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2 苦しい記憶

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 牢って暗いんだな……。
 初牢屋だよ。
 湿ってるし暗いしお腹空いてもご飯が出ない。
 窓は無いし、灯りは鉄格子の向こう側にある蝋燭の火だけ。
 地面は濡れた様にジトジトしててあちこちに土臭い苔が生えている。
 狭い部屋にはボロボロの木でできたベットが一つ。
 薄いシーツみたいなのが一枚あるだけだし、そのシーツも蝋燭の炎じゃ分かりにくいが黄ばんでそうだし変な匂いもする。

 咲夜いじめてたって聞いただけでこの対応。
 この世界では咲夜は神なのかもしれない。
 今にも壊れそうな木のベットに転がり、時間の感覚もわからずボンヤリと考えた。
 考えるくらいしか出来ない。

 アイツら大丈夫だったかな?
 俺と違ってなんか魔法?とか剣とか出来そうだったから大丈夫と思うが、あの後が心配だった。
 とりあえず俺が一人でやった事にすればいいだろうと思いはしたが、咲夜が何を話しているのかわからない。
 
 ここに来て何時間経ったのか………。

 ギイィィ……。

 静かな空間に重い扉が開く音と、階段を降りる足音が響いてきた。

 多分この広い牢のある地下には俺しかいない。ずっと一人にされていた。

「やあ、起きてたのかい?」

 来たのはキラキラな王子様だった。
 足音から他にも何人かいるようだ。
 俺は身体を起こして睨みつけた。
 こんな世界に勝手に呼んでおいて、牢に押し込められたのだ。

「咲夜から色々と向こうの世界の話を聞いたよ。随分自分勝手な事をやってた様だね?」

「清彦達はどうした?」

 咲夜の事なんかどうでも良かった。
 さっきの様子じゃアイツが不当に扱われる事はないって判断出来る。
 問題は他の三人だ。

「………………彼等は一人ずつ保護者を付けて教育する事になったよ。私は咲夜にやった事について尋ねたのだが?」

「知らねーよ。アイツがそう言うならそー言う事じゃねーの?」

 やった側とやられた側の意見が合うことは無い。やった側がいじめと思わず親切心でやったとしても、いじめられた側がいじめだと言えばいじめになるのだ。
 咲夜が俺がやったと言えば、この世界の奴らは俺がやったとしか思わない。
 咲夜がコイツらに慰められている間、俺は牢屋で腹を空かせてたのだ。こんな暗く湿った変な匂いのする場所で。
 そー言う事だろう?

 王太子アフィーナギは肩をすくめて牢に手を掛けた。
そう思ったのに、そう見えたのに、いつの間にかアフィーナギが目の前に立っていた。

「え?手品?」

「転移だよ。私の能力の一つだ。なかなか便利なんだ。君に何かしら能力があれば使い道もあったのに、何も無いんじゃ使い道もない。」

「あー魔法?使い道って………まさかアイツらを道具と思ってんじゃないだろうな?」

 言い方が不穏すぎる。

「大事に教育して私たちと一緒に魔王討伐に出向いてもらうよ。彼等は大切な仲間だ。戦う能力がある。君と違ってね。」

 アフィーナギは俺のおでこに手を伸ばしてきた。
 アフィーナギの大きな手に視界が遮られ、俺は後ろにのけぞった。

「なに…?……………っ!!」

 文句を言おうとしたら、頭をがしりと掴まれ、勢いよく後ろに叩きつけられた。後頭部に鈍痛が走り、ふらりと目が回る。

「人を道具と見てるのは君じゃないのかい?咲夜は泣いていたよ。人を人とも思わない奴だって。」

 アフィーナギの声はずっと穏やかで、話し方は一つも乱れない。
 霞む目でなんとかアフィーナギを見たが、顔は相変わらず綺麗で微笑んだままだ。

「咲夜に自慰をさせて大衆に見せようとしたらしいね?向こうのカガクと言うものは解りずらいが、そんな事をすれば咲夜の未来が断たれてしまうそうじゃないか。」

 やたらと綺麗な青い目が近付いてくる。俺の目を覗き込んで、目を細めた。

「咲夜の綺麗な黒い瞳から涙がポロポロと流れて、とても綺麗だったよ。」

「俺の目が汚いとでも言うのかよっ!」

 アフィーナギはニコリと微笑みながら言い放った。

「まぁ、意志の強そうな目ではあるね?」

 ようやく見え出した目でアフィーナギを睨み付けた。

「ほら、君も同じ目にあおうよ。咲夜は自分の気持ちを知って欲しいと言ってたよ。」

 どこから出したのか小さい剣が握られており、俺のズボンのベルトを簡単に切ってしまった。もうコレ要らないだろうからね、とか言いながら。

「ひっ」

 俺の小さな悲鳴に気を良くしたのか、ズボンとパンツを一気に脱がせられてしまった。
 牢屋の空気は冷えているので、何も履いてない俺の下半身は一気に冷えてくる。

「いろんな人間に見せないとね。君のここを。」

 笑いながらアフィーナギは言った。
 召喚された教会でも今でもその表情は変わらない。
 その変わらない表情が怖い。

 俺の寒さと恐怖で縮こまった陰茎をアフィーナギは躊躇う事なく握ってきた。

 俺は咲夜の陰茎をネットに上げてない。自分でする気もなかったが、アイツらにもさせるつもりはなかった。ただ怯えて逃げも否定もせずやられているアイツに呆れて見てた。逃げたり反発して帰ればいいのだ。追いかけてまでやった事はない。
 
 俺はアフィーナギを睨みつけて足で蹴ろうとしたが、あっさりと受け止められてしまった。

「変態かよっ!俺はそこまでしてない!」

「でもしようとしたんだよね?じゃあ同罪じゃない?」

 アフィーナギは俺のズボンをロープ代わりにして両手を縛り上げた。

「俺はアイツを捕まえたり縛ったりしてねーよ!!」

「ふーん、逃げられない様にされたって言ってたけどね。」

 笑いながら俺の陰茎をスリスリと擦り上げてきた。アフィーナギは何かを塗りつけてきて、コスコスと擦り出すと粘り気があるのか滑りが良くなってくる。

「うっ………っ!」

「うーん、いまいちか。ま、こんなとこじゃ仕方ないか。」

 アフィーナギが手を離すと牢の扉が開いた。一緒に来た騎士らしき男が何人かいるようだった。
 アフィーナギは一人の騎士からビンを受け取り中身をトポトポと俺の下腹部に垂らした。

 えっ、まさか…!

 ビンに入った怪しげな液体とかお約束な気がしてならない!
 液体は俺の腹から陰茎まで垂らされ、ダラダラとお尻の方に流れていった。
 アフィーナギはずっと笑っている。
 笑って俺の陰茎をまた扱き出した。

「ああ、少し芯が出てきたかな?」

 アフィーナギの笑みが深くなった。
 逃げなければと思うのに、恐怖で身体が動かない。


『…………はぁ…雅、かわいいね。』

 アイツも笑いながら自分を見下ろしていた。
 何が楽しいんだ。
 震える人間を見て、何を思うんだよっ……。
 忘れられない記憶がフラッシュバックする。


 足を持ち上げられ、陰嚢を揉み込まれる。尻の穴につぷりと何かが入り込む感触に、腹の底から吐き気が込み上げてきた。
 その感触を知っているが為に、その先を想像して気持ちが悪い。

「…………っ…ぐぅ……、や……めろっ!」

 なんとか吐き気を堪えて訴えても、アフィーナギの止まらない。
 
「うーん、もしかして初めてじゃない?慣れてる気がする。」

 アフィーナギの指摘にビクリト方が震える。
 分かる奴には分かるんだろうか?
 最も知られたくない過去。記憶。

「その様子だと当たってるかな?自分がやった事あるからって人に強要するのはいけないよ?」

 やりたくてやったんじゃない!
 アイツにやれなんて言ってない!

「…や………ゃ、めろぉ……っ」

 ジュポジュポと嫌な水音に恐怖が増していく。
 それなのに、知っている快感を覚えている自分にも恐怖する。
 きたる衝撃と快感に、恐怖で震えながら身構えていると、あっさりと不快感は消え、覆い被さっていた身体が離れていった。
 キラキラと蝋燭の光で輝く金髪が視界から消えていく。

「私がやると喜ばせてしまいそうだ。お前達がやれ。」

 お前達、と言う言葉にギクリとする。
 慌てて見回せば騎士らしき男達が四人いた。

「殺すな。あくまでも思い知らせる、という程度だ。」

「了解しました。咲夜様にやった事を充分に分らせてやりましょう。」

 返事をした男は和かに笑っているが、チラリ寄越した視線が冷たかった。
 皆、身体は大きく逞しい。
 自分が知っているアイツは、今の俺よりは大きいが、コイツらほどじゃなかった。

 腕を足を四人がかりで押さえ込まれ、あっという間に身体を開かれてしまう。
 
「やめろっ………………!」

 下半身を露わにした男の腰がすぐ下にきている事に気付いて、必死に逃げようとするが全く動かない。

「ーーーーーーーーーっ!!」

 悲鳴が悲鳴となって出たのかさえ分からない。
 痛みに、あぁ裂けたな、とどこか冷静に悟った。




 アフィーナギはそこまで確認して、早々に足を階上に向けた。
 見て楽しむ趣味はない。
 ただ咲夜が受けた苦しみを雅が味わえば、それで良かった。

「ーーーーーーーた、たすーー」

 悲鳴の合間の懇願も聞こえたが、気にならなかった。
 
 それが後々後悔する羽目になるとは知らず、アフィーナギはサクヤへ報告するべく機嫌良く扉を閉めた。





『かわいい、雅』
『雅、ずっと一緒だよ。』
『父さんも母さんも要らないよね。』
『ほら、首にリードをつけようか。散歩は家の中だけで我慢させて可哀想だけど………。』
『可哀想な雅は可愛いね。』
 徐々に狂っていく顔が蘇る。
 笑いながら歪む笑顔に、絶望しかなかった。
 ようやく忘れれそうだったのに……。
 激痛に気を失う事もできず、雅は地獄に落ちていった。



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