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29 蒼矢、伴侶になる
しおりを挟む青泰家から帰って、銀玲は三日程抱き潰された。向こうの世界の話から、蒼矢の話し、大学、翼、子供の頃のエピソードまで延々と語らされ、それでも最中はやめてくれず、息も絶え絶えに漸く終わった。
一日寝込み、金玲に蒼矢がどうなったか聞いたら、青の泰子の部屋から出て来てないという。
精霊達が騒いで集まっているのでそういう事では?と呑気に言われたのが五日目。
いや、誰か止めようよと主張しても金玲は関わりたく無いと言う。
青の泰子と金玲は真面目同士だから合うのかと思ったら、全然ソリが合わないらしい。
昼寝をする赤子の銀の泰子の横で、トグロを巻いて昼寝していた銀の精霊王を起こし、青の泰子の所に行きたいと頼むと「ピィ」と鳴いて緑の精霊王を呼んでくれた。
そこ金の精霊王じゃ無いんだ?と思ったが、適材適所があるのかも知れない。
「面倒事を全部俺に持ってくるんじゃねぇ!」
と言いながらも素早く青の泰子の部屋の前に飛んでくれた。
突然現れた緑の精霊王と金泰家当主金玲と伴侶の銀玲に、青泰家当主の青翔さんが慌ててやって来た。
あ、当主は卵が無事孵ったら当主交代する流れらしい。当主交代してたのは最近自分も知ったばかり。
当主と言っても纏め役的なものだから、あまり凄いものでも無いらしい。
「開けていいか?」
緑の精霊王に否と言える天霊花綾の住人はいない。
「はい、どうぞ!」
青翔が言うや否や、パァンと弾ける音と共に、緑の精霊王が襖を開けた。
開けて奥の部屋へ続く襖を開けて、ムァッとする据えた臭いに皆んなで顔を顰めた。
「酷いではないか。私の結界を簡単に壊すでない。」
水の様に流れる青い髪を持つ青の精霊王が現れ文句を言った。
「お前、この前金の精霊王のやらかしで向こうの人間を簡単に連れてくるの辞めようって言ったばかりだよな?」
緑の精霊王はギロリと睨んだ。
「黒い髪は向こうにしかおらんではないか。いちおう銀玲に死んだ者なら良いと聞いたぞ?」
銀玲はブンブンと首を振った。
そー言う意味で言ったわけではない。
「責任転嫁するな!どいつもこいつも!」
突然入って来た乱入者に、青の泰子が此方を見ていた。
全裸で。
布団の上には蓑虫のように丸まった布団の塊がある。蒼矢はその中にいるのだろうか。
「青翔様………。」
あ、お母さんとか母上とかじゃなく名前呼びなんだ?この異様な部屋にどうでもいい事を考えてしまった。
「私は決めました!蒼矢を伴侶にします!」
「ええ!?」
思わず驚いて叫んでしまった。
青翔と青の精霊王は目をキラキラと見開き、青の泰子に駆け寄った。
「本当かい!?誰だい、蒼矢とは!」
「なんと!そこまで気に入ったか!」
二人は青の泰子が元に戻らなければ、無理矢理にでも白の巫女を当てがって次の泰子を産ませなければと考えていたので、本人に意欲が満ちたのを喜んだ。
青翔に至っては蒼矢にまだ会ってなかったらしい。
ずっとこの部屋にいたのかと、顔が引き攣った。
それくらい部屋が汚れていた。
青の泰子も全裸で分かりにくいが、なんか汚いような…………。
布団もべちゃべちゃって感じが………何日このままでいたのだろうか?まさかあの時から?
同じ思考に行き着いたのか、金玲が隣の部屋で使用人を呼んで部屋の片付けと食事の用意、風呂の用意、着替えとあれやこれやと采配し出した。
青翔と青の精霊王は当てにならなそうなので、勝手に動く事にしたらしい。
元恋人の蒼矢の事が許せないようだったが、この惨状はもっと許せないようだ。
「その蒼矢とやらはあの中か?」
緑の精霊王に、多分と頷き布団の塊に近寄った。
あまり触りたくなかったが、トントンと軽く叩いて声をかける。
「蒼矢、ごめん遅くなって、大丈夫か?」
布団がゴソゴソと動き蒼矢の目が出てきた。
蒼矢の眼の色が青く灯っている。
青の精霊王の力で作られた身体だからか、元々青寄りなのか分からないが、青泰家にとっては嬉しい誤算だろう。
「だから青の泰子は嫌なんだ。」
泣き腫らして赤く腫れた顔に、金玲がもう一度隣の部屋に行き医師の手配をし出した。
「…………弓弦、帰りたい……。」
……………顔しか見れないが、酷い有様なのは分かった。
あんなにカッコよくてハンサムだった蒼矢が蓑虫になってしまった。
「無理だな。向こうに戻れば多分死んでるぞ。」
緑の精霊王の無慈悲な言葉に蒼矢の目から涙が溢れてくる。
それ以上泣くと、もう目が開かないんじゃないだろうか。
「えと、青の泰子が蒼矢を伴侶にするって言ってるから、私と同じだよ?半年卵の為に頑張れば、多分大丈夫だから!それ終われば、多分落ち着くから!」
枯れた声で蒼矢がぶつぶつと言った言葉を反芻している。
伴侶、卵、半年?
「ええーと、蒼矢、頑張れ!!」
ガッツを作って可愛く応援してくる弓弦を見ながら、蒼矢は悲しくなってきた。
何でこんな可愛くて素直な弓弦を振ったんだろうかと。翼に関わらなければこんな事にはなっていなかったんじゃ無いかと。
悲しくてポロポロと涙を流した。
約半年後、青泰家の卵が孵ったと聞いて、銀玲は用意していた祝辞とお祝いの品を持って青泰家へ向かった。
金玲は渋ったが、お願いお願いとおねだり気味にすると割と聞いてくれると分かり、乱用しない様に使っている。
通されたのはいつかのあの泰子の部屋では無く、明るい清潔な部屋だった。
「蒼矢~、久しぶり~。」
大学では別れて疎遠になっていたが、蒼矢は小さい頃から仲のいい幼馴染だ。
過去は水に流して仲良くしたい。
部屋には蒼矢と抱っこした青い髪の赤ちゃんがいた。
青の泰子は名前が青蒼(せいそう)になった。蒼を取るか矢を取るかで揉めたらしいが、蒼矢が青蒼がいいと言って落ち着いたらしい。どっちも意味はあおだけど、矢だと何か嫌だとか。
「ああ、久しぶり。漸く会えたな。」
元気そうでよかった。
少し痩せた気がするけど、なんか前より色っぽくなってないだろうか……。
抱っこした赤ちゃんは青い髪の女の子だった。
青蒼の様な濃紺の髪でも水色の瞳でもなく、鮮やかな青の髪と眼を持っている。
青泰家は青の精霊王が女性だからか女性体が産まれやすいそうだ。
「うわ、美人になりそう!」
「ありがとう。皆んなこんな感じの子供が産まれるんだってな。金と銀の泰子も精霊王に似てるのか?」
「うん、そう。私の顔にはどっちも似てないから良かったよ。」
そんな事ないだろう、と蒼矢は笑って否定した。
「ところで相談があるんだけどさ…。」
来て早々相談とは、突然連れて来られて青蒼の伴侶にされたのだ。
大変な事も多いはずだ。
「うんうん、相談ならいくらでも乗るよ!」
「うん、あのさ、初心者が取っ付きやすい楽器ってある?」
楽器?あー青蒼の歌舞音曲は楽器だったか。てことは、蒼矢に何か歌舞音曲を決めさせようとしてるのか?
「歌舞音曲なら楽器だけじゃなく歌でも踊りでも、なんなら家庭菜園みたいなものでもいいんだよ?精霊が喜べば良いんだから。」
それとも伴侶と一緒のが良いとか?
「あ~うん、それは聞いたけど青蒼が一緒にやりましょうって乗り気で………。」
本当は卵が孵ってから一つずつ青泰家にある楽器を弾かされた。
楽器なんて子供の頃のリコーダーくらいしかやった事がないのに、出来るわけがない。
出来ない度に青蒼はお仕置きだと言って身体を責め立て出した。
ちんこの根元を縛り、キスをして乳首を吸い上げ、ちんこをこれ見よがしに見上げながら舐めまわした。
出せないのにビクビクと身体は跳ねる。
失敗する度に一つずつ快感を与えられ、赤黒くなり出した己の息子に泣いて許しを乞うたのだ。
解したお尻の穴に立ったまま入れられ紐を解かれた時、潮を吹いてイキまくった。
止まらない射精にさあ、次は笛でしょうかと言われて差し出され、悪魔かと思った。半精霊とか嘘だろう。
「楽器かぁ~うーんどれもねぇ~私が二胡をやるので教えてやれるけど、青蒼は嫌がりそうだよね。青蒼に選んでもらうのが無難だと思うけど。」
多分他の人間に勧められたと言ったら、全て却下されそうだ。
やっぱそうか……。そう言いながらガックリ肩を落とすのは何故なのか。
選択肢が楽器しかないってのがね。
蒼矢は小器用に何でもこなすので、楽器も一年くらいしたら人並みに出来るようになるかもしれない。
「子供がもう少し動き回って遊べる様になったら、他の泰家の子達も一緒に集まりたいな。」
いいね!しよう!しよう!
と約束し合い、どうやって拘束しがちな伴侶を説得するかを話し合った。
応援ありがとうございます!
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