偽りオメガの虚構世界

黄金 

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58 番いになる日

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 鳳蝶はちゃんとした発情期が来た事がない。
 常に強い抑制剤で抑えていた所為だ。
 その抑制剤を飲まなければ、アルファの刺激で直ぐに発情するだろうと言われていた。
 

 朝の薬を止めた。
 ピアスの緊急抑制剤の制御装置も切っている。避妊薬は飲めと言われたので飲んだ。
 光風は今医師の説明を受けに行っていた。
 状況に合わせて鳳蝶に薬を与えるかどうかの判断をしなければならないからだ。光風に出来るのだろうかと不安になってきた。

 この部屋は病院の中ながら発情期の番い用の部屋という事で内装が凝っている。
 ベットも大きいので、鳳蝶がゴロゴロと転がっても余裕がある。

 光風の事を考えてみる。
 花装飾って言ってたけど、フラワーアレジメントの事だよなと、鳳蝶はうんうんと一人頷いた。
 確かにホテルのロビーは凄かった。
 外でもないのにそう思わせる紅葉の波に圧倒された。
 次は白い花で雪景色を作ると言っていた。
 鳳蝶がイメージになるとニコニコ笑いながら話す姿は子供の様だ。
 それが光風の本当の姿なのだろうと思う。

 それにしても、今からかぁ~。
 周知された状態で番になるという羞恥。
 ゴロゴロ、ゴロゴロと恥ずかしくて転げ回る。

「鳳蝶、何やってんの~?」

 突然かけられた間延びした声に、鳳蝶は驚いた。
 
「え?……いや、その……。」

「恥ずかしいんでしょお?」

 そうだけど、言わないで欲しい。
 光風の揶揄いに、鳳蝶は真っ赤になって俯いた。
 光風が無言になったので、どうしたのかと鳳蝶は顔を上げた。鳳蝶はベットの上で転がっていたので立っている光風の顔は大分上にある。
 
「あ…………。」

 光風は緩く笑っていた。
 ジッと鳳蝶を見ているけど、その瞳はどこを見ているのだろうか。


「…….うん、いいね。やっぱり鳳蝶はいい。」



 光風の目には鳳蝶と花が見えている。
 赤く色づく頬、潤んだ色素の薄い茶眼、伸びかけの巻いた髪が頬にかかっていたので、手を伸ばして耳にかけてあげた。
 首を少し傾げて片目が細まる。くすぐったかったのだろう。
 触れた指先から色香が漂う。
 鳳蝶も光風も抑制剤を飲んでいない。

 花の甘い香りがする。

 光風は現実と空想が被ることがある。
 現実は見えているのに、そこに花が咲く景色が見えるのだ。
 数多の蕾が現れては花の群れへと移り変わる。
 思い浮かんだ空想の花世界。
 鳳蝶には綺麗に咲き誇る花が見えている。
 鳳蝶と花と光風だけの世界。

 誰にも言ったことはない。自分が幻覚を見ているのかも分からない。分かるのは言えば面倒な事になるという事だけ。
 言わなければいいのだ。
 生きていく事に不便はない。
 好きなモノにしかこの現象は起きないのだから。

 アゲハに見えた花よりも、さらに複雑に多種多様な花が見える。
 現実にある花も、あり得ない知らない花も、鳳蝶が瞳を瞬くたびに起きる虹色も、水の粒も、全て幻覚だと知っている。
 だがそれがどうしたというのか。
 

「………………光風の目には何が写ってるんだ?」

 鳳蝶は何かを感じるのか、光風の瞳をジッと見て尋ねてきた。

「………綺麗で可愛い鳳蝶だよ。」

 誰にも言わない。自分だけが知っていればいい。
 この綺麗な世界を。
 それをほんの少しだけ花装飾で周りに教えてあげる。
 それで満足だ。



 死んだ花になった母親よりも、鳳蝶の花は綺麗だ。
 この香り立つ花群は光風のもの。

 転がって見上げていた鳳蝶を仰向けにさせた。
 病院用の寝巻きは患者用に脱がせやすくなっている。紐を解いて素肌を露わにすると、鳳蝶は恥ずかしそうに手で隠した。

「何で隠すの?」

 服は邪魔だ。それにこうやって脱がせていくと、鳳蝶の香りが高まっていく。
 震える手が服の裾を握っていたが、そっと外させると素直に従った。
 長い睫毛の奥からチラリと視線を寄越して、真っ赤になって横向いてしまう。
 ぬけるような白い肌がピンク色になっていく。

「ふふ、胸まで真っ赤になったね。そのうち全身なりそ。」

「…………お、おま…っ!恥ずかしいから言うなっ!………………っあ!」

 キュウと乳首を摘むと、鳳蝶が高い声をあげて震える。
 胸をクニクニと揉みながら、片方の手は脇から腹までゆっくりと撫でる。
 ズボンの腰から手を入れて、中をゆっくりと撫で回すと、また花の匂いが強まってきた。

「…………あぁ…………やだぁ…………。ん…、ぁ、………におい、する。………いー、におい………。」

「そーだねぇ~、俺からも出てるねぇ……。」

 鳳蝶の目から涙が落ちる。興奮し過ぎて眦に溜まった一雫だ。
 赤い顔でうっとりと光風を見ている。
 発情期に入ってきているのだろう。
 まだ番になっていない。
 発情期には直ぐに入るだろうが、フェロモン過多を起こして呼吸困難や失神、痙攣等起こす可能性があると言われている。
 その為の抑制剤や薬も渡されたが、そうなると番になる為の行為が出来なくなる。
 その場合はまた時期を開けてチャレンジする事になると説明されて、光風は冗談じゃないと思った。

 一度で成功させる。

 その方が鳳蝶の苦しみは軽減されるし、光風も鳳蝶を永遠に手に入れる事が出来て幸せだ。

 ゆっくりと上手に発情させていく。
 ズボンと下着をずるっと下にずらすと、鳳蝶のピンク色の陰茎がぷるっと出てきた。
 かわいいなぁと言いそうになり、あんまり煽るとダメだと抑制する。
 既に透明な液体が先っぽから溢れてきていた。
 親指にそれをつけてヌルヌルと擦ると、鳳蝶はため息の様な吐息を出して喘いだ。
 
 今まで光風は何をやるにしても好き勝手にやってきた。セックスも勿論そうだったのだが、相手に合わせて進める困難さに、今初めて奮闘していた。
 何としてでも項を噛む。
 その執念である。

 それにしても可愛い。と言うか妙な背徳感を感じる。
 鳳蝶は目が大きいので童顔だ。
 体型は一時期より大分痩せたが、まだぽっちゃりの域を出ていない。しかしそれがまた幼児体型っぽくて、まだ幼い人を犯すような背徳感を生んでいた。

 ズボンとパンツを脱がして、光風も全裸になる。
 鳳蝶がモジモジと恥ずかし気にするので、毛布を一緒に被った。
 キスをして舌を絡めると、鳳蝶の舌も懸命に合わさってくる。
 舌、ちっさ。
 身体は柔らかいし、フカフカする。
 鳳蝶の片足を上げて、お尻の間に手を這わせると、しっとりと濡れていた。
 窄まりに指を当てて、ヌププと一本入れてみる。
 鳳蝶が枕をキュウと掴んで、喉を鳴らした。
 
「鳳蝶はお尻に指入れてた?」
 
 唇を離して尋ねると、鳳蝶は目を瞑ってコクコクと頷いた。
 指を増やして抜き差しすると、喘いで身を捩る。

「そぉかぁ~。気持ちいーね。」

「…………ん、だって….…お前、サブ垢でやった、後、ぁ、苦し…………。」

 サブ垢?アゲハとセックスした後の事?

「いつも本体も苦しかったんだねぇ。ごめんね。」

「…ぁ、あんっ………いい。今、出来てる、から…………いー………。」

 はぁはぁと息を吐きながら、鳳蝶は今が気持ち良いから構わないと言う。
 可愛らしくてイジらしくて、光風の理性も限界が近い。
 あっという間に指を三本入れれる様になる。
 チュポッと抜くと、鳳蝶がブルルと震えた。

「もう、入れちゃうね……。我慢できないや……。」

 光風の欲望の塊が鳳蝶の中に入っていく。
 アゲハではない鳳蝶の中は、暖かく気持ち良い。光風の腰もゾクゾクと震えた。
 ヌプヌプと小さく抜き差ししながら奥に進めていく。

「…………………ひぁっ…!」

 最後の最後に奥まで一気に押し広げると、我慢していた鳳蝶が小さく悲鳴を上げた。
 まだまだ行けそうだが、鳳蝶から濃厚なフェロモンが出ている。
 目は潤み、口は半開きで涎を垂らして喘ぐ姿に、光風の息も上がり汗が滴り落ちる。
 枕を掴んでいた手は解けて、必死に光風を探していた。

「ここだよ、鳳蝶………。」

 指を絡めて押さえつける。ググッと奥へ光風の陰茎を押し込むと、中がうねりもっと奥へと誘い込んでくる。
 オメガを抱いたのは初めてではないのに、初めて感じる快感へ陶酔した。

 一度抜いて鳳蝶をひっくり返し、またヌププと入れ込むと、あっさりと奥まで入ってしまう。もう出ないでと言う様に、暖かく迎え入れてくる。

「………ああっ!」

 べろっと鳳蝶の項を舐めると、喉を仰け反らせで甲高く鳴く。
 乳首を弄り、鳳蝶のピンク色の陰茎を扱くと、ビクビクと白濁を吐き出した。
 中が痙攣し収縮するので光風も出しそうになる。

「あぁ……気持ち~~~………。」

 花が咲いている。
 光風の目には満開の花が咲き、枝を伸ばし、葉が茂り、白くて綺麗な花が見えていた。
 口を開けて項に歯を立てる。
 グッと力を入れると、白い花が赤く染まった。
 ググッと更に犬歯を突き立てる。
 鳳蝶の肌も白い。柔らかくて美味しい。
 腰を揺らして噛み付いたまま鳳蝶の中に吐精した。。ドクドクと沢山出ているのが自分でも分かる。
 フーッフーッと息が上がり興奮が止まらない。
 口を離すとくっきりと歯形がついていた。

「……あっ、あ、……なった…?なんか、ゾワゾワした………。力、入んね………。」

 鳳蝶が潤んだ顔で心配気に後ろを振り向いた。発情期で意識が飛びそうになりながらも、光風がゆっくりとやったので、何とかあったらしい。

「…………ん、たぶん、ね。これで定着したら、良いんだよ。」

「………そっか………。」

 鳳蝶がホッと安堵する。

「さ、ここから本番でやろうかぁ?」

 光風の宣言に、鳳蝶はえ?となる。
 今のが本番では無いの?
 
「ほら、鳳蝶のフェロモンが過剰に出てこないか見ないとぉ。」

 笑顔で光風は言い切った。まだ太い陰茎は抜かれていない。
 ユサユサと腰を振られ、鳳蝶は硬さを取り戻しているそれに驚いた。

「……え?さっき、出た?」

 そうは思うが自分もまだまだ下腹部が疼いている。自分自身のも勃ち上がっているのに気付き、あれ?と不思議そうな顔をしていた。
 ゾワゾワした快感が止まらない。
 上半身を持ち上げられ、光風の腰の上に乗せた体勢で座らせられると、深く鳳蝶は貫かれた。

「は、ぁんっっ!?」

 何だこれ?何だこれ!?
 快感が止まらない!
 抱え込まれて両胸を弄ばされると、身体が熱くなり下腹部に力が入った。
 ウズウズとした感覚に、腰が揺れる。

「あ、あ、何でぇ!?あ、気持ち、んぁ………や…………………ひんっ!」
 
 光風が動くと気持ちがいい。

「初めての発情期だもんねぇ。俺ももう理性持たなそうだから、一緒に堕ちちゃおうねぇ~。」

 光風の言葉の意味が半分しか頭に入ってこない。
 発情期……、そぉだ発情してるんだ。
 光風と番になった。
 それから、それから…………?

「んあぁ!やぁ……!」
 
 肩を押さえつけられ深くグプゥと光風の陰茎が入り、項をまた舐められ甘噛みされて、鳳蝶の意識は飛んでしまった。







 一週間後、無事に部屋から出て、項の噛み跡がくっきりと残っていて、それを見た両親からおめでとうと言われて鳳蝶は恥ずかしさに悶えた。

 検査入院で二日まだ退院出来ずにいると、仁彩と楓が祝福がてらお見舞いに来た。やたらと仁彩から僕の予想通りだよっと嬉しそうに語られて、楓が本当にねぇと苦笑いしていた。
 何を予想してたのだろうか。

「仁彩はまだ番にならないの?」

 鳳蝶もそこは気になっていたが、流石に聞くに聞けずにいたところを、楓はズバッと尋ねている。

「うん、まだ発情期来てないから。僕半年周期くらいなんだよね。二月くらいかなって思ってるんだけど。」

「はっ、じゃあ、バレンタインに合わせて、さぁ僕を食べてってチョコ塗っちゃう!?」

「え!?バレンタインってそんな事するの!?」

「いや、違うから、本気にしない!楓も嘘言うんじゃねぇ!!」

 騒いでいたら、看護師から二人はポイと出されてしまった。















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