ヤムヤムガール！ 〜ブルーム・アカデミーの悪夢記録〜

4-2 ストップ・ザ・インターネット

　何かに気づいたバベルは、短い前足をククルの腰に回し、体勢を立て直してやる。
　放心状態のククルを抱きかかえ、バベルは今夜の夜食のもとへと急ぐ。
　月がチェリーレッドに染まりだした。
　空にじわじわと、悪夢色が広がっていっていた。

　目的の家では、中学生くらいの男子が布団のなかでうずくまっていた。
　悪夢にうなされているのか、「ううーん」とこもったうなり声が聞こえる。
　クズキリ先生から、男子の簡単なプロフィールが送られてきていた。
「竜胆ロイド、十四歳。最近親にスマホを買ってもらい、ＳＮＳをはじめたばかり……と、いうことらしいです」
「よっし。行くか。テンションあげてけ～！」
「悪夢に行くのに、テンションなんてあがりませんよ……」
　ローテンションのククルをおしりで小突いてから、バベルは鼻を「ふん」と鳴らした。
　するとバベルのおでこに、ブルーム・アカデミーの校章が浮き上がる。
　ぴかーっと光るそれを、悪夢被害者のおでこに合わせた。

　竜胆ロイドの悪夢の扉が、暗く暗く、開かれる。

　＊

　なんだ、ここ。おかしい。
　俺は幽体離脱でもしたのか？
　それとも……夢なのか？
　目の前には、ぽっかりと空いた真っ白な世界しかない。
　いや、違う。
　俺の頭の上を、たくさんの文字が飛び交っている。
　人々の会話、面白い動画。政治、スポーツ、芸能ニュース。
「これ……！　まさか、ここは……ＳＮＳのなかなんじゃ？　だとすると……夢だ。これは。夢でしかないわ！」
　つまり夢なら……楽しまないと損だよな！
　よーし、どうやって楽しもうか？
「ん？　なんだろう、あれ」