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6-6 石の意志

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 そんな彼をしり目に、タイシはルドンを見上げた。
「店長さん。俺たちは、未練があるからまだここにいるんだよな。つまり、自分が死んだことが受け入れられないから……」
「そういうことだろうな」
「それじゃあ、記憶を売れば成仏できるのかな」
「ああ。きれいに解放されるだろうぜ」
「売るよ。ケイトはどうするんだ」
 タイシに言われ、ケイトはコクリと頷いた。
「……売る! こんなもん、持ってても仕方ねえし」
「オーケー。査定金額はお一人さま、一恐怖・四千円ずつだ」
 その金額に、サクマは驚いて耳打ちをする。
「随分と、今回は高いんだね」
「ああ。三途の川の渡し賃だ。どこの世も、文無しじゃあうまく渡っていけねえからな」
「そうなんだ」
 ルドンが両手を上げ、ケイトとタイシの額にズボッと、指をブッさす。
 そして、引き抜かれたその指には、恐怖が具現化された黒い虫が串刺しになっていた。
 【買取承諾証】にサインしたケイトとタイシの体が急に薄くなる。
 魂が、じょじょにあの世に行きかけているのだ。
 サクマが目を白黒させていると、ケイトが思いつめたような顔で言った。
「あのさ、鬼の店長さん。あの公園の石のことなんだけど」
 陽気なケイトの深刻そうなようすに、他の三人は黙ってその話に耳を傾けた。
「なんであんな不自然な場所に、異常なほど大きな石があるんだろうって、軽いノリでネット検索かけたのが、ことのはじまりだった。そうしたら、次の日。知らないやつが突然、通学路で俺に話しかけてきたんだ。〝知りたいことがあるんだよね〟って」
「……それは、どんな見た目の奴だ」
 それを聞いたルドンの目は、氷のように冷たかった。
「頭の横からグルって曲がったヤギみたいなツノを二本生やした、全身黒いスーツを着たヤツ。背は低かった。店長さんの肩くらいの高さ」
「そうか。そいつは、なんて言ったんだ?」
「……確か、こう言われた」

 ——あの石、なーんであんなところにあるんだと思う?
 教えてあげよっか。
 じゃあ、このサイトを見てみなよ。
 今、スマホに送るね!
 ……見た? 見たよね? 石の名前。
 あーあ、見ちゃったか。
 そんじゃ、見に行かないとね。
 ***さまを——

「そいつの言った通り、俺……石の名前を知ったとたん、どうしても石の名前を呼びたくなった。サイトを見たせいだと思った……だから、怖くなって……でも、どうしても行かない気がすまない。だから、タイシを誘っちゃったんだ……そしたら、こんなことに……! タイシ、ごめんな、ごめん……」
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