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4-1 電車のあの子
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逢魔が時。スプーキーリサイクルがオープンする時間だ。
サクマはトウヤのスマホを持って、店へとやって来た。
しかし、店内に鬼の店主がいない。
不思議に思ってぐるりと、お店のなかを回っていく。
そういえば、ゆっくりと店内を見たことはまだなかった。
初めて来たときも、スタッフとして働きだしたときも、バタバタしていたから。
陳列棚には統一性のないものばかりが並ぶ。
店先の、髪の毛がぼさぼさの人形や、博物館でしか見たことがないような昔の家具などと同じだ。
店内も、見るからに呪われていそうなものたちばかりだった。
「うわっ、この棚。手のひらサイズの小さい人形がぎゅうぎゅうに並んでる……なんでこんなに人形ばっかりなんだよ」
「人形は憑きやすいからなあ」
後ろから話しかけてきたのは、黒い着物を身にまとった鬼。
ここの店主・ルドンだ。
「まじか……前に来た竜胆さんもそうだよね。怖い話でもよく聞くなあ。動く日本人形とか……」
「そういうこと。だから、人形についての怖い体験ってのはあふれるほどあんのさ」
「じゃあ、あれはなんなの」
サクマが指さす先には、大きな招き猫の置物があった。
以前、ルドンに「食ってやろうか」とからかわれたときにサクマが盾にした置物だった。
「やっぱり、いわくつき……なんだよね」
「ああ、あれは……この店の商売繁盛のために個人的に買ったやつだ」
「え、いわくつきじゃないのっ?」
「違えよ。客が来ないと店なんてやってられないだろ」
「ルドンも客足とか気にするんだ」
「そりゃそうだろ。退屈が一番嫌いなんだよ、俺は」
まさか、退屈しのぎでトウヤを助けようとしてくれているんじゃないだろうか、と勘ぐってしまう、サクマ。
(鬼だし、ありえる……)
「さあて。そんじゃあ今日は、奥の棚の〝開いてはいけない本〟の落丁でも調べてもらおうかな」
「落丁って何?」
「知らねえのか。ページが抜け落ちている本のことだよ」
「開いちゃいけないのにどうやって落丁を調べるんだよ!」
盛大にツッコんでいると、店に誰かが入ってきた。
お客さまのようだ。
「こ、こんにちは」
近くの中学の制服を着ている、女の子だった。
「サクマ。接客しな」
「は、はい。……いらっしゃいませ。スプーキリサイクルへようこそ」
サクマは女の子をソファに案内し、自分はその向かいに座った。
ルドンはカウンターで、頬杖をついている。
女の子は学生鞄のなかから『スプーキーリサイクル 買取保護者同意書』を取り出し、サクマに見せた。
サクマはそれを確かめると、緊張ぎみにマニュアル通りの接客をする。
「それじゃあさっそく……久司アヨさん。聞かせてください。あなたが売りたい記憶を」
アヨは「はい」と言うと、膝の上で組んだ自分の手の甲を見つめながら、口を開いた。
「あれは、塾の帰り。電車に乗っていた時のことでした」
サクマはトウヤのスマホを持って、店へとやって来た。
しかし、店内に鬼の店主がいない。
不思議に思ってぐるりと、お店のなかを回っていく。
そういえば、ゆっくりと店内を見たことはまだなかった。
初めて来たときも、スタッフとして働きだしたときも、バタバタしていたから。
陳列棚には統一性のないものばかりが並ぶ。
店先の、髪の毛がぼさぼさの人形や、博物館でしか見たことがないような昔の家具などと同じだ。
店内も、見るからに呪われていそうなものたちばかりだった。
「うわっ、この棚。手のひらサイズの小さい人形がぎゅうぎゅうに並んでる……なんでこんなに人形ばっかりなんだよ」
「人形は憑きやすいからなあ」
後ろから話しかけてきたのは、黒い着物を身にまとった鬼。
ここの店主・ルドンだ。
「まじか……前に来た竜胆さんもそうだよね。怖い話でもよく聞くなあ。動く日本人形とか……」
「そういうこと。だから、人形についての怖い体験ってのはあふれるほどあんのさ」
「じゃあ、あれはなんなの」
サクマが指さす先には、大きな招き猫の置物があった。
以前、ルドンに「食ってやろうか」とからかわれたときにサクマが盾にした置物だった。
「やっぱり、いわくつき……なんだよね」
「ああ、あれは……この店の商売繁盛のために個人的に買ったやつだ」
「え、いわくつきじゃないのっ?」
「違えよ。客が来ないと店なんてやってられないだろ」
「ルドンも客足とか気にするんだ」
「そりゃそうだろ。退屈が一番嫌いなんだよ、俺は」
まさか、退屈しのぎでトウヤを助けようとしてくれているんじゃないだろうか、と勘ぐってしまう、サクマ。
(鬼だし、ありえる……)
「さあて。そんじゃあ今日は、奥の棚の〝開いてはいけない本〟の落丁でも調べてもらおうかな」
「落丁って何?」
「知らねえのか。ページが抜け落ちている本のことだよ」
「開いちゃいけないのにどうやって落丁を調べるんだよ!」
盛大にツッコんでいると、店に誰かが入ってきた。
お客さまのようだ。
「こ、こんにちは」
近くの中学の制服を着ている、女の子だった。
「サクマ。接客しな」
「は、はい。……いらっしゃいませ。スプーキリサイクルへようこそ」
サクマは女の子をソファに案内し、自分はその向かいに座った。
ルドンはカウンターで、頬杖をついている。
女の子は学生鞄のなかから『スプーキーリサイクル 買取保護者同意書』を取り出し、サクマに見せた。
サクマはそれを確かめると、緊張ぎみにマニュアル通りの接客をする。
「それじゃあさっそく……久司アヨさん。聞かせてください。あなたが売りたい記憶を」
アヨは「はい」と言うと、膝の上で組んだ自分の手の甲を見つめながら、口を開いた。
「あれは、塾の帰り。電車に乗っていた時のことでした」
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