。
「神通力を使って、空間に穴を空ける。そこに、魂を保管すんのさ。それを鬼は魂のゆりかごと呼ぶんだ」
「じゃあ、あの石にも穴が空けられていたの?」
「石は、確かにあの公園の都市伝説だったみたいだが……バッコはそれを利用しようとしたんだろう。強制的に穴を空けられたんだ」
バッコが「はあ~」と大げさにため息をつく。
「そもそも、ルドン。きみって、商売の仕方が本当に下手だよね」
「あ? なんだよ、急に」
「非効率的っていうかさ! 恐怖を手に入れたいんなら、魂ごと手に入れたほうが早いじゃん。なのに、いちいちこんな店まで作って人間と取引をするなんて。どうして? もっと現実的に商売をすべきだよ」
「そんなの、俺の勝手だろうが」
「あらら。商売人としては俺のほうが先輩なんだから、ありがたいアドバイスだと思うんだけどなあ。あ! それより早く回収しないと! せっかくの魂が浄化しちゃうね」
バッコが、ピュウと口笛を吹く。
すると店内にどろどろっと、大きな蜘蛛の巣が現れた。
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