ヤムヤムガール! 〜ブルーム・アカデミーの悪夢記録〜

中靍 水雲

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4-10 ストップ・ザ・インターネット

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 ククルはバベルの背中の上で、拳を月にかざした。
 味わった悪夢を思い出し、バベルも舌なめずりをしている。
「なかなかうまかったな~。ちょうど食べたかったサキイカみたいな噛みごたえだったし、大・満・足!」
 ほくほくしているバベルを、ククルは彼の背中の上から気まずそうに見つめる。
「どした?」
「いえ。再び……ちょっと、ヤんでしまいまして」
「またかよお。なんなん? 話してみ」
「私……少しは夢見士として、成長できてるんですかね」
 うつむいたままで言う言葉は、夜の馬飼町へとぽろぽろと降っていく。
「四谷くんが言ってたんです。夢見士はパートナーのバクと連携して、悪夢をクライマックスまで持っていくものなんだって」
「へえ、そうなんだ~」
 悪夢のクライマックス。
 それは、悪夢被害者の恐怖が、頂点に達したときのことだ。
 夢見士はバクと悪夢の品定めをし、それを見極めなければならない。
「……実は私には、憧れていた夢見士がいるんです」
「へえ。そうだったんだ」
「はい。幼いころ、ひどい悪夢を見たことがあったんです。それをその夢見士が助けてくれました」
「ふうん。よかったじゃん」
「それで、思い出したんです! 確かに、その人は悪夢のなかで、もっとバクと息を合わせて行動していました。あの夢見士に、私は少しでも近づけているのでしょうか」
「お前、バカだなあ」
 大きく息をつくバベル。
「ええッ? バカですかッ?」
「んなことでメソメソしてるヒマがあるなら、もっとバクのことを勉強できるんじゃねーの? 時間のムダじゃんよ~」
「ご、ごもっとも……な、ご意見です」
 バベルにひれ伏す勢いで手を合わせるククル。
「てかお前、その夢見士に会ったから、夢見士を目指すようになったってわけ?」
「は、はい。そうです」
「ふーん」
 夜を駆けるパートナーへ、ククルは不満そうに眉を寄せた。
「あの、興味ないですよね。完全に」
「ん~?」
「ないですよねッ?」
「ちょっちなあ~。さっきの悪夢の量じゃ足りなかったっぽくて……」
 グルルルルルル、と獣の鳴き声のような凄まじい腹の音が、夜空に響く。
「クオリティ2の悪夢で足りないんですか、あなた!」
「うるせ~なあ。しょうがないだろ。ぼくは、血統書付きのすんげえバクなんだもん。普通のバクといっしょにすんなよ、ぼくの食欲を!」
「食欲に血統書は関係ないですよねッ?」
 二人の言い合いが、まだ笑みを浮かべる月に聞かれている——そんな、深い深い夜だった。
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