君は僕の道標、貴方は俺の美しい蝶。

黄金 

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14 逃げたい

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「……う゛………う゛ぅ…………っ!」

 歯を食いしばり我慢する。
 背中を出されて打ち付けられる鞭の痛みに、僕は被った頭巾を噛んで声を漏らさない様に我慢していた。
 前に泣いて逃げようとしたらナギゼアに蹴られたのだ。

「ジュリテアは気持ち良さそうに喘いだのに、君は苦しそうだね。」
 
 同じ鞭を使ってるのにね、と楽しそうに嗤うヒュートリエ様。
 こんなの気持ち良くない。
 痛いだけだ。
 1番最初に使われた鞭よりかは痛くない。
 かなり柔らかい鞭に変更したと嬉々として説明された。
 幾度か鞭を変えて僕で試し打ちしてからジュリテアに使ったのだろう。
 僕はすっかり鞭が怖くなった。
 気持ち良くなるわけがない。

 顔を横向けると、頭巾の小さな穴越しに、はぁと熱い息を吐いて欲を孕んだヒュートリエ様が見える。
 こんなので欲情するのかと、こんな奴が婚約者だったのかと、寒気がする。

「そろそろ夜の準備も終わるだろうから、私は先に失礼するよ。」

 ヒュートリエ様は機嫌良く鞭をケースに戻して部屋から出て行った。
 僕は椅子の背に手を付いて尻を突き出す形で胸から下をはだけさせた格好だった。
 手を付いている椅子にはナギゼアが肘をつき足を組んで、座って僕を眺めていた。

 ズルズルと座り込む僕を一瞥して、ナギゼアは立ち上がる。
 
「ラダフィム様は今からですか?」

 今日は鞭打ちで終わりじゃないのだろうかと、僕はブルリと震えた。
 
 今日、浄化の旅から帰ってきたばかりだった。
 守られて後方にいた筈のジュリテアは、何故か擦り傷を作っていて、戻った僕は青褪めた。
 ジュリテアが傷を作ると、ナギゼアに暴力を振るわれるか、ヒュートリエ様に鞭打たれるかのどちらかになるからだ。
 治癒は出来るし、旅の後に行われる為期間が開くので、治癒した事もバレた事はないけど、痛いものは痛い。
 
「旅の間中相手させてたでしょうに。」

 重ねて尋ねるナギゼアに、ラダフィムは漸く口を開いた。
 ヒュートリエ様が鞭打つ間、ラダフィムはずっと無言で少し離れたソファに座っていた。

「お前は出て行かないのか?」

 話す声はしない。
 お互い顔色を伺い合っているのだろう。
 3人の男達は仲が良い訳ではない。
 ジュリテアという愛する者で繋がっているだけだ。
 
 ラダフィムが座り込む僕に近付いて、腕を引っ張ってベットに引きずって行った。
 ラダフィムは3人の中でも1番大きい。
 簡単に僕は放り投げられる。
 上にのしかかられると、背中の鞭打たれた傷がヒリヒリと痛んだ。
 乱暴に被っていた頭巾を剥がされ、顔を露わにされる。
 ラダフィムは行為に及ぶ時、頭巾を必ず外させていた。

「…………っ!」
 
 いつの間にか近くにナギゼアもいたのか、ハッとした驚く様な息遣いが聞こえる。

 ラダフィムに胸を弄られ、強く吸い付かれると、僕は恐怖でビクリと飛び跳ねた。
 
「………混ざるか?」

 ラダフィムはナギゼアに尋ねたようだ。
 無言でナギゼアが頭の方に這ってくる。

「お前達は顔が似てるから隠したがるが、俺はこの顔が歪むのが楽しい。見えていないと損だろう?」

 ラダフィムは楽しそうに語っていた。

「成程……。お一人でよく楽しまれているとは思って、もしやジュリテア様を諦めてくれるのではと思いましたが、このような楽しみ方をされていましたか。」

 ラダフィムもナギゼアも下半身を大きく膨らませていた。

「ああ、ジュリテアに対しては手酷く扱えないだろう?」

 そうですねと返事をするナギゼアも、楽しい秘密の遊びを語るラダフィムも、服を脱いでしまう。
 僕のなけなしの首と腕に掛かっていた服を取り払われ、3人とも全裸になった姿に、僕は恐怖で首を振った。
 ラダフィムの抱き方は乱暴で痛い。
 碌に後ろを解しもせずに突っ込んでくる。
 ナギゼアは今までの暴力があるので、今では対面するだけでも身体が震えてくる。

「勃ちませんね。」

「別にそこはどうでも良いんじゃないか?」

 2人の顔は愉悦に歪んでいる。
 目はギラつき、小さな獲物を嬲れる期待に、表情は爛々と輝いていた。

 鼻を摘まれ息苦しくて口を開くと、歯を立ててはいけませんよと言って、ナギゼアの陰茎が口の中に押し込まれた。
 一気に喉の奥まで入り込み、嘔吐く。

「ーーーっ!?んぐぅ…、ぐっ、お゛………ぶぅっっ!」

 苦しくて暴れると、ぎゅうと頬を捻り上げられた。

「もう少し可愛らしく喘いで欲しいですね?」

 頭を手で固定され、喉の奥に奥にと入り込むナギゼアの陰茎で、息が出来ずに苦しい。
 漏れた涎が口周りに溢れ、鼻水が出て、涙がボロボロと流れる。
 
「無理じゃないか?まさかジュリテアにもそんな事してないだろうな?」

「まさかっ!」

 2人の愛はジュリテアにのみ向いている。
 だったらジュリテアだけ相手したら良いのに、1対複数人になる為か、発散しきれない欲を、ラダフィムは僕で補うようになっていた。
 顔が一緒だった事を光栄に思えと言われた。
 今日も後ろにドロリと潤滑油をたっぷり垂らされ、ズブズブとラダフィムの大きな太い陰茎が入ってくる。
 旅の間中入れられて、すんなりと入るようになってしまっていた。

「ーーーーーーーッッッ!」

 一気に奥まで到達し、グチグチと抜き差しされる。
 内臓が押し上げられ、吐き気かしてくるが、吐けば汚いと罵られ殴られるし、今はナギゼアのモノが喉に入っているので、吐く事は出来ない。

「………ぐぶっ……………ぐっ…………お゛っ!」

 早く終わって欲しい…………!
 キツく紡いだ目は終わるまで開けた事はない。
 怖くて、痛い。
 ただそれだけだ。

 ドプドプと上も下も身体の中に吐き出されて、嘔吐いて結局吐いてしまった。

 ーーー気持ち悪いーーー

 なんで自分はここにいるの?
 何の為にいるの?

 汚いとナギゼアに殴られた。
 口の中が切れて血を吐いて、また口淫させられて、後ろも擦り切れるまで入れられ続けた。

 

「ーーーーー!!!!」

 


 乱暴に開かれる扉の音。
 争う音と怒鳴り合う声。


 何?

 僕の意識はそこで途絶えた。











 誰かが泣いている。
 僕の名前を呼びながら、申し訳ありませんと、泣きながら謝っている。
 暖かくて、優しくて、気持ち良かったけど、泣いている人に1人思い当たって、僕は目を開けた。

「…………申し訳ありません。あんな事……、まさかナギゼアまで……。カシューゼネ様…………。」

 囁くように泣いて謝るのはアルゼトだった。

 僕が身じろぐと、起きたのに気付いてアルゼトは抱き締めていた腕を緩めた。
 僕はシーツに包まれ、あの廃教会に居た。
 
「………………アルゼト…。」

 出しにくい声は掠れていた。

「カシューゼネ様………。申し訳、ありません……。」

 アルゼトの顔は憔悴していた。
 
「貴方への暴力を見逃せませんでした。ましてや俺の兄弟がなんて……。アイツらは俺に見つからない様に、貴方に暴力を振るう間はジュリテア様の身の回りの世話をいい使っていたので、気付くのが遅くなり、申し訳ありませんでした……。」

 知ってるよ。
 だからアルゼトに言ったこと無かった。
 知られたくなくて、自分が汚い気がして、言わなかった。
 最後まで知られなかったら、綺麗で我儘なカシューゼネのままでいられるかなと、ちょっと思ってただけ……。

「逃げましょう……。」

 ダメだよ。
 浄化はやり遂げないと。
 国が大事なのではない。
 アルゼトと両親がいる国だから平和にしないと。

 それに、君と2人で王宮から逃げるのは、小説の中でアルゼトを連れて出て行ったカシューゼネと重なる。
 季節は丁度今と重なる。
 小説の中で謀反を働いて処刑された両親。
 カシューゼネが『神の愛し子』を独占しようと唆したのだと言われていたが、証拠がないと言ってカシューゼネは処刑を免れた。
 従者のアルゼトが手引きしたのだと、アルゼトも右腕を切られ、磔にされて死んだ。


 きっとアルゼトは部屋で乱暴される僕を見つけて、ラダフィムとナギゼアから僕を救い出し此処まで運んだに違いない。
 
 小説の中でも、現実でも、アルゼトはカシューゼネの仲間扱いになった。
 話の中ではヒュートリエ様から鞭打たれるシーンしか無かったのに、現実には犯され暴力を振るわれる日々だった。
 
 このまま2人で国から消えたら、どうなるのだろう?
 両親だけは助かる?
 仮にも愛し子であるジュリテアの生みの親。
 急に謀反だなんて言われないとは思うけど…………。

「カシューゼネ様、俺と逃げましょう。この国から、地の果てまで。」

 アルゼトは何でこんなに優しいんだろう?
 無表情なくせに真面目で優しくて……。

 僕はオレンジ色の蝶々を生み出した。
 ヒラヒラと舞って蝶は増えていく。
 まるで小説の最後のシーンのように、僕達を輝くように埋めていく。

「貴方は………、貴方は美しい。貴方は俺の美しい蝶です。」

 幸せを願うトゥワーレレ神の蝶々。
 僕はゆっくりと目を瞑り、長い長い夢を見た。

 













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