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3-9 よくない人形
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「思い出したんだ。あの人形、ペットボトルに肉づけした作りだったなって」
「それが、どうかしたの」
「リンに言われて、調べてみたの。リンがあまりにも、その……おびえているようだったから」
アミナは眉根を寄せ、緊張をやわらげるように息を吐きます。
「ネットで調べてたら、出てきたんだ。〝ヨリシロ〟ってやつ」
「……何それ」
「きっとあの人形はね、イレモノになっちゃってるんだよ。〝よくないもの〟の。ペットボトルは人形のハラワタで、紙粘土は肉。毛糸は髪の毛。よくないもののヨリシロにぴったりなんだよ、あれは」
「なに……それ……わけわかんない……」
エニシの保育園最後の展示を見終わったときのこと。
教室までエニシを迎えに行ったら、担任の先生は嬉しそうに言ってくれたのです。
――どうでした? リンゴ組。みんなの最後の作品展だから、気合を入れました!
エニシが、先生が、園のみんなが、頑張って作った作品展だった。
「まさか、そんな……!」
「すぐに捨ててれば、何も宿らずに終われてたかも。でも……」
「エニシの人形だからって、大切にし過ぎたの? だから、よくわかんないものにヨリシロにされた……ってことなの?」
「落ち着いて、リン。エニシくんもリンも、悪くない。みんなが納得がいく、適切な処置をすればいいみたいだから」
「どうやるの……? 教えて!」
「人形の目を隠して、袋に入れるの。人形といっしょに塩を入れるのを忘れずに」
「それで……大丈夫なんだね」
「ネットにそう書かれてた。間違いないよ」
それを聞いた私は、仮病を使って、学校を飛び出しました。
自転車に乗って、一直線に家に帰ると急いでキッチンに向かい、ビニール袋に塩を入れます。
さらに使わないハンカチを人形に目隠しできるていどに細く切ると、制服のスカートのポケットに突っ込みました。
そして、奥の部屋の前に立ったのです。
「なんか……今朝よりも空気とか雰囲気とか、気持ち悪くなってる……? 早く、なんとかしないと……」
震える手を引き戸の取っ手に引っ掛けました。
――ガラッ
「それが、どうかしたの」
「リンに言われて、調べてみたの。リンがあまりにも、その……おびえているようだったから」
アミナは眉根を寄せ、緊張をやわらげるように息を吐きます。
「ネットで調べてたら、出てきたんだ。〝ヨリシロ〟ってやつ」
「……何それ」
「きっとあの人形はね、イレモノになっちゃってるんだよ。〝よくないもの〟の。ペットボトルは人形のハラワタで、紙粘土は肉。毛糸は髪の毛。よくないもののヨリシロにぴったりなんだよ、あれは」
「なに……それ……わけわかんない……」
エニシの保育園最後の展示を見終わったときのこと。
教室までエニシを迎えに行ったら、担任の先生は嬉しそうに言ってくれたのです。
――どうでした? リンゴ組。みんなの最後の作品展だから、気合を入れました!
エニシが、先生が、園のみんなが、頑張って作った作品展だった。
「まさか、そんな……!」
「すぐに捨ててれば、何も宿らずに終われてたかも。でも……」
「エニシの人形だからって、大切にし過ぎたの? だから、よくわかんないものにヨリシロにされた……ってことなの?」
「落ち着いて、リン。エニシくんもリンも、悪くない。みんなが納得がいく、適切な処置をすればいいみたいだから」
「どうやるの……? 教えて!」
「人形の目を隠して、袋に入れるの。人形といっしょに塩を入れるのを忘れずに」
「それで……大丈夫なんだね」
「ネットにそう書かれてた。間違いないよ」
それを聞いた私は、仮病を使って、学校を飛び出しました。
自転車に乗って、一直線に家に帰ると急いでキッチンに向かい、ビニール袋に塩を入れます。
さらに使わないハンカチを人形に目隠しできるていどに細く切ると、制服のスカートのポケットに突っ込みました。
そして、奥の部屋の前に立ったのです。
「なんか……今朝よりも空気とか雰囲気とか、気持ち悪くなってる……? 早く、なんとかしないと……」
震える手を引き戸の取っ手に引っ掛けました。
――ガラッ
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