いつも眠たい翠君は。

黄金 

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12 春乃と高良

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 春乃は次の日の朝まで寝ていた。
 久しぶりに甘いものを食べている夢。
 甘い、甘い……。
 舌を伸ばしてペチョリと舐める。

「ちょ……、おい、春乃!」

 ハムハムと齧るが弾力がある。何だろう?何を食べてる?

「あっ………!こら、起きろ!春乃!流石に我慢が………っ。」

 チュウと吸うと何か出てくる。甘い……。

「んく……っ……。」

「やばいっ!ダメっっ!」

 無理矢理引き剥がされた。ぱちっと目を開けると目の前に服をはだけさせた高良がいた。
 目が合う。
 高良は頬を赤らめて慌てた顔をしていた。
 
「………………何してるの?」

「それは、こっちのセリフだ!!」

 高良の立派なチンコが立ち上がっている。なんなら僕の小さいのも。お尻はぐちゃぐちゃに濡れて、肌は暑い。
 
「寝てただけだ!なかなか起きないから、少しだけ一緒に寝かせて貰おうと思って!俺からしたんじゃ無いぞ!」

 僕は首を傾げて考えた。
 昨日酔っ払って寝落ち、二日酔いで苦しむ中、高良が訪問、吐いて寝た、以上。
 高良が世話をしてくれたのは理解した。起きるのを待ったけど、起きなくて不本意ながらベットが一つしかないから隣に寝たんだろう。
 何故か最初から備え付けの大きいベットがこの部屋には設置されていて、有り難く僕はこの大きいベッドを使っていた。大柄な高良が入っても余裕が有る。
 僕は高良の股の間に座っている。
 高良の立派なモノが目の前にある。
 夢で甘くて美味しいものを舐めてハムハムしてた…………。
 僕はジーーーとそれを見つめた。

「えへっ。」

 誤魔化すように笑うと、高良は中途半端に上げていた上半身をグッタリと倒した。
 僕からはすっごく甘い匂いが出ていると思う。高良からも美味しそうな甘い匂いがする。
 お互い息が荒い。
 僕の発情に当てられているので、高良のチンコは立派に立ったままだ。この状態で我慢できる高良って凄いなと感心する。翠君は橙利と出会うまで処女だったと聞いた。高良の我慢強さの賜物だろう。
 ……………いや、我慢強すぎるな……。
 そっち方面に自信がないとか?こんな立派なものを持ってるのに……。

「何考えてる?」

 僕の顔を見て高良が胡乱な目で見て来た。

「高良のは橙利より立派と思うんだ。だから自信を持って?」

「余計なお世話だ!」

「はぁはぁ、ね?最後に一回入れて良い?……我慢できない!」

 僕は発情期なんだ!もうお尻がウズウズして仕方がない!
 早く番の子種を入れたいとお腹がキュンキュンしている。
 瞳を潤ませて躙り寄る春乃に、高良は待ったをかける。

「ま……、まて!その前に昨日お前に同意書を書けと言った件だが、間違いだからな!勘違いだ!…………あっ!はあっっ!」

 高良が話してる途中で、高良に跨って勝手にズブズブと高良のチンコを埋め込む。


「………~~~んあぁぁぁ~~~!」

 入れた瞬間にはしたなくも僕は射精してしまった。だって大きくていっぱいいっぱいで、ゴリゴリ良い所に当たって気持ち良かったのだ。
 久しぶりのセックスに腰が止まらない。

「ん、ん、きもち……ぃ………ぃ、あ、ん………。」

 腰を揺らし、長い黒髪が絹の様に春乃の身体に纏わりつく。その扇状的な姿に高良の意識はクラクラした。
 高良は眦を赤くし苦しげに呻いた。
 がしりと春乃の腰を掴み、思いっきり下に落とす。
 ズチュンッと激しい音と春乃の声無き叫びが起こり、串刺された春乃は痙攣しながら止まった。
 フーフーと荒く息を吐きながら、高良は呻くように言った。

「……待てと言っただろう!?」

 驚いた春乃の目が丸く見開くと、ポロポロと目から涙が溢れ出す。
 少し吊り目の大きな目は、高良を見つめて後から後から涙の粒を落としていった。
 番から拒否をされた。
 ずっと泣くのを我慢していたのに、そんなに僕とのセックスは嫌なんだろうかと、春乃は拒否されて我慢が出来なくなっていた。

「…………っ!な、あ、痛かったのか!?すまないっ!」

 高良は慌てた。泣かせるつもりでは無かった。ただちゃんと話をしたかっただけだ。
 いつもは冷静沈着な高良も、思わぬ展開に慌てていた。

「…………だって、番解除したらこれが最後だもん……。」
 
 ハラハラ涙を流しながら言う春乃が、あまりにも綺麗で可愛くて、高良は一瞬見惚れたが、自分の息子は春乃の中に入ったまま熱を持って暴れ出しそうだし、言いたかったこともある。その為に来た。決して春乃の発情期を狙ったつもりはなかった。
 高良の思考は今ぐちゃぐちゃに回っていた。
 だからこそ長年抱えていた想いを、漸く言えたのかもしれない。

「春乃、婚姻届を出そう。」

 上半身を起こし春乃を抱きしめて、目を見つめて言う。

「書いて欲しかったのは、番解除の同意書じゃなくて、婚姻届だ。」

 泣いていた春乃の涙が止まった。
 昨日の朝、やって来たオメガは番解除の同意書と言ったのだ。だから、同意書を書いてやけ酒をした。
 発情期と二日酔いで具合悪くなった方が、全て忘れてしまえると思った。

「……あの人、恋人じゃ無かったの?」

 ポツリと呟くと、高良は嫌そうな顔をした。

「秘書の事か?あれは単なる社員だ。第一秘書に任せたが、地方に飛ばす事になる。」

 そう……なんだ………と春乃は呟いて、先程までの欲情していた顔は、驚きすぎてポケーとしている。

「………何で、今頃?」

 高良はグッと喉を詰まらせた。
 口を開けては閉じ、モゴモゴと何かを言おうとする。

 春乃はただ待った。
 初めに番ってから、春乃はいつも待っていた。
 高良が話してくれるのを。いつか自分を見てくれるのを。いつか……、自分を好きだと言ってくれるのを。
 もしかしたらこんな我儘な僕に執着してくれる日が来るかもしれないのを。
 翠君にベッタリと嬉しそうにくっ付く高良を見て、羨ましかったのだ。
 だからずっと待っていた。
 高良が次に好きな人ができる前に、僕に執着してくれないかなって。夢見るみたいに思ってた。
 でも何で今まで会ってもいなかった番に、結婚しようと言うのだろう?
 もしかしたら社会的に何か言われてるのかな?
 
 高良はチラリと春乃の目を見た。
 頬に大きな手を当て、真っ直ぐに春乃を見つめる。

「実はずっと澤井さん達とやり取りをしてた。春乃の様子を聞いてたんだ。今ある作業場も店舗もこのアパートも俺が用意したやつだ。ずっと、……その、見てたんだよ。」
 
「………ずっと…?いつから?」

「こっちに越してくる前から。」

「だいぶ前だね。」

「いいだろ!言い出しにくかったんだ。それで書くよな?婚姻届。」

「え、……う、うん?」

「何故、疑問系!?…………いや、もう良いって返事もらった事にしよう。……もう、限界。無理。飛ぶ。」

 え?何が?と言う間もなく、グルンと大勢を逆転される。
 高良の目が獣みたいに欲情していて、小動物の様に春乃は固まった。
 入ったままの高良の陰茎は、春乃の中で治るどころか大きくなっていた。

「……あっ!……やぁ、んん……、あ、あ、あぁ!?」

 ガツガツと春乃は貪られる。
 そう言えば初めてやった時も二人は直ぐに意識が飛んでしまったのだ。
 今回は止める人間がいない。
 本当は春乃に誕生日の祝いの言葉を言って、一緒にプレゼントを買いに行こうと誘うつもりだったのに、高良の理性は脆くも崩れ、すっかり忘れてしまっている。
 春乃が取った発情期休暇は、無事二人で過ごす事となった。
 





 そして二人は気付いていなかった。
 お腹に出来た一つの命に。
 春乃の悪阻で慌てて病院に行って、医者に言われるまですっかり忘れていたのだ。発情期の性交は避妊をしないと子供が出来てしまうという事を。

「ウェディングドレス手直ししなきゃ!もう、二人して忘れるとか!」

「いや~、ある意味性格が合ってるよね、君達。だから番になったんだよ。」

 澤井夫夫にウェディングドレスを注文していたので、妊婦用に変更しなければならなかった。
 
「すまない。手直し代も請求に入れてくれ……。」

 家で寝ている春乃に代わり、素直に高良は謝る。この夫夫にはお世話になりっぱなしになっているのだ。

「良いですよ、その代わり結婚式の風景を撮らせて下さい。Webに上げて良いですか?」

 有無を言わせぬ要求に頷くしか無かった。



 

 パソコンの画面に映る美しい番を見ては、高良の頬は緩む。
 純白のウェディングドレスは総レースを使用して体格を分かりにくくしている。人形のように美しい人が濃紺のソファに座りピクリとも動かない。俯く眼差しはただ下を向き何も映さないガラス玉のようだ。
 降ろした漆黒の長髪が窓から入る明かりに照らされて白く光り、その艶やかさを強調している。
 メイド服を着た人間が、まぁ澤井夫夫のオメガの方だが、白く滑らかな肌に化粧を施し、長い黒髪を丁寧に結えていった。ベールを被せて顔を出させる。
 その間も春乃はピクリとも人形の様に動かない。
 メイドがいなくなると、誰かが手を差し伸べる。画面には映ってないが、この手は俺の手だ。
 白のタキシードに手袋をして後ろ姿だけ映っている。
 人形がピクリと初めて息をしたかの様に動き出す。
 手を差し伸べた人を見て、ゆっくりと微笑んだ。
 聖母の様に、天使の様に。
 
 澤井夫夫のブランドのPR動画なのだが、反響は良いそうだ。
 最後に笑った顔は世に出したくながったが、澤井夫夫に勝てなかった。
 番に見せる顔だからこその、あの笑顔なのだと言って。
 結婚式は無事に終わり、春乃のお腹はかなり大きくなった。臨月が近い。
 高良は今日も、定時でいそいそと帰り支度をした。











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