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9 痛いのは心か、身体か
しおりを挟む今回の浄化の旅は泊まりがけで数日かかると言われた。
進み具合と浄化範囲が広いので、日数は決まっていない。
僕はまた騎乗して行こうとしたのだが、今回はまたラダフィムの馬車に同乗させられてしまった。
少し寒くなってきたので、以前アルゼトと買いに行ったマントを着て来た。
頭からすっぽりといつもの灰色の頭巾を被り、殆ど誰だか分からない姿だ。
ラダフィムは氷の様な薄い水色の瞳で僕を見ている様だが、僕は気付かないフリをしている。
何故見ているのか分からないからだ。
だから僕は道中自分の思考に耽ることにした。
何故、僕の生家ツベリアーレ公爵家が謀反を働いたかだ。
両親は王家に背く様な人たちでは無い。
時期はいつだっただろうか?
今年では無い。
確かジュリテアが次の学年に上がって暫くしてだ。
夏も過ぎて………、そう、ちょうど今から1年後くらいじゃ無いだろうか?
この1年の中で謀反を働く様な何かが起きるのか?
カシューゼネが『神の愛し子』を手に入れようと唆したというが、カシューゼネはそんな事を考えるのだろうか?
そしてそれを許す両親とは思えないのだけど…。
本日の宿泊地に着いたと言われて僕はラダフィムと一緒に馬車から降りた。
「部屋は俺と一緒だ。」
「……え?」
ラダフィムから同じ部屋だと伝えられ驚く。
嫌いなカシューゼネと同じ部屋に泊まるとは思っていなかったからだ。
部屋に案内されると確かにベットが2つ。
本気だろうか………。
人前で頭巾を外すなと言われているので、もしかして寝る時もこれを被って寝なければならないのだろうかと溜息が出る。
夕食は別々だった。
ジュリテアと一緒に摂ると言って出て行ったので、下の食堂から適当に見繕って部屋で済ませた。
最近食べる量も減り、あまり肉々しいものは食べれない。
アルゼトも来ているが、ジュリテアの側にいる必要がある為、今回の旅では話す余裕は無さそうだった。
まだ王宮の物置き部屋の方が会う頻度がある。
早く浄化の旅を終えて帰りたいなと思った。
そうしたら、アルゼトとまた会う事が出来るから………。
あのオレンジ色の暖かい眼差しが恋しかった。
夕食を済ませたラダフィムは機嫌が悪そうだった。
愛しいジュリテアと過ごせただろうにと思ったが、ヒュートリエ様や双子従者もいるので、2人きりでは無いのが気に入らないのだろうと思った。
ラダフィムは高位貴族にありがちなプライドの高さがある。
頭も良く、騎士家系に似合う立派な体躯も持ち合わせ、未来は20代の内から何処かの団の団長になるのだろうと思わせる人物だ。
小説の中でもそんな事を書かれていた気がする。確か王族警護の多い第一騎士団だった気がする。
先にお風呂を済ませて正解だった。
帰って来てから使うのは使い辛い。
毎日暴力行為を行うナギゼアよりも大きいのだ。威圧感もあって、本当は同じ部屋にも居たく無かった。
ラダフィムは直ぐに浴室に消えて行ったので、僕は顔を合わせたくなくて寝る事にした。
宿のベットは今の僕の物置き部屋のベットよりふかふかで柔らかい。
貴族専用の宿らしく、調度品も品が良かった。
久しぶりに貴族らしい待遇だが、落ち着けもしないので早々と横になった。
ラダフィムと同じ馬車に乗った緊張から疲れていた所為か、直ぐに眠気がやって来て、ウトウトと寝入っていた。
ラダフィムが浴室から出て来たのにも気付かなかった。
バシンッッ!!
衝撃に驚いて一気に覚める。
「ーーー!?!!」
何か起きたのか分からなかった。
僕は一応と思って頭巾を被って寝たのだ。
確認する為に声を掛けるのも嫌だったので、だったら被ったまま寝る方がマシだろうと思っていた。
目を開けたがズレた頭巾で何が起きているのか視界が塞がれ咄嗟に分からなかった。
もう1度、今度は腹に鈍い痛みが走る。
殴られているのだと理解した。
逃げようにも身体に何かがのし掛かって逃げられない。
「ーーーがっはっっっ!!!」
息が詰まり食べた晩御飯が迫り上がってきた。
吐瀉物がついた頭巾が、むしる様に髪を一緒に掴んで剥がされる。
ぶちぶちと掴まれた髪が千切れていった。
痛いけど苦しくて息が出来なくて何も言えない。
僕の上にラダフィムが跨って下腹部の辺りに乗っかっていた。
僕は恐怖で竦み上がる。
僕より一回りも大きい人間が冷たい目で見下ろして、僕に暴力を振るっているのだ。
「はっ、汚いな。だが、同じ顔だ………。」
薄い水色の瞳は暗く、僕の顔を見下ろしていた。
………同じ?
ジュリテアの事を言っているのだと直ぐに理解した。
剥がされたシーツでグイッと力任せに拭われる。
切れた唇が痛かった。
「痩せたか?ヒュートリエ様がジュリテアの苦しみを味合わせる為に、お前の生活に制限を掛けると言っていたからな。」
薄ら笑いを浮かべてラダフィムは僕の髪をグシャリと握った。
また頭皮が引っ張られてぶちぶちと音がするが、構わず髪を引いて頭を持ち上げられる。
「………ああっ!」
顔を近付け匂いを嗅がれた。
「はぁ、腹を殴るのは止めるか。吐けば臭いな。」
自分が殴ったくせに勝手な事を言った。
「お前さぁ、俺の婚約の打診断っただろ?俺とジュリテアの婚約が取り消されたのはお前の所為だろ?せめてジュリテアの身代わりくらいにはなれよ。」
ジュリテアとラダフィムは元々婚約者だ。ラダフィムが強く願って婚約したのだと聞いていた。
カシューゼネが『神の愛し子』であれば、そのままカシューゼネがヒュートリエ様との婚約は継続され、ジュリテアとラダフィムもそのままだったのだろう。
しかし、現実ではジュリテアが『神の愛し子』でラダフィムは婚約者を王家に取られてしまった。
逆恨みか?
僕の所為じゃ無いのに、選んだのは何処にいるかも分からない神だ。
「お前は俺と結婚して、ジュリテアの代わりをしろよ。」
頭を枕に沈められ、口と鼻を手のひらで塞がれた。
「………っっ!?」
息が出来ない。
着ていた服を捲り上げられた。
ズボンと下着を力任せに引き下げられ、胸から腿の辺りまで何も着ていない状態にされた。
水色の冷たい瞳が、上から下までねっとりと舐め回す様に見てくる。
「………んぐっ!……ぐっ!」
抵抗しようとするが、力は圧倒的にラダフィムの方が強い。
口と手を塞がれているので、声を出そうにも喉から潰れたものしか出なかった。
酸欠で視界がぼやけグラグラし出して漸く離され、流れ込んだ空気に咽せた。
「ゲほっ!ゼェ、ぁ゛っっ、ぁ、はぁっ!はぁ!はぁっ!ゲホ、ゲホ、ゴホ!」
頭を横向けて、手で自分の喉と胸を掻きむしって息をした。
苦しい!
苦しい!
脚から服が取り払われるのも抵抗出来なかった。
流れた涙越しに見たのは、何かを僕に勢いよく掛けるラダフィムの姿。
ラダフィムは服を着ていなかった。
さっき跨った時から着ていなかったのかもしれないが、混乱していて覚えていない。
股に何か冷たくドロリとしたものが垂らされる。
「ゴホッ、はぁ、はぁ、………なに!?っいぃ!」
何かがお尻に入れられる。
ラダフィムの手が股の間に伸ばされていた。
ウネウネと動いて、それがラダフィムの指なのだと知り、ぞわりと背筋が凍る。
「……あ、やぁ!?なにしてっ…!!」
ラダフィムの指は騎士を目指す太い指をしている。氷の様な目と涼やかな顔ながらも、彼の身体は鍛え上げられ、指も手のひらもゴツく厚い。
だから、入り込む感触も圧迫感があった。
「いや!…いやいやいやいやぁ!!」
カシューゼネは恐怖で逃げようとするが、跨ったラダフィムはピクリとも動かない。
「……はっ!……やはり、処女か。面倒だな……。」
グリグリと穴は広げられ、性急に指が増やされピリッと痛みが走る。
叫んで泣くカシューゼネにラダフィムは興奮していた。
ジュリテアにはこんな事は出来ない。
普段から鍛えているカシューゼネに対して、花を育てお茶を嗜むジュリテアの身体は柔らかく華奢で、酷く扱えば直ぐにでも血を流し折れてしまいそうなのだ。
もういいか………。
カシューゼネに愛情は一欠片もなかった。
小さい頃からジュリテアとカシューゼネの2人を見て来たが、最初紹介された時からラダフィムの瞳にはジュリテアしか写っていなかった。
意志の強いカシューゼネに対して、弱く儚いジュリテアは、騎士を目指すラダフィムにとって護るべき対象。
カシューゼネの婚約者であったヒュートリエ王太子殿下ですら、ジュリテアの方しか見ていなかった。
カシューゼネはきっと『神の愛し子』になると思っていたのに。
勝ったと思ったのに……!
愛しいジュリテアを取られてしまった。
国の為と言われ、父から諦めろと言われては頷くしかなかった。
ラダフィムの怒りはカシューゼネに向かっていた。
コイツが期待通り『神の愛し子』で有れば良かったのだ。
カシューゼネの身体を労る気はない。
適当に慣らして興奮でビクビクと動く男根をカシューゼネの後孔に当てがった。
ジュリテアと同じ星屑を散らした様な青い瞳が恐怖に見開かれる。
目尻に溜まった涙がボロボロと落ちていった。
それにもまた、ラダフィムの被虐心を更に煽った。
既に透明な汁をぬらぬらと垂らす先端を無理矢理押し込めば、メリメリとした音ともつかない感触が、ラダフィムをもっと奥まで進めろと唆してくる。
「………ひぎぃっ!…あ゛ぁ!が、ぁあ、い゛ゃッッ!!」
痛い痛いと頭を振って泣くカシューゼネを押さえつけて、引いては勢いを付けて割り開いていった。
流石にラダフィムも痛い。
潤滑油を付け足して滑りを良くしつつ、避けた肉から出てくる血で滑らせながら犯していく。
根元まで押し込みゆさゆさと揺らし、股間に生えた白金の毛と黒い自分のものが血混じりの液体で混ざり絡み合うのを、涎を垂らしフーッフーッと興奮しながらラダフィムは見下ろしていた。
カシューゼネの歯の根がガチガチと音を立てている。
暫く時間を置き馴染むのを待って、ゆっくりと味わうように抜いて、激しく奥に叩きつけた。
「ひっ!!グゥ!?」
内臓が押し上げられたのか、またカシューゼネの口から胃液の様なものが吐き出された。
「ははっ、きたな…!」
ラダフィムは完全に酔っていた。
酒にとかではない。
この自分よりも小さい存在を組み敷いて犯す、異常な行為にだ。
人を護る立場も忘れて、カシューゼネは護る必要が無いと存在だと、心からそう思いながら、壊れてもいいと奥を突き続けた。
カシューゼネは痛みと恐怖に耳と目を塞いで、いつの間にか意識を失っていた。
暗闇の中、目を開いた。
音は無く、スースーと寝息が聞こえる。
カシューゼネの意識は途中で無かった。
痛む身体に目を開けて周りを見渡せば、ラダフィムは気が済んだのか自分のベットで寝ていた。
起きあがろうとしても身体が動かない。
もう空は白み始めている。
身体に治癒の力を使う。
オレンジ色の蝶は、カーテンの隙間から入る光に当たって、緋色に輝いた。
ゆらゆらと、自分の身体も燃えて無くなればいいのに…。
………そんな事にはならないか……。
燃えやしない。
身体は治癒され動く様になってきた。
あまり治しすぎると怪しまれる…。
治癒を途中で止めて、ズルズルと引きずる様に浴室へ向かった。
本気で、燃えたいと、死にたいと思わない限り、自分の炎で自分自身は燃えない……。
そういう気がする。
今、燃えないという事は、まだ生きたいと心が思っている証拠だ。
だから、もう少しだけ、頑張ろう……。
…はやく、こんな話し終わればいいのに。
出てくる湯に頭を突っ込み、カシューゼネは声を殺して泣いていた。
早く、終わってしまえ。
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