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36 これは、練習……??
しおりを挟む胸に走るツキンとした痛みに、オリュガはビクンと身体を揺らした。
うう……………、がまん、がまんだよ!
暖かく柔らかいものにぬるぅと舐められて声が出そうになり、慌てて自分の手で口を塞いだ。
「………………んぅ………。」
少し漏れた吐息のような甘い声に、かあぁぁぁと顔に熱が溜まる。
チラッと見ると、群青色の瞳と視線があった。
慌ててきゅっと目を瞑る。
これはっ!練習だよ!!
きっと熟練者になれば平気になるんだよ!剣術とか魔法とかと一緒だよ!
オリュガは心の中でそう唱えて我慢しているが、そう思っていそうなオリュガをナリシュは止めるつもりはない。
赤い顔で瞳を潤ませて我慢する姿もそそる。
ナリシュの好きな紅茶の匂いが獰猛な感情を湧き立たせるが、それを理性で押し留めた。
オリュガは強い。勿論純粋に強いという意味もあるが、それは精神的なものの意味でもある。無理矢理身体を繋げたってオリュガは簡単にナリシュのものになるとは思えない。
オリュガが欲しがらなくては意味がない。
今は少しずつ騙しながら近付いていこうと決めていた。
隣にいることが、こうやって二人きりで過ごすことが当たり前だと思わせないといけない。
まだオリュガはイゼアル・ロイデナテルをその位置につけている。
どこにいてもナリシュの方を向くようにしたい。
その為にもオリュガの意思は尊重していかなければならない。
まさかこんなに性的な知識が乏しく幼いとは夢にも思わず、最初は身体からでもいいかと思っていたのだが、その方法はよくないと感じた。
一度拒否されたらオリュガはスッパリと縁を切ってしまう。そう感じさせる潔さがあった。
オリュガは自分の胸に吸い付く唇を見て心臓がずっと跳ね上がっていた。
ナリシュ王太子殿下は暫くいつも通り首筋を舐めていたのだ。触れる唇の感触にくすぐったさを感じて首を縮めると、ダメだよと言われてオリュガが着ていた服の前ボタンを外しだした。
何をするのかと驚いていたら、オリュガ胸に舌を這わせ、胸の乳首を舐められた。びっくりして見ていたら上目遣いに見上げた殿下の視線とバッチリあってしまい、オリュガは何も自分はしていないのにと思いつつも恥ずかしくて目を閉じてしまった。
そこからオリュガの乳首は舐めたり吸われたりと、緩急つけて刺激を与えられ続けている。
「…………ん、ん、ね、……ねぇ、殿下?もう僕、ヒリヒリするよ?」
片方ばかりをずっと弄られて、オリュガは根を上げた。チュッと離された自分の胸は、赤く腫れているように見える。
うう…………………、なんか、やらしい…。
テラテラと濡れて赤く光る自分の乳首を見て恥ずかしさが増す。
「そう?ごめんね?じゃあもう片方にするよ。」
え!?そうじゃない!
と言う間もなく反対側を咥えられてしまった。しかもさっきまでしゃぶられて赤く腫れた方は殿下の指が摘みグニグニと弄られる。
「………………ちが、違うもんっ!………ん、…だめっ!」
ジュウー……、と強く吸われて咄嗟に殿下の頭を掴んだ。サラサラのプラチナブロンドが指に絡む。
舌がぬるっと動き吸われているのを感じた。先に吸われていた方は指で摘み弾かれて、痛いのかなんなのか分からない。
先程とは違い、今度は強く吸われてカリッと軽く噛まれた。
「………んあっ!」
身体の急所を突かれたように激しく感じてしまう。
オリュガは何故胸をずっと弄られているのか分からず困惑していた。そしてナリシュ王太子殿下のこの行為に自分が興奮してしまっていることにも驚いていた。
指で挟まれた胸はカリカリと爪で引っ掛れ、乳輪ごとキュッと摘まれ、その痛みに身体がまた跳ねる。
「………うう、酷いよぉ………、変態、ばかー……。」
噛まれた乳首がまだヒリヒリする。
文句を言うと舌を出しながらナリシュ王太子殿下の口が漸く離れた。
離れた自分の胸を見ると、こちらも赤く腫れてしまっている。
「大丈夫、切れてないよ。」
え?そういう問題?
オリュガの頭の中には、はてなマークがいっぱいだった。オリュガはオメガで発情期も既にきているが、抑制剤で抑えてしまう為あまり自慰をしたことがなかった。勿論自分の胸も触ったことがない。
自分の陰茎を擦って射精したことはある。たまたま発情期の時に体調が悪くて抑制剤の効きが悪く、下半身が疼いて仕方なくなりどうしたらいいのか分からず、やったことはなかったのだが聞いていた話ではこうだったはず…、という程度の知識で射精した。まぁ、出た。ちゃんとその時精液は出たのだが、気持ち良かったかと言われると苦しかったというのが正解だった。
だからオリュガの発情期は薬頼りだった。
そりゃ、抑制剤に頼らず自分で欲は吐き出すのが身体にはいいかもしれなけどね…?なんか気持ちよくなかったんだもん。というのが今までのオリュガだった。
それなのに今オリュガの陰茎は見事に勃ち上がっていた。
こんなことは初めてだ!
でもどうしたらいいのか分からない。しかもぴったりとしたズボンを履いている所為で下半身が苦しい。
「ズボン、脱がせてもいい?」
「……………え!?」
まさか、まさか僕のが硬くなってるのバレたの!?何故分かったのだろうとオリュガは慌てた。ナリシュから言わせると分かるに決まっているということなのだが、オリュガは色々と経験がなさ過ぎた。
簡単にズボンは膝まで下ろされてしまう。
「………っ!手品!?」
「………腰が上がってるからね?」
自分が気持ち良くて我慢できずにお尻が上がっていたことにオリュガは気付いていなかった。
プルンと出た自分のモノに、かぁぁと羞恥心が上がる。手で隠そうとしたがナリシュ王太子殿下に片手で手首を取られて頭の上に縫い止められてしまった。
「はわっ、わ、あ、やぁっ、見ないで!!」
「見るよ?」
ひどい!オリュガはナリシュ王太子殿下の顔を睨んだ。といっても羞恥心で顔は赤いし目は潤んでいるしで威力は全くない。
「キツそうだからね?帰る前に抜いておかないと…、ね?」
ナリシュは優しく諭した。
そしてオリュガは簡単に納得してしまった。確かにこのままでは帰れない。この前よりも完全に勃ち上がってしまっている。
「でも……、前やったけど、気持ち良くなかったんだよ………?」
一応出たけど苦しいしスッキリしたのかよく分からなかった。その時も一回射精したらまだムズムズしてはいたけど落ち着いてしまったのだ。
そう素直に白状すると、何故か殿下が固まっていた。
「……………ああ、うん、そうなんだね。」
ナリシュ王太子殿下の歯切れの悪さにオリュガは不安になる。
オリュガは元々性欲が薄い。抑制剤をきっちり飲む所為だが、性欲が湧いたことが数えるほどしかなかった。なので自分はもしかしてちょっと他のオメガとは違うのだろうかと不安になっていた。特に前世を思い出してからはアルファの匂いにも鈍くなってしまっていたので、尚更医師に診て貰った方がいいのだろうかと密かに悩んでもいた。
「……へ、変?僕、変かな?」
「いや、全然変じゃないよ。私がやってあげるからね?心配しないで。」
ナリシュ王太子殿下の優しい笑顔にオリュガはホッとする。変じゃなかったんだぁ~と安堵した。
その様子をナリシュは見つめ、オリュガの手首を留めていた手を解いて、首から脇に腕を通して上半身を上げてやった。
「え?何するの??」
自分の下半身がよく見える体勢になり、オリュガは慌てた。更にナリシュ王太子殿下の手がオリュガの陰茎を掴んだので、ビクッと震え足を慌てて閉じてしまう。
「ダメだよ、足は開いてて?」
あくまでナリシュ王太子殿下の声は優しい。オリュガの上半身が上がったことによりナリシュ王太子殿下と顔の距離が近付き、思いの外耳元で響いた低い声にドキドキとする。
ただでさえこの部屋はナリシュ王太子殿下のフェロモンが充満しているのに、まだまだ濃い匂いに包まれるようだった。
足を開いていてと言われておずおずと開く。
「………あ、はぁ、は、恥ずかしい……。」
「大丈夫、普通のことだよ。」
普通?これ普通なの?こんな恥ずかしいのが??オリュガの思考回路はパンク寸前だった。
軽く陰茎を上下に扱かれてオリュガは自分の下半身が震えるのを感じた。ナリシュ王太子殿下の大きな手が自分の陰茎を包み込んでいる!暖かくて優しくて、でもちょっと力強くて気持ちがいい!
「……………あっ、あぅ、ん、や、やぁ、だめ、だめ、だめ、、、」
「ほら、先っぽから出てきたから、こうやって擦ると気持ちいいよね?」
出てきた先走りをナリシュは親指で広げながら先っぽを擦った。ぬるりと滑りオリュガの陰茎がヒクヒクと動いている。気持ちがいいのだ。ナリシュのモノよりも細く短い陰茎は、オメガらしいサイズだった。
「や、やぁ、やだ、出ちゃう、やだっ、んぅ、ん、ん、んっ!」
抵抗しているような喘いでいるようなオリュガの声に、ナリシュも興奮しているが、自分の陰茎を挿れるのはまだまだ先だ。今やれば驚いて近づかなくなりそうだと感じた。だからかなり我慢している。
ひくひくと痙攣して、ピュピュとでた白濁が床に散った。オリュガの服も汚れてしまったが、ちゃんと着替えは用意している。
はあーー、はあーーと苦しげにオリュガは自分の服を握りしめて荒く息をしていた。
「どうかな?気持ち良くなかった?」
オリュガは疲れたようにトロトロと緋色の瞳を上げてナリシュを見上げた。
ナリシュはゴクリとなる喉を懸命に抑えてニコリと微笑む。
「………ん、自分でするより、気持ち良かった……。」
でも疲れたなぁとオリュガは呟く。
ナリシュはベットの天蓋を降ろしミリュミカを呼んだ。直ぐにミリュミカはやってきて、手早く床を清めて着替えの用意を整える。
「さぁ、帰れるかい?」
ナリシュ王太子殿下に尋ねられ、オリュガはちょっと寂しさを覚えた。そして何故そんな気持ちが起こるのかと不思議になる。
「う、うん、平気。」
慌ててそう答えた。どう答えたらいいのか分からなかった。
「ミリュミカ、ちゃんと公爵邸に入るまで送り届けてあげて。」
ナリシュはまだオメガの匂いを撒き散らすオリュガを心配してミリュミカに命じた。ミリュミカしか信頼して任せられる人間がいない。
ミリュミカは頷いた。
「必ず送り届けて参ります。それからナリシュ様の着替えは用意済みですので。」
ナリシュはちょっと苦笑した。
「オリュガ、また明日学院で。それから次の休日も練習しようね?これは秘密の時間だよ。」
「……え?秘密?これって秘密なの?」
そう、とナリシュが頷くのを、オリュガは赤い顔で頷いた。
オリュガを送り出しナリシュははぁ、と息を吐く。
「なかなかの拷問だね。」
これは早くオリュガに慣れてもらわねばナリシュがそのうち我慢出来なくなりそうだと髪をかき上げ風呂場に向かった。
無事ミリュミカに送り届けられたオリュガは、フラフラと屋敷の玄関に到着した。
秘密、これが秘密の時間?前に言ってた秘密の時間っていやらしいことをする時間なのだと思うと、オリュガの顔は赤くなる。
そんなオリュガの前にノアトゥナが立っていた。その後ろにはビィゼト兄上とニンレネイ兄上までいる。
「…………わ、わ、な、すっごい殿下の匂いが!まさかやったの!?」
ノアトゥナはワナワナと震えながらオリュガに詰め寄った。
「え?や、やった?」
ノアトゥナはじーとオリュガを観察した。ノアトゥナは聖魔法が使えるので、怪我していたりする場所がなんとなく分かる。
「ちが、う?でも僕もしたことはないし…。どーなのかな…。」
主にオリュガの下半身を眺めながらノアトゥナは呟く。
オリュガはオリュガでさっきまでナリシュ王太子殿下の部屋で自分が射精したことを見透かされたようで、きゅうと緊張した。
「ヤッテナイ。」
硬いオリュガの返事にノアトゥナは疑惑を深める。
「本当に?」
「ヤッテナイョ。」
この時点で何をやったのかという認識にズレが発生しているのだが、玄関ホールで二人のやり取りは続いている。
「……………いいのですか?そのうち手を出すのでは…。」
ニンレネイは酷く心配した。
「傷付けることはしないだろうが…。一応正式な婚約者にするまでは最後までしないとは約束したな。」
「最後までは……。」
「のらりくらりとした言い方が親子そっくりだ。」
だから王族はなぁとビィゼトは愚痴る。
「お前も変な王族には引っかかるなよ。」
ビィゼトの忠告にニンレネイは、国王含めた王族を変呼ばわりできるのは兄上だけですと呆れてしまった。
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