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3-6 よくない人形

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 次の日です。
 ついに私は人形のことを友人のアミナに打ち明けることにしました。
 アミナをあまり使われない、東階段に呼びだします。
 ずいぶんとあらたまっている私に、アミナは不思議そうに目を丸くしていました。
「リン。どうしたの。聞きたいことって?」
「あ、あのね……アミナの妹の、ユウナちゃん……いるじゃん。エニシと同い年の」
「どうしたの、今さら。ユウナがどうかした?」
「ユウナちゃんが年長のときのこと覚えてる?」
「忘れるわけないでしょ。ついこの間のことだよ」
「あの……ユウナちゃんのさ……」
 ゆっくり話を聞いてくれるアミナに、私はついに言いたかった言葉を吐き出しました。
「〝人形〟……どうしたかなって」
「人形?」
「最後の、作品展の時の……」
 だんだんと、ぼそぼそ声になっていく私。
 人形のことを口にすることが、恐怖だったのです。
 これまでの積もり積もった恐れと、昨夜の人形のうしろ姿が脳裏をよぎります。
 また、心臓がうるさくなり始めました。
 手をぎゅ、と握り込みます。
 アミナは「ああ、あれね」と、のんびりとした口調で答えました。
「持ち帰った日に捨ててたよ、お母さんが」
「え……っ!」
 言葉になりませんでした。
 あまりにもサラッとつむがれた、人形の末路。
 アミナが言ったそれを何度も何度も、脳内でくり返します。
「す、捨てたの……あれ。取っとかなかったの?」
「だって、置いとく場所ないでしょ。ユウナもいいよって言ってたし」
「そうなんだ。それじゃあ、捨てるよね。あんな……人形……」
「リン。エニシくんが作った、作品展の人形がどうかしたの」
「……怖いの、あれが」
 蚊の鳴くような声を振り絞ります。
「え?」
「エニシが作ったやつなのに……リビングに飾っているだけなのに……日に日に怖くなってて……エニシが作ったやつなのにだよ?」
 アミナが、困ったように笑います。
「そんなに怖いなら、適当に理由をつけて押し入れにしまっちゃえば?」
「適当な理由って……」
「いくらでもあるじゃん。〝エニシくんの新しい作品を飾りたいから、この人形と変えてもいいかな〟とかなら納得してくれるんじゃないの」
「それ、いいかも……!」
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