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3-8 よくない人形
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翌朝、エニシがおかしなことを言いだしたのです。
「トイレ、怖いから行きたくない」
「え? いつも行ってるトイレじゃん。急に何言ってんの」
ついてきて、とだだをこねるエニシ。
お母さんは手が離せないようすでした。
「仕方ない。ついて行ってあげるよ」
「……うん」
力なく返事をするエニシ。
いつもはこんなこと、言わないのにどうしたのか、と不安になります。
ひとまずトイレの前に着き、扉を開けました。
「ほら、自分のスリッパはいて。アンタ、そろそろ通学団の集合時間なんだからね」
「うん」
そろそろとトイレ用の子供スリッパをはく、エニシ。
するとなぜか背中を丸め、左側に体をかたむけながら、便座に座り込んだのです。
「何でかたむいてんの。トイレ、しにくいでしょ」
エニシは、便座に座りながら壁を指さします。
「こっち、怖いの……」
「は……?」
エニシが指さす方にあるのは……押し入れに〝人形〟がしまわれている部屋でした。
その押し入れは、部屋に入ってすぐ右にあります。
トイレの壁の反対側がちょうど、その押し入れだったのです。
(エニシが、こんなこと言うなんて……)
どこか、心の片隅で「全て自分の気のせいで終わったらいい」と思っていました。
人形はしまわれ、これから平穏な日常が戻ると思っていたのに。
「トイレ、終わったよ。リンちゃん」
「……早く、行こう。早く、ここを出よう」
頭の中は、もう真っ白でした。
(どうして。あれは、エニシが作った人形。廃材で作った、ただの……人形だったはずなのに……)
その日の、学校の昼休み。
色々と疲れはてた私は、居眠りを装って机に突っ伏していました。
「リン」
声のほうを見上げるとアミナが心配そうな顔をして立っていました。
「どうしたの、アミナ」
「……その後、どう?」
「え?」
「人形だよ。何も……起きてないよね」
深刻そうに言うアミナに、私の動悸が速くなっていきます。
(なんでそんな……あの人形が、マジでヤバイみたいに)
するとアミナは、言いづらそうにしながら身をかがめました。
声をひそめ、私にだけに聞こえるように、それを言いました。
「トイレ、怖いから行きたくない」
「え? いつも行ってるトイレじゃん。急に何言ってんの」
ついてきて、とだだをこねるエニシ。
お母さんは手が離せないようすでした。
「仕方ない。ついて行ってあげるよ」
「……うん」
力なく返事をするエニシ。
いつもはこんなこと、言わないのにどうしたのか、と不安になります。
ひとまずトイレの前に着き、扉を開けました。
「ほら、自分のスリッパはいて。アンタ、そろそろ通学団の集合時間なんだからね」
「うん」
そろそろとトイレ用の子供スリッパをはく、エニシ。
するとなぜか背中を丸め、左側に体をかたむけながら、便座に座り込んだのです。
「何でかたむいてんの。トイレ、しにくいでしょ」
エニシは、便座に座りながら壁を指さします。
「こっち、怖いの……」
「は……?」
エニシが指さす方にあるのは……押し入れに〝人形〟がしまわれている部屋でした。
その押し入れは、部屋に入ってすぐ右にあります。
トイレの壁の反対側がちょうど、その押し入れだったのです。
(エニシが、こんなこと言うなんて……)
どこか、心の片隅で「全て自分の気のせいで終わったらいい」と思っていました。
人形はしまわれ、これから平穏な日常が戻ると思っていたのに。
「トイレ、終わったよ。リンちゃん」
「……早く、行こう。早く、ここを出よう」
頭の中は、もう真っ白でした。
(どうして。あれは、エニシが作った人形。廃材で作った、ただの……人形だったはずなのに……)
その日の、学校の昼休み。
色々と疲れはてた私は、居眠りを装って机に突っ伏していました。
「リン」
声のほうを見上げるとアミナが心配そうな顔をして立っていました。
「どうしたの、アミナ」
「……その後、どう?」
「え?」
「人形だよ。何も……起きてないよね」
深刻そうに言うアミナに、私の動悸が速くなっていきます。
(なんでそんな……あの人形が、マジでヤバイみたいに)
するとアミナは、言いづらそうにしながら身をかがめました。
声をひそめ、私にだけに聞こえるように、それを言いました。
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