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9 またお前か!
しおりを挟む夜十二時になると仁彩はログアウトしてしまう。あんまり遅くまで『another stairs』に入ってると疲れるんだそうだ。
発情期はもうきてるくせに、精神年齢はややお子様並みなので、しっかり睡眠を取りたいようだ。
オレは睡眠時間は少なくても平気だ。
三時間くらい寝て早起きして弁当作って早めに学校に行っても平気だ。
休みの日に寝溜めすれば良いと思っている。
仁彩がいなくなると、『another stairs』の町をぶらぶらと歩く。
たまにオメガやベータの女の子に声を掛けられて遊ぶ。偽りのアルファを見破られた事はない。
話し方や接し方が、特に演技しているわけでもないのに、如何にもアルファっぽいらしい。
オメガの印象は小さくて可憐で庇護欲を誘うというものだ。
知り合った子達が話してたけど、例え性別を変えていてもオメガは分かると言っていた。
分かってないじゃんとは心の中で思ったけど、正解だねって合わせておいた。
お前らこそオメガに変えてるけど、単なるベータって感じだよね?『another stairs』でオメガになると、まず驚かれるのはオメガの性欲だ。こんなに濡れるの初めてとか、こんなに欲しくなるの初めてとか言ってる時点で、本来はオメガじゃないんだなと思う。
発情期がきてないオレでも尻は濡れる。
やりたいって欲求がきて困る。
アルファが近寄ったら欲しくなる。
これで発情期じゃないんだから、オメガの性的欲求はヤバい。
それをゲームの中で体感して、驚いているお前らは偽物なんだなって思う。それで五割の半分だからなって、ツッコみたい。
今から何するかなぁと暇を持て余し、店の鍵を閉めてとりあえず出るかとドアに近付いて、そのドアが突然開いて驚いた。
裏路地の月明かりを浴びて、立っていたのは青海光風のサブ垢だった。
「やぁ。」
オレを見たまま後ろ手に閉めて鍵を掛けやがった。
「なに?」
オレが不機嫌そうに聞くと、面白そうにコイツは笑う。何が面白いんだ。
「ね、アゲハはさぁ、オメガなんでしょ?」
ミツカゼの問い掛けに、オレはなるべく表情を変えないようにして睨みつけた。
下手に返事をしても良いように取られかねないと思ったからだ。
「普通は一日三時間しかログイン出来ないのに、アゲハは五時間入ってるよね?オメガでしょ?」
「………………、途中で風呂とかでログアウトしてんだよ。」
「んふふ~、今日は仕込みするからずっとログインしてる筈って聞いてるよ?さっき識月がログアウトしてきたから聞いたもん。」
「今からもう出るんだよ。」
「ホントに?」
執念い。
「お前も店から出てログアウトしろよ。此処で出られるのは迷惑だ。」
次にログインした時、ここに入って来ることになる。
「ええ~そんな邪険にしないでよ。俺さぁ、アゲハと仲良くなりたいんだぁ。なんでアゲハはアルファにしたの?」
はぁーーーー。大きく溜息を吐いた。
面倒臭い。
「余計なお世話だ。また通報されたいのか?」
ミツカゼがニンマリと笑う。
「やろうよ。」
「は?」
「セックス。」
「はぁ!?」
「俺もさぁ、リアルでは男も女もオメガもベータもアルファもみぃんな試したわけ。でもどれもいまいちでさ。ゲームの世界ではまだ男アルファ試してないんだ。」
「他、当たれ。」
こんな奴に関わりたくない!
「良いじゃん、リアルはオメガなんでしょ?君。」
ローションも用意してるよ~とスクリーンを開いてイベントリを見せてくる。
ローション以外も入ってそうで、コイツはやばいとログアウトする為に俺もスクリーンを開いた。
「あ、逃げたら、この前イベント報酬受け取った騎士は実はオメガなんだよ~って広めちゃうよ?」
なんて奴だ。
脅してきた。しかもセックスする為に。
「……………はぁ、本垢あるからサブ消しても大丈夫って知ってるよな?」
「知ってるけどぉ~。でもアゲハもセックスなんのかんの言いながら好きでしょ?やってみたいと思わない?逆になんでそんなに俺達避けるの?もしかして………、知り合い?」
意外と勘が良いなと思いながら、表情を変えずにアゲハは考えた。
これ以上邪険にするのも疑われるか?
オレは別に本垢バレても痛くも痒くもないが、仁彩は従兄弟の存在があるので嫌だろう。オレがバレると必然的に一緒にいるジンの本垢もバレる可能性が高い。
現実の身体なら転校してでも拒否するが、『another stairs』の身体なら感触は半分だ。
諦めてやる事にした。
「はぁ~~~、仕方ないな………。一回だけな。」
二階のオレの部屋に案内すると、物珍しそうに部屋を見ていた。
どうやら短時間しかログイン出来ないのに、ちゃんとベットまである部屋を持っているのが不思議だったらしい。
「ログアウト用の部屋だよ。」
オメガは精神的にもまいりやすい。
医師の診断があればここに逃げ込めるので、その為の部屋だった。
仁彩の伯父さんがそう言って、個室を用意してくれたのだ。
今はログアウトする時にしか使っていないが、態々そこまで説明する必要もない。
「ふう~~~ん。成る程ねぇ。じゃ、ちょうど良いからベット使おうか。」
ウキウキという表現がピッタリの様子でミツカゼはベットに向かった。
オレもついて行って、ベットに腰掛けたミツカゼの隣に座る。
「で?どっちがどっちするの?」
オレが聞くと、ミツカゼはうーんと考える素振りを見せる。
「俺は下は経験無しなんだよね~。でも男アルファ同士だと、アルファ特有の決め方があるんだよ。」
そんなもん聞いた事ないが、知ってるフリをするべきか、知らないと言うべきか……。
男女アルファ同士なら間違いなく産む側の女性が下だろうが、コイツは男同士のアルファ間を言っている。
「男同士なんて考えた事ないから知らねーよ。」
上手く誤魔化せたと思う。
そう?とミツカゼは笑った。
そして笑顔のまま突然威圧を放つ。こうやるの、と言って放たれる威圧に頭がグワリと揺さぶられた。
「………!?」
ググっと呻くオレに、ミツカゼは面白そうにまた笑っている。
「あはは~、やっぱ君オメガでしょ?サブ垢でも威圧出せるのかな?いや、出せるかぁ!俺出してるしね?マーキング出来るのかなぁ!」
唐突にフッと威圧が解かれた。
初めてここまで強いのを喰らったが、なかなか苦しい。
確かこのアルファの威圧も半減すると言うから、現実ではもっと苦しくなるのだろう。意識を失うかもしれない。
「…………ぜぃ、…はぁ、うるせー…。」
言葉を出すのも苦しい。
「ま、こうやってお互い威圧してぇ、負けた方が下!俺はアルファとしては結構強いんだよ?だから下になった事ないの。アゲハは今負けたから下ね?」
当たり前のように押し倒してきた。
ゲンナリする。
お互い邪魔な装備を解くと、初期服の村人の服に変わった。
ミツカゼは何故か左目の眼帯だけ着けている。
ご機嫌で服を脱がせにかかるミツカゼが、顔を近付けてきてキスまでしてきた。
「………ん、む……………ちゅ、プハッ!…え?キスすんの?」
しないと思っていた。下をほぐして挿れるだけかと思っていたのに、意外と優しくキスしてくるので驚いて聞いてしまった。
「ん?いやだった?普段はあんまりしないんだけど……、アゲハにはしたいなぁと思ったんだけど。」
嫌と言うわけではないので、別に良いけどと返事する。
人を脅してまでセックスしようとするのに、キスして優しくするとか意味わからん。
キスから始まり胸を弄り出す。
服の下から手を入れ込み、サワサワと触られ乳首をキュッと摘まれると、他人に触られているという感覚からかビクッと震えた。
ミツカゼの唇が耳を舐め首を舐めて、首筋に吸い付いてくる。
「……あっ、…はぁ。」
「あれ、喘ぎ声かわいいねぇ~。」
思わず小さく喘ぐと、嬉しそうに覗き込んできた。
ミツカゼの手がズボン越しにペニスを弄ると、緩く芯を持ち始めたものが、硬く張り詰めてくる。
恥ずかしくて逃げ腰になると、ぎゅっと握りしめられた。人質だ。
「逃げたら、ダメだよ。」
命令するかのように瞳を覗き込んだまま、ミツカゼは強く言い放つ。
ああ、こう言うところがアルファかと思った。
普段は緩い話し方しかしないで、相手がどんな奴であろうと揶揄われても怒りもしないくせに。
スリスリと布越しに擦られる感覚に、アゲハはブルリと震えた。
気持ちが良い……。
「アゲハは感度が良いね。本当に半分なのかなって思っちゃう。」
まぁ、俺も完勃ちですけどぉ~と言いながら、脱いだズボンから現れたのは立派ペニスだった。
アルファになっている自分のより大きい。
オメガの身体ならともかく、このアルファのお尻に入るのか?
不安になってきた。
「ほ、本当にそれ、入る?現実でも入れたのか?アルファの男には無理じゃね?」
自分でもやや青褪めたのが分かった。
だってオレの息子はしにゃげたし。
服を脱がされ全裸にされて、しにゃげたオレの息子を見て、ミツカゼは設定で大きくしたのかと食いついてきた。
してねーし。
「最初からこのサイズだよ!」
「へえぇぇ~。……で?元の性別は?」
言うかっ!
隙あらばきいてくる。
ミツカゼの大きな手で握り込まれると温かい。親指でクリクリと撫でて、鈴口をグリグリと刺激される。
ミツカゼの顔が降りてきて、ペニスの先を舌でツツツと舐められると、徐々に勃ち上がってきた。
ミツカゼの口が開いたので、まさかと思って腰を引こうとしたら、腕でがしりと拘束されて、一気にパクりと咥えられてしまった。
「……っは!…………ああ!んぅ!」
「んむ~~~おおきぃへぇ~~~。」
「……あぁっっ!く、咥え、た………まま、言う、なぁ………ああんっ……っ。」
モゴモゴして歯が当たって、じゅうと緩急つけて吸ってくるので、腰がビクビクと震えた。
も、も、ダメっ!
目が白黒して、ミツカゼの頭を離そうと手を伸ばすが、力が上手く入らない。
舌が舐め上げるようにグシグシと擦り上げてきて、口内で締め付けてくるもんだからドブっと吐き出してしまった。
「ーーーーーーーーっっ!」
とぷっとぷっと吐き出して、詰めていた息をはぁ~~~と長く吐き出す。
ゆるゆると扱かれて最後の最後まで出させられる。
自分でも超早かったとややショックを受けた。
「あはは、気持ち良かった?現実でやるともっと気持ち良いよぉ~。ホントはアルファのお尻は何回かに分けて解すけど、アゲハなら多少痛くても入れちゃうかもね。」
は、はぁ……!?
何言ってるんだコイツ!
ミツカゼはオレのお尻の下に身体を入れ込んで、イベントリからローションを取り出した。
ドロリとした感触が股下を流れる。
ゴムを取り出して指に嵌めると、お尻の穴を揉み出した。
「は、や、やっぱ無し………!」
「無しは、無し!」
ツプンと指が入る感触がする。
ウネウネと動き、抜き差ししながら後孔を広げられている。
「…………あぁ、あ、あ、なにっ!」
「はぁ、その反応、本体も経験無し?ふふ、ふ、良いねぇ~。………はぁ、はぁ、早く入れたいなぁ。」
ミツカゼの目がギラギラと欲情していて怖い。
延々とも思える行為が続く。
「今、無理矢理三本入れたけど、意外と余裕。やっぱオメガだよね?誰かなぁ~見つけちゃおうかなぁ~。」
何やらミツカゼが喋ってるけど、よく分からない感覚にオレはそれどころじゃ無い。
下から押し上げられ広げた瞬間に空気が入り込む感覚に、はぁっと熱い息が出る。
苦しいのか気持ちいいのか分からない。
「え~~?いい顔だなぁ。も、いいかな?入れちゃおうかなぁ!」
いや、流石にそれを入れるのは待って欲しい。
「ま、待って………っ!次、にして!」
余裕がないので待って欲しい。
本当にこの感覚は半分になってるんだろうか?
オメガの発情期がきたら、これ以上になるの?
「ごめんね?俺が待てないっ!」
クプッと熱いものが入り込んだ。
「………………っっあ゛!?」
ヌプヌプと出し入れして徐々に押し込んでくる。内臓が押しやられ、広げられていく感覚に、息が止まる。
「……あぁ、ははっ!すげぇ~!切れずに入ってく!」
ミツカゼが楽しそうに動いているが、オレはもう、なんとも言えないこの感覚に翻弄されていた。
腰がゾクゾクと波打つ感覚。
思わず力が入って上がった腰を、ミツカゼががっしりと支えている。
弱々しそうに見えるのに、やっぱりコイツアルファなんだなと、別の次元で見ているかのように考えていた。
「~~~あ~~~っ、やぁっ!あ、あ、んっんんっ!」
アルファの身体なのに高い喘ぎ声が出る。
再度勃ち上がったペニスからピュピュッと出る白濁が、自分の腹と胸に飛び散った。
「あ、あは、エロい。ホントにゲームの中なのか分かんなくなるね。鍛えた腹筋も胸筋も、アルファのものなのに、君は………。」
ドチュンと力強く奥深くを破り開かれ突かれる。
「……オメガだ。」
ぐぷぐぷと奥が犯されていく。
熱い、熱い!
「あ、あ、あ、ぁん、ふぅう~~~~~。」
涙が後から後から流れてくる。
ボヤけた視界でミツカゼが苦しそうに汗を流しながら動いていた。
「惜しいな………。もっと時間が欲しい!」
時間の感覚はもう無い。
早く終われ、と。
1日の制限時間が早く来いと願う。
「んぃ、やぁああぁぁぁ~~~~!!!」
トプトプと熱いものが身体の中に入ってくる。
熱い、気持ちいい、ああ、ダメ、だ。
駄目。
はっはっと荒く息をついてミツカゼを呆然と見上げだ。
「アゲハ、またね。」
「…………………またなんかねぇ………。」
オレは制限時間終了と共に強制ログアウトした。
応援ありがとうございます!
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