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6-6 グッド・ナイト・ナイトメア

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「あ、あんた勝手に……!」
 思わずバベルのほっぺたを両手で包み込む、ククル。
 そういえば、とあのときのことを思い出す。
 悪夢サンプルで入眠しかけたとき……夢への扉が二枚、開かれたような気がしたことだ。
 あれが『悪夢回遊』の瞬間だったらしい。
「む、無意識だったんだよ。悪かったってえ」
「まあ、そうだな。これは、今の夢見士にとってはあまり使い物にならない昔のバクの技能だ。流行り物好きな夢見士からは、モノクロバクは骨董品と揶揄される。まるで、旧世代前のパソコンのような扱いだからな」
 口元を抑えて笑っている、クズキリ先生。
 笑顔だけはいつもと変わらないのに……。
 事実と、目の前で起こっていることとのギャップが、ククルの心をよりいっそう、締め付けた。
「お前らが夢で見たのはナイトメアが作り出したもの。ほとんどはフィクションだ。だが、俺があの遺跡に行って、悪夢研究に目覚めたことだけは確かだ。……悪夢サンプルを使って、悪人をなくそうとしていることも」
 とたん、エルとリズがひどくうなされだした。
「もう、悪夢のクライマックスが近いようだな」
「そんな……!」
 トロンの顔が青ざめる。
「先生! いくらなんでも、やりすぎだ。確かに、その二人は嫌なことばかりしてきたよ。でも、悪夢に飲み込ませようだなんて」
「当然の結果じゃないか?」
「そんなわけない!」
 トロンのパートナー、アロマのおでこにブルーム・アカデミーの校章が浮かびあがる。
 それをリズのおでこに重ねる。
 トロンとアロマは、リズの夢のなかへと入っていった。
「私たちも行くよ!」
 ユミルのパートナー、ハニービーのおでこに紋章が浮かび上がる。
 それは世界夢見士連盟の紋章だ。
 ハニービーのおでこの紋章の光が、エルのおでこに降り注ぐ。
 ユミルがククルの手を取った。
「さあ、助けるよ! 夢見士として!」
「……はい!」
 ユミルの手を強く握り返す、ククル。
 ハニービーとともに、エルの夢のなかへと消えていく。
 その場に残ったクズキリ先生は、「はあー……」と息をついた。
「なんて、悪夢だ……」

 *

 クズキリ先生に、おもしろいものがあるからと言われて、リズといっしょに地下室にきた。
 ブルーム・アカデミーにこんなところがあるなんて、とわくわくした。
 先生が私たちだけに教えてくれてる、という優越感も手伝って、私たちは完全に油断してたんだ。
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