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3-6 アート・ブレイク・ダウン
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「先生がもっと大きな教室でやりたいからって、近くの工房を買い取ったんだってさ。だから、ここはなくなるんだ。ぼくは先生の片付けの手伝い中。よかったら、きみもどう?」
「い、いいけど……」
意外な展開に戸惑いつつも、ぼくは教室内にある作品たちを処分するため、一か所に集めただした。
もちろん、例のロロくんの作品もだ。
あまりに上手な作品なので、捨てるにはもったいないけれど。
「これも、捨てるんだよね?」
「置いていくってことは、いらないってことでしょ? だから申し訳ないけれど、捨てるよ」
そう言って、彼はゴミ袋を大きく広げた。
モロそうなものはどんどん壊して、袋にまとめていく。
……その時。
後ろから「うわあッ」という悲鳴が聞こえてきた。
振り返ると、さっきの彼が何かを指さし、震えている。
その先には、胸像があった。
なんと、目から涙を流していて泣いている。
「これは一体……?」
「ロロくんの呪いだよ! 作品を壊そうとしたから!」
「呪いって……そのロロくんって生きてるんでしょ? そんなふうに言ったら、かわいそうじゃない?」
すると彼はふっと、声のトーンを落として言った。
「死んでるよ」
「……え?」
「ロロくんは、この教室を辞めてすぐに、交通事故で亡くなってるよ」
「……そう、だったんだ」
それから彼は、ロロくんの呪いとやらにおびえて作業ができなくなってしまった。
代わりに、ぼくは金属ハンマーで作品たちを壊していく。
手の像の表面はすでにぼろぼろになっており、すぐに壊れてくれた。
同じように足の像も壊した。
最後は、胸像だ。
もう泣いていない。
ぼくはハンマーを構えた。
「よし。やるぞ……」
ガーンッ、とハンマーを振り下ろす。
細かく砕き、ゴミ袋に収まるサイズくらいにしていく。
あるていどの大きさになったころ。
胸像の残骸を見て、ぼくはぎょっとした。
粉々になった粘土像のなかから、パラパラと何かが出てきたのだ。
それは……大量の爪。
折り紙のような紙に、ていねいに包まれていたようだ。
爪が、まるで雪のように教室の床に散らばっていく。
「なんなんだ、これ……」
「うわああああッ! ロロくんだ! ごめんよ、ごめんよーッ! 俺が悪かった! 許してくれええええええ!」
叫びながら、名前も知らない彼は教室から飛び出して行った。
とたん、キキーッというけたたましい車のブレーキ音が響き渡った。
「な……!」
「い、いいけど……」
意外な展開に戸惑いつつも、ぼくは教室内にある作品たちを処分するため、一か所に集めただした。
もちろん、例のロロくんの作品もだ。
あまりに上手な作品なので、捨てるにはもったいないけれど。
「これも、捨てるんだよね?」
「置いていくってことは、いらないってことでしょ? だから申し訳ないけれど、捨てるよ」
そう言って、彼はゴミ袋を大きく広げた。
モロそうなものはどんどん壊して、袋にまとめていく。
……その時。
後ろから「うわあッ」という悲鳴が聞こえてきた。
振り返ると、さっきの彼が何かを指さし、震えている。
その先には、胸像があった。
なんと、目から涙を流していて泣いている。
「これは一体……?」
「ロロくんの呪いだよ! 作品を壊そうとしたから!」
「呪いって……そのロロくんって生きてるんでしょ? そんなふうに言ったら、かわいそうじゃない?」
すると彼はふっと、声のトーンを落として言った。
「死んでるよ」
「……え?」
「ロロくんは、この教室を辞めてすぐに、交通事故で亡くなってるよ」
「……そう、だったんだ」
それから彼は、ロロくんの呪いとやらにおびえて作業ができなくなってしまった。
代わりに、ぼくは金属ハンマーで作品たちを壊していく。
手の像の表面はすでにぼろぼろになっており、すぐに壊れてくれた。
同じように足の像も壊した。
最後は、胸像だ。
もう泣いていない。
ぼくはハンマーを構えた。
「よし。やるぞ……」
ガーンッ、とハンマーを振り下ろす。
細かく砕き、ゴミ袋に収まるサイズくらいにしていく。
あるていどの大きさになったころ。
胸像の残骸を見て、ぼくはぎょっとした。
粉々になった粘土像のなかから、パラパラと何かが出てきたのだ。
それは……大量の爪。
折り紙のような紙に、ていねいに包まれていたようだ。
爪が、まるで雪のように教室の床に散らばっていく。
「なんなんだ、これ……」
「うわああああッ! ロロくんだ! ごめんよ、ごめんよーッ! 俺が悪かった! 許してくれええええええ!」
叫びながら、名前も知らない彼は教室から飛び出して行った。
とたん、キキーッというけたたましい車のブレーキ音が響き渡った。
「な……!」
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