上 下
38 / 90

3-11 アート・ブレイク・ダウン

しおりを挟む
 ぼくの手に狙いを定め、ハンマーが勢いよく振り下ろされようとしている。
 もうダメか……。
 観念して目をつむった、その時。
「ぎゃあああああッ」
 しっぽを踏まれた猫の悲鳴のような叫びが、暗転した空間に響き渡る。
 目を開けると、ロロくんの顔面にモノクロの物体が印籠のようにつきつけられている。
 六門さんだ。そして、ぎゃあぎゃあ叫んでいるモノクロの物体は——バクのバベルだ。
 カーン、とハンマーの落ちる音がした。
 あまりの驚きに、ロロくんが落としたのだろう。
「いい加減にしてください! さっさと食え! このバカーッ!」
「ちえッ。せっかくお前の影に隠れて、熟成のタイミングを見計らってたのに。何も引きずり出すことないだろお」
「ほら! 早く!」
「わかったよお。いただきまーす」
 ——バクッ
 モシャモシャと、ロロくんが食べられていくのをぼくはポカンと見守る。
 ロロくんが食べられていくのと同時に、ぼくのからだも動けるようになっていく。
「うーん。マッズイ! ナイトメアの悪夢って感じ~。しかもこの夢、入ったとたんにカビくさいにおいがするんだもんよ。も~サイアク! ヤミーじゃない! せめて、もうちょっと熟成させたかったよ~!」
「あなたのほうがワガママじゃないですか! 仕事なんですから、少しはガマンしてください!」
「これは仕事じゃないよ! 満月でもないし、月も笑ってないし! ただのナイトメアの悪夢じゃん!」
 バベルが悪夢を食べ終わると、ぼくの目の前が真っ白になっていく。
 ナイトメアの悪夢が終わったのだ。
 いや、それよりも早く目覚めなければならない。
 今の話、くわしく聞きたい。

 *

 ヨメルが悪夢から目を覚ますと、はじめに目に飛び込んできたのはパープルのバク・ヨゾラだった。
「ヨメル! ごめんな。あたしが眠ってるあいだにこんなことになってたとは知らんくって……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

感染した世界で~Second of Life's~

霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。 物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。 それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......

【全64話完結済】彼女ノ怪異談ハ不気味ナ野薔薇ヲ鳴カセルPrologue

野花マリオ
ホラー
石山県野薔薇市に住む彼女達は新たなホラーを広めようと仲間を増やしてそこで怪異談を語る。 前作から20年前の200X年の舞台となってます。 ※この作品はフィクションです。実在する人物、事件、団体、企業、名称などは一切関係ありません。 完結しました。 表紙イラストは生成AI

【完結済】僕の部屋

野花マリオ
ホラー
僕の部屋で起きるギャグホラー小説。 1話から8話まで移植作品ですが9話以降からはオリジナルリメイクホラー作話として展開されます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

ゾンビばばぁとその息子

歌あそべ
ホラー
呼吸困難で倒れ今日明日の命と言われたのに、恐るべき生命力で回復したばあさんと同居することになった息子夫婦。 生まれてこのかたこの母親の世話になった記憶がない息子と鬼母の物語。 鬼母はゾンビだったのか?

探しているの

雪苺
ホラー
僕は毎日夢を見る。 探してとお願いしている少女を・・・。 エブリスタ、カクヨムにも掲載しています。

ヴァルプルギスの夜~ライター月島楓の事件簿

加来 史吾兎
ホラー
 K県華月町(かげつちょう)の外れで、白装束を着させられた女子高生の首吊り死体が発見された。  フリーライターの月島楓(つきしまかえで)は、ひょんなことからこの事件の取材を任され、華月町出身で大手出版社の編集者である小野瀬崇彦(おのせたかひこ)と共に、山奥にある華月町へ向かう。  華月町には魔女を信仰するという宗教団体《サバト》の本拠地があり、事件への関与が噂されていたが警察の捜査は難航していた。  そんな矢先、華月町にまつわる伝承を調べていた女子大生が行方不明になってしまう。  そして魔の手は楓の身にも迫っていた──。  果たして楓と小野瀬は小さな町で巻き起こる事件の真相に辿り着くことができるのだろうか。

処理中です...