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6-3 石の意志
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「なんでこんなところが話題になるんだ」
「この公園、ずっと昔から謎の大きな石が落ちてるだろ。公園の奥にあるトイレの横に」
過去の記憶を辿っていく。
そう言われれば、そんな石があったかもしれない。
軽自動車くらいある、大きな石だった。
こんなもの、どうやってここまで運んだんだろうとか。
どういう理由でこんな石を置いたんだろう、とか。
遊びながら、そんなことを考えていたのを覚えている。
「あの石にはな、名前があるらしいんだ」
ケイトがスマホを見ながら言う。
「何て名前なんだ」
「***って、言うんだってさ」
「***って、どういう意味だ」
「うーん、そのへんは書いてないなあ。とにかく、石にこの名前を呼びかけるんだと。〝***さま、***さま、お目覚めください〟。これを三回くりかえす。すると、石が目覚めるらしい。次の日には、石の位置が変わってるんだと」
「石の位置が変わる?」
「そう。あの石は、この方法を試した人の数だけ、移動するんだよ」
だから、あんなワケのわからない位置に石があるんだ、と言いたいらしい。
ケイトが急に都市伝説っぽいことを言い始めたので俺は驚いた。
今までは、もっとアウトドアで現実主義なヤツだったから。
というか、さっきまで霊は信じないとか言ってなかったか。
前までは、俺が雑誌情報の占いや風水のことをチラッと言っただけで「くだらね~! そんなこと信じんのかよ、タイシ!」なんて言って、背中をバンバン叩いてきていたクセに。
「だとしても石を動かして、なんの得があるんだよ」
「願いが叶うんだよ。石は自分では動かないだろ。だから、少しでも動けただけで嬉しいんだよ。それで、そのお礼に願いを叶えてくれるんだと。調べたサイトに書いてあったぜ。なっ! ちょーすげえだろ! ほら、今すぐ行ってみようぜ!」
ケイトがくだらない都市伝説にハマると、こんなふうになるのか。
飽き症にも困ったもんだ。
まあ、ヒマつぶしにはちょうどいいのかもしれない。
その時は、確かにそう思っていたんだ。
数分で近所の公園に着く。
小学生の頃はもう少し時間がかかっていた気もするが、中学生の歩幅にもなるとあっという間だった。
そして今から俺は、あの頃の自分では思いもよらなかったことをしようとしている。
何しろ石に話しかけようって言うんだもんな。
はたから見たら、ちょっとホラーなんじゃないか。
空を見上げると、ちょうど太陽が沈みかけていた。
小学生だったら、そろそろ帰る時間だ。
現に、公園にはもう誰も遊んでいる人間はいない。
だが、俺たちはもう中学生だ。
まだ少し時間に猶予があるだろう。
トイレの横に、不自然なまでに巨大な石が転がっていた。
転がっている、というとあまりにも軽いイメージだな。
堂々と居座っている、とでも言うべきか。
「さーて。石の名前は覚えたか、タイシ」
「この公園、ずっと昔から謎の大きな石が落ちてるだろ。公園の奥にあるトイレの横に」
過去の記憶を辿っていく。
そう言われれば、そんな石があったかもしれない。
軽自動車くらいある、大きな石だった。
こんなもの、どうやってここまで運んだんだろうとか。
どういう理由でこんな石を置いたんだろう、とか。
遊びながら、そんなことを考えていたのを覚えている。
「あの石にはな、名前があるらしいんだ」
ケイトがスマホを見ながら言う。
「何て名前なんだ」
「***って、言うんだってさ」
「***って、どういう意味だ」
「うーん、そのへんは書いてないなあ。とにかく、石にこの名前を呼びかけるんだと。〝***さま、***さま、お目覚めください〟。これを三回くりかえす。すると、石が目覚めるらしい。次の日には、石の位置が変わってるんだと」
「石の位置が変わる?」
「そう。あの石は、この方法を試した人の数だけ、移動するんだよ」
だから、あんなワケのわからない位置に石があるんだ、と言いたいらしい。
ケイトが急に都市伝説っぽいことを言い始めたので俺は驚いた。
今までは、もっとアウトドアで現実主義なヤツだったから。
というか、さっきまで霊は信じないとか言ってなかったか。
前までは、俺が雑誌情報の占いや風水のことをチラッと言っただけで「くだらね~! そんなこと信じんのかよ、タイシ!」なんて言って、背中をバンバン叩いてきていたクセに。
「だとしても石を動かして、なんの得があるんだよ」
「願いが叶うんだよ。石は自分では動かないだろ。だから、少しでも動けただけで嬉しいんだよ。それで、そのお礼に願いを叶えてくれるんだと。調べたサイトに書いてあったぜ。なっ! ちょーすげえだろ! ほら、今すぐ行ってみようぜ!」
ケイトがくだらない都市伝説にハマると、こんなふうになるのか。
飽き症にも困ったもんだ。
まあ、ヒマつぶしにはちょうどいいのかもしれない。
その時は、確かにそう思っていたんだ。
数分で近所の公園に着く。
小学生の頃はもう少し時間がかかっていた気もするが、中学生の歩幅にもなるとあっという間だった。
そして今から俺は、あの頃の自分では思いもよらなかったことをしようとしている。
何しろ石に話しかけようって言うんだもんな。
はたから見たら、ちょっとホラーなんじゃないか。
空を見上げると、ちょうど太陽が沈みかけていた。
小学生だったら、そろそろ帰る時間だ。
現に、公園にはもう誰も遊んでいる人間はいない。
だが、俺たちはもう中学生だ。
まだ少し時間に猶予があるだろう。
トイレの横に、不自然なまでに巨大な石が転がっていた。
転がっている、というとあまりにも軽いイメージだな。
堂々と居座っている、とでも言うべきか。
「さーて。石の名前は覚えたか、タイシ」
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