ヤムヤムガール！ 〜ブルーム・アカデミーの悪夢記録〜

6-7 グッド・ナイト・ナイトメア

　先生が出してくれたお茶を飲んだら、急に眠くなったんだ。
　この感じ、覚えてる。
　悪夢サンプルだ。
　私は、悪夢サンプルを飲ませられた。
　それじゃあ、リズも？
　先生。どうして、こんなことを——。
　なんてね、理由はわかってる。
　私が悪い子だからだよね。
　先生はいつも私を優しく諭してくれてた。
「六門への嫌がらせはもう止めなさい」
　それでも、私は止めなかった。
　だってそうでしょ？
　そうでもしないと、みんな私に見向きもしないじゃん。
　私には何もない。
　勉強ができるわけでもない。
　ファッションセンスがいいわけでもない。
　足が速いわけでも、本が大好きなわけでもない。
　何もしなくてもみんなに好かれる子がいるのに、私は好かれない。
　私には何もないから、みんなに何もしてあげられない。
　何もしてあげられないから、私はみんなに振り向いてもらうために、嫌がらせをする。
「これが、私。嫌がらせをしてみんなに私の存在を知ってもらう。これが、私なの……」
　ここは、私の夢らしい。
　悪夢サンプルによって、見せられている夢。
　わかってる。だって、見たことあるもの。
　『悪夢選別』のときに見た夢なんでしょ、どうせ。
「ああ、いやだ。いやだ、いやだ、見たくない。見せないでよ、あんなもの、ひどすぎる。まったく、なんて悪夢なの——！」
　私の前にはただただ、何もない世界が広がっている。
　真っ暗な空間に、ヒト型のうつわがぽつんと立っている。
　うつわはつるりとしていて、空っぽだ。
　何も入っていない、うつわというだけの存在。
「あれは、私……。中身のない、空っぽの存在……。自分では何もいれられないし、誰からも何も注がれない……」
　ああ、悪夢だ！
　こんな現実、知りたくなかった！