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1-2 開店
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営業時間は午後五時から、午後七時。
逢魔が時と言われる時間帯のみの営業である。
「で……そのスプーキーリサイクルが何だって?」
熱心にスプーキーリサイクルの話をしてくるトウヤに、サクマは息をついた。
そんな噂話は、休み時間の女子たちのガールズトークで聞き飽きていた。
せっかくトウヤの家に遊びに来ているというのに、と。
もう小学六年生になったサクマだが、家ではまだ親がオンラインゲームをすることを許してくれていない。
だから、トウヤの家でのゲームタイムはとても貴重なのだ。
そうでなくても、もう来年から中学生。
保育園からずっと、奇跡的に同じクラスである仲良しのトウヤ。
しかし中学生ともなったら遊ぶ時間も減ってしまうのだろう。
だからこそ、今のこの時間を大切にしたいのに。
それなのに……トウヤはゲーム内で敵が襲って来ても、平然とリサイクルショップの話をしている。
「自分が体験した怖い話を買い取ってくれるんだよ! つまり〝恐怖体験に値段がつく〟んだ。すごくないか? あと三十分で逢魔が時だしさ、行ってみようぜ!」
サクマは、トウヤを狙っている敵をやっつけてやりながら言った。
「何それ。そんなゲームみたいなこと、本当にあるの?」
トウヤの提案に、サクマはつい笑ってしまう。
だが急に真剣な顔つきになったトウヤに、サクマはピタッと口を閉じた。
トウヤがこういう顔をする時は、真面目な話をするときなのだ。
「実はな……俺、この間……やばい目にあっちゃってさ」
「えっ……」
「恐怖体験ってやつ。だからさ、もう思い出したくないんだよ。スプーキーリサイクルに売りに行きたいんだよ」
ジッと自分を見つめてくるトウヤに、サクマはようやく理解した。
トウヤは、よくわからない店に一人で行くのが怖いのだ。
親友の真剣な悩みを適当に流すわけにもいかない。
実際ちょっぴり、スプーキーリサイクルという店には興味を持っていたし。
「仕方ないな。わかったよ。着いてく」
「い、いいのか? ああ、よかった!」
ホッと胸を撫で下ろすトウヤに、「大袈裟だなあ」と思いながら、サクマは部屋の時計を見上げた。
あと、二十八分で逢魔が時だ!
「急がないと、いけないんじゃない? 逢魔が時の間しかやってないんでしょ?」
(まあ、実際にこの目で見ない限り、鬼が経営する店なんて信じられないけど……)
そんなことは、すっかり信じ切っているトウヤの手前、決して口は出せない。
急いで靴を足に引っ掛けると、ふたりは噂の空き地へと走り出した。
逢魔が時と言われる時間帯のみの営業である。
「で……そのスプーキーリサイクルが何だって?」
熱心にスプーキーリサイクルの話をしてくるトウヤに、サクマは息をついた。
そんな噂話は、休み時間の女子たちのガールズトークで聞き飽きていた。
せっかくトウヤの家に遊びに来ているというのに、と。
もう小学六年生になったサクマだが、家ではまだ親がオンラインゲームをすることを許してくれていない。
だから、トウヤの家でのゲームタイムはとても貴重なのだ。
そうでなくても、もう来年から中学生。
保育園からずっと、奇跡的に同じクラスである仲良しのトウヤ。
しかし中学生ともなったら遊ぶ時間も減ってしまうのだろう。
だからこそ、今のこの時間を大切にしたいのに。
それなのに……トウヤはゲーム内で敵が襲って来ても、平然とリサイクルショップの話をしている。
「自分が体験した怖い話を買い取ってくれるんだよ! つまり〝恐怖体験に値段がつく〟んだ。すごくないか? あと三十分で逢魔が時だしさ、行ってみようぜ!」
サクマは、トウヤを狙っている敵をやっつけてやりながら言った。
「何それ。そんなゲームみたいなこと、本当にあるの?」
トウヤの提案に、サクマはつい笑ってしまう。
だが急に真剣な顔つきになったトウヤに、サクマはピタッと口を閉じた。
トウヤがこういう顔をする時は、真面目な話をするときなのだ。
「実はな……俺、この間……やばい目にあっちゃってさ」
「えっ……」
「恐怖体験ってやつ。だからさ、もう思い出したくないんだよ。スプーキーリサイクルに売りに行きたいんだよ」
ジッと自分を見つめてくるトウヤに、サクマはようやく理解した。
トウヤは、よくわからない店に一人で行くのが怖いのだ。
親友の真剣な悩みを適当に流すわけにもいかない。
実際ちょっぴり、スプーキーリサイクルという店には興味を持っていたし。
「仕方ないな。わかったよ。着いてく」
「い、いいのか? ああ、よかった!」
ホッと胸を撫で下ろすトウヤに、「大袈裟だなあ」と思いながら、サクマは部屋の時計を見上げた。
あと、二十八分で逢魔が時だ!
「急がないと、いけないんじゃない? 逢魔が時の間しかやってないんでしょ?」
(まあ、実際にこの目で見ない限り、鬼が経営する店なんて信じられないけど……)
そんなことは、すっかり信じ切っているトウヤの手前、決して口は出せない。
急いで靴を足に引っ掛けると、ふたりは噂の空き地へと走り出した。
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