69 / 90
6-4 グッド・ナイト・ナイトメア
しおりを挟む
その場にいる、全員が息をのむ。
ドアを抜けると、薄暗い階段が下へ下へと伸びていた。
いくつものカツン、カツン、という靴音がどこまでも反響していく。
しばらくして階段を降り切ると、空き教室がずらりと並んでいた。
そのなかに、ひとつだけ電気がついている教室がある。
「行こう……」
ユミルが、先陣を切っていく。
それにハニービー、ククル、バベル、トロン、アロマが続いた。
あかりのついた教室の表札には、『悪夢実験室』と書かれていた。
ユミルがなかをそろりと、のぞき込んだ。
とたん血相を変えて、中へと飛び込んでいく。
「何してるの、クズキリくん!」
あわててククルたちも教室のなかを見ると。
そこには、並んだ机に突っ伏しているエルとリズがいた。
どうやら、眠っているようだ。
机の前には、表情のないクズキリ先生がふたりを見下ろしていた。
「ユミル。なぜここに。悪魔サンプルは……ああ、きみたちが彼女の悪夢を食べてしまったのか。計画が狂ってしまった」
「クズキリくん! あなたは彼女たちに何をするつもりなの」
ユミルの叫び声に、クズキリ先生はニヤリ、と笑んだ。
それはまるで悪魔のような笑顔で。
これまでに一度も見たことがない、クズキリ先生の一面だった。
「クズキリ先生がこんな顔をするなんて」
ククルは血の気が引いていくのを感じた。
遅刻してしまった入学式。
あの時、クズキリ先生に言われた言葉をククルは一語一句、間違えずに思い出せる。
——寝られない人の気持ちは夢見士として、理解していなければならない。よい心がけだ。
決して責めることだけをしない優しさ、心の広さに、ククルは一瞬でクズキリ先生のことが大好きになった。
「担任の先生がこの人でよかった……そう思ったのに」
心のなかにぽっかりと、穴が空いてしまった……そんな心地がした。
「クズキリくん! 答えて!」
ドアを抜けると、薄暗い階段が下へ下へと伸びていた。
いくつものカツン、カツン、という靴音がどこまでも反響していく。
しばらくして階段を降り切ると、空き教室がずらりと並んでいた。
そのなかに、ひとつだけ電気がついている教室がある。
「行こう……」
ユミルが、先陣を切っていく。
それにハニービー、ククル、バベル、トロン、アロマが続いた。
あかりのついた教室の表札には、『悪夢実験室』と書かれていた。
ユミルがなかをそろりと、のぞき込んだ。
とたん血相を変えて、中へと飛び込んでいく。
「何してるの、クズキリくん!」
あわててククルたちも教室のなかを見ると。
そこには、並んだ机に突っ伏しているエルとリズがいた。
どうやら、眠っているようだ。
机の前には、表情のないクズキリ先生がふたりを見下ろしていた。
「ユミル。なぜここに。悪魔サンプルは……ああ、きみたちが彼女の悪夢を食べてしまったのか。計画が狂ってしまった」
「クズキリくん! あなたは彼女たちに何をするつもりなの」
ユミルの叫び声に、クズキリ先生はニヤリ、と笑んだ。
それはまるで悪魔のような笑顔で。
これまでに一度も見たことがない、クズキリ先生の一面だった。
「クズキリ先生がこんな顔をするなんて」
ククルは血の気が引いていくのを感じた。
遅刻してしまった入学式。
あの時、クズキリ先生に言われた言葉をククルは一語一句、間違えずに思い出せる。
——寝られない人の気持ちは夢見士として、理解していなければならない。よい心がけだ。
決して責めることだけをしない優しさ、心の広さに、ククルは一瞬でクズキリ先生のことが大好きになった。
「担任の先生がこの人でよかった……そう思ったのに」
心のなかにぽっかりと、穴が空いてしまった……そんな心地がした。
「クズキリくん! 答えて!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。
2025/3/8:『いま』の章を追加。2025/3/15の朝8時頃より公開開始予定。
2025/3/7:『しんれいしゃしん』の章を追加。2025/3/14の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/6:『よふかし』の章を追加。2025/3/13の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/5:『つくえのしたのて』の章を追加。2025/3/12の朝4時頃より公開開始予定。
熾ーおこりー
ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】
幕末一の剣客集団、新撰組。
疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。
組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。
志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー
※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です
【登場人物】(ネタバレを含みます)
原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派)
芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。
沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派)
山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派)
土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派)
近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。
井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。
新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある
平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派)
平間(水戸派)
野口(水戸派)
(画像・速水御舟「炎舞」部分)
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
朧《おぼろ》怪談【恐怖体験見聞録】
その子四十路
ホラー
しょっちゅう死にかけているせいか、作者はときどき、奇妙な体験をする。
幽霊・妖怪・オカルト・ヒトコワ・不思議な話……
日常に潜む、胸をざわめかせる怪異──
作者の実体験と、体験者から取材した実話をもとに執筆した怪談短編集。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる