88 / 90
7-12 ハロー・ヤムヤム・ヤミー!
しおりを挟む
「ヤ・ム——————ッ!」
ぶわっ、とククルの心臓のあたりから、何かがあふれ出す。
それは、パッションオレンジ色のオーラのようなもの。
オーラは、つるつるとゼリーを吸い込んだときのいきおいで、バベルの口へと吸い込まれていく。
バベルのからだはオレンジ色に輝き、瞳の色が赤く染まる。
「うーん! ヤミー!」
「なになになに? なんだってんですか?」
「パートナー夢見士からの、パワーアップオヤツだよ~! 緊急時の非常食! やっぱり、お前をパートナーにして正解だったわ! ククル」
すると、バベルは一気にバクバクバクッと悪夢を食べ進めていく。
さっきは「ミルフィーユの層が」とあーだこーだ言っていたのはなんだったのか、と思うほどに。
「六門さん! 無事だったか」
ヨメルだ。
バベルが食べ終えた跡から、ヨメルとヨゾラが走って出てきた。
ずいぶんと焦っていたのか、肩で息をしている。
「六門さんにずっと呼びかけてたんだけど、あんまり聞こえてなかったみたいだから」
「やっぱりそうだったんですね。私も四谷くんの声はかすかに聞こえていたのですか、空耳かな、と思うほどに小さくて」
「誰かの悪夢がはさまっていたみたいだからね。聞こえにくかったみたいだ。ぼくの悪夢は六門さんのちょうど上に重なっていたから、よく見えたんだよ」
「そうだったんですね……。四谷くんは、大丈夫でしたか? 悪夢」
「ああ。大丈夫だよ。バベルがあっというまに食べちゃったからね」
「ば、バベルがっ……?」
見ると、すでにあたりは一面の闇。
悪夢はすべてバベルによって平らげられ、ククルを含めた十四人の同期たちが、呆然と立っていた。
バベルはお腹をパンパンに膨らませている。
「あ~食った食った。さすがにもう食べられないわ」
いつのまにか、オレンジのオーラも、赤い瞳も、もとに戻っている。
あっという間のパワーアップだったようだ。
「……まさか、十四人分の悪夢を食べてしまうとはね。さすがに驚いたよ」
ふわりと闇のなかに現れたのは、ナイトメア学園長だ。
「六門ククルくん。きみの『ヤム』体質は素晴らしい。きみは常人の数倍の『ヤム』感情を抱えているようだ。悪夢を食べるバクにとってはこれ以上ないパートナーだね。……しかし」
学園長は、コホンと咳ばらいをした。
ぶわっ、とククルの心臓のあたりから、何かがあふれ出す。
それは、パッションオレンジ色のオーラのようなもの。
オーラは、つるつるとゼリーを吸い込んだときのいきおいで、バベルの口へと吸い込まれていく。
バベルのからだはオレンジ色に輝き、瞳の色が赤く染まる。
「うーん! ヤミー!」
「なになになに? なんだってんですか?」
「パートナー夢見士からの、パワーアップオヤツだよ~! 緊急時の非常食! やっぱり、お前をパートナーにして正解だったわ! ククル」
すると、バベルは一気にバクバクバクッと悪夢を食べ進めていく。
さっきは「ミルフィーユの層が」とあーだこーだ言っていたのはなんだったのか、と思うほどに。
「六門さん! 無事だったか」
ヨメルだ。
バベルが食べ終えた跡から、ヨメルとヨゾラが走って出てきた。
ずいぶんと焦っていたのか、肩で息をしている。
「六門さんにずっと呼びかけてたんだけど、あんまり聞こえてなかったみたいだから」
「やっぱりそうだったんですね。私も四谷くんの声はかすかに聞こえていたのですか、空耳かな、と思うほどに小さくて」
「誰かの悪夢がはさまっていたみたいだからね。聞こえにくかったみたいだ。ぼくの悪夢は六門さんのちょうど上に重なっていたから、よく見えたんだよ」
「そうだったんですね……。四谷くんは、大丈夫でしたか? 悪夢」
「ああ。大丈夫だよ。バベルがあっというまに食べちゃったからね」
「ば、バベルがっ……?」
見ると、すでにあたりは一面の闇。
悪夢はすべてバベルによって平らげられ、ククルを含めた十四人の同期たちが、呆然と立っていた。
バベルはお腹をパンパンに膨らませている。
「あ~食った食った。さすがにもう食べられないわ」
いつのまにか、オレンジのオーラも、赤い瞳も、もとに戻っている。
あっという間のパワーアップだったようだ。
「……まさか、十四人分の悪夢を食べてしまうとはね。さすがに驚いたよ」
ふわりと闇のなかに現れたのは、ナイトメア学園長だ。
「六門ククルくん。きみの『ヤム』体質は素晴らしい。きみは常人の数倍の『ヤム』感情を抱えているようだ。悪夢を食べるバクにとってはこれ以上ないパートナーだね。……しかし」
学園長は、コホンと咳ばらいをした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
感染した世界で~Second of Life's~
霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。
物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。
それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......
【全64話完結済】彼女ノ怪異談ハ不気味ナ野薔薇ヲ鳴カセルPrologue
野花マリオ
ホラー
石山県野薔薇市に住む彼女達は新たなホラーを広めようと仲間を増やしてそこで怪異談を語る。
前作から20年前の200X年の舞台となってます。
※この作品はフィクションです。実在する人物、事件、団体、企業、名称などは一切関係ありません。
完結しました。
表紙イラストは生成AI
ゾンビばばぁとその息子
歌あそべ
ホラー
呼吸困難で倒れ今日明日の命と言われたのに、恐るべき生命力で回復したばあさんと同居することになった息子夫婦。
生まれてこのかたこの母親の世話になった記憶がない息子と鬼母の物語。
鬼母はゾンビだったのか?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
オカルト系実況者コンビ・“毒にも薬にも”
やなぎ怜
ホラー
「廃都」と呼ばれる半放棄された都市で、比較的上流の家庭で生まれ育った高校生の薬袋艾(みない・もぐさ)には幼馴染がいる。その幼馴染・毒島鈴蘭(ぶすじま・すずらん)はヤンキーから足を洗ってしばらくの美少女。家族に見捨てられてホームレスの鈴蘭を養うため、艾が思いついた方法は、コンテンツ配信プラットフォームで金を稼ぐというものだった。オカルト危険地帯である「廃都」ではネタには事欠かない。そして「廃都」の外では絶賛オカルトブーム中。かくして艾は鈴蘭と共にオカルト系実況界へ身を投じることになる。
※四話目で一旦完結。作品全体を総括するような大きなオチはないです。
※便宜上「掲示板風」と呼称していますが、システムや雰囲気等はかなり違います。また、リアリティよりも読みやすさを重視している箇所が多々あります。自分が読みたいものを書いたのでそんな感じになっています。
ヴァルプルギスの夜~ライター月島楓の事件簿
加来 史吾兎
ホラー
K県華月町(かげつちょう)の外れで、白装束を着させられた女子高生の首吊り死体が発見された。
フリーライターの月島楓(つきしまかえで)は、ひょんなことからこの事件の取材を任され、華月町出身で大手出版社の編集者である小野瀬崇彦(おのせたかひこ)と共に、山奥にある華月町へ向かう。
華月町には魔女を信仰するという宗教団体《サバト》の本拠地があり、事件への関与が噂されていたが警察の捜査は難航していた。
そんな矢先、華月町にまつわる伝承を調べていた女子大生が行方不明になってしまう。
そして魔の手は楓の身にも迫っていた──。
果たして楓と小野瀬は小さな町で巻き起こる事件の真相に辿り着くことができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる