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6-1 石の意思
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逢魔が時がやってくる。
近くて便利なリサイクルショップ【スプーキーリサイクル】がオープンする時間だ。
だいぶ店の仕事にも慣れてきた、サクマ。
例のディディ人形も、キッチン洗剤でベタつきがなくなり、ピカピカの状態に戻った。
コックリさんの指導通りだ。
ピカピカになれて嬉しそうに見えるディディ人形が並ぶ棚。
そこにはまだ、見た目不気味な商品たちが ——。
いや、それを口にすることは決して許されない。
商品たちに、呪われてしまうかも知れないから……。
「うわ。マジきも。なんなんだよ、この店」
「お、おい……ケイト。あんまりそういうこと言わないほうがいいんじゃないか」
「そう言うことって、どういうことだよ。タイシ」
ケイトと呼ばれた客は『スプーキーリサイクル 買取保護者同意書』を握っている。
その隣のタイシと呼ばれた客も同意書を持っていた。
サクマは背筋をピッと伸ばすと、二人の前に出た。
「いらっしゃいませ。買取ですか?」
「えっ、お店の人? まだ子どもなのに」
タイシが驚いた顔をすると、ケイトもジロジロとサクマを見下ろした。
二人は、サクマよりも頭一つ分くらい身長が大きかった。
「ちびっこがアルバイトなんてしていいの?」
「別に、お給料を貰ってるわけじゃないので……。ただの手伝いです」
「すっげ~。こんな怪しい店で手伝いとか、よくできるな。ここ、【恐怖体験を買い取って、忘れさせてくれる】んだろ」
「はい……。買取なら、中へどうぞ。店長が待っていると思いますので」
ふたりをソファへと案内すると、すでにルドンがカウンターで待っていた。
サクマは、二人から預かっていた買取保護者同意書をルドンに手渡す。
「二人いっぺんに、か。今日は大繁盛だな、サクマ」
逢魔が時の間しかオープンしない、スプーキーリサイクルだ。
闇オークションを待っているサクマにとっては、客は多ければ多いほどいい。
「しっかし、辛気臭い店だな。さすが、鬼がやってる店なだけあるわ。てか、まじでこの人が鬼なの? ウケるわ~、マンガの世界じゃん」
ソファに座っているルドンに近づき、ツノに手を伸ばすケイト。
それをタイシが慌てて止める。
「すみません……。コイツ、マジで失礼なやつなんです」
「そうみたいだな。クックック」
ルドンが気にも留めていないようすなので、サクマはホッと息をつく。
ふいに、ルドンがサクマに耳打ちをした。
「俺が接客するよ。きみは俺の隣に座っているといい。こういう客のいなしかたも、覚えるといいぞ」
そう言って、唇のはしをつりあげた。
本当は、ちょっぴり怒っているのかもしれなかった。
全員がソファに座ると、ルドンはバインダーにはさんだ査定表を持ちながら、ボールペンをくるくると回した。
「それで、どちらが話してくれるのかな」
「ああ、俺が話します。ケイトは説明が苦手なので」
「なるほど。恵那タイシくん、ね。それじゃあ、聞かせてもらおうか。きみらが売りたいもんをね」
近くて便利なリサイクルショップ【スプーキーリサイクル】がオープンする時間だ。
だいぶ店の仕事にも慣れてきた、サクマ。
例のディディ人形も、キッチン洗剤でベタつきがなくなり、ピカピカの状態に戻った。
コックリさんの指導通りだ。
ピカピカになれて嬉しそうに見えるディディ人形が並ぶ棚。
そこにはまだ、見た目不気味な商品たちが ——。
いや、それを口にすることは決して許されない。
商品たちに、呪われてしまうかも知れないから……。
「うわ。マジきも。なんなんだよ、この店」
「お、おい……ケイト。あんまりそういうこと言わないほうがいいんじゃないか」
「そう言うことって、どういうことだよ。タイシ」
ケイトと呼ばれた客は『スプーキーリサイクル 買取保護者同意書』を握っている。
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サクマは背筋をピッと伸ばすと、二人の前に出た。
「いらっしゃいませ。買取ですか?」
「えっ、お店の人? まだ子どもなのに」
タイシが驚いた顔をすると、ケイトもジロジロとサクマを見下ろした。
二人は、サクマよりも頭一つ分くらい身長が大きかった。
「ちびっこがアルバイトなんてしていいの?」
「別に、お給料を貰ってるわけじゃないので……。ただの手伝いです」
「すっげ~。こんな怪しい店で手伝いとか、よくできるな。ここ、【恐怖体験を買い取って、忘れさせてくれる】んだろ」
「はい……。買取なら、中へどうぞ。店長が待っていると思いますので」
ふたりをソファへと案内すると、すでにルドンがカウンターで待っていた。
サクマは、二人から預かっていた買取保護者同意書をルドンに手渡す。
「二人いっぺんに、か。今日は大繁盛だな、サクマ」
逢魔が時の間しかオープンしない、スプーキーリサイクルだ。
闇オークションを待っているサクマにとっては、客は多ければ多いほどいい。
「しっかし、辛気臭い店だな。さすが、鬼がやってる店なだけあるわ。てか、まじでこの人が鬼なの? ウケるわ~、マンガの世界じゃん」
ソファに座っているルドンに近づき、ツノに手を伸ばすケイト。
それをタイシが慌てて止める。
「すみません……。コイツ、マジで失礼なやつなんです」
「そうみたいだな。クックック」
ルドンが気にも留めていないようすなので、サクマはホッと息をつく。
ふいに、ルドンがサクマに耳打ちをした。
「俺が接客するよ。きみは俺の隣に座っているといい。こういう客のいなしかたも、覚えるといいぞ」
そう言って、唇のはしをつりあげた。
本当は、ちょっぴり怒っているのかもしれなかった。
全員がソファに座ると、ルドンはバインダーにはさんだ査定表を持ちながら、ボールペンをくるくると回した。
「それで、どちらが話してくれるのかな」
「ああ、俺が話します。ケイトは説明が苦手なので」
「なるほど。恵那タイシくん、ね。それじゃあ、聞かせてもらおうか。きみらが売りたいもんをね」
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