落ちろと願った悪役がいなくなった後の世界で

黄金 

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全てを捧げる精霊魚

95 黒い針と糸

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「っんん…………。」

 ぬるりと熱い舌が背中を舐め、ツビィロランは小さく震え声を漏らした。
 執拗に同じところばかり舐められ、時折ガブリと噛まれる。
 またガブッと背中の真ん中辺りを噛まれ、ああっっと小さく悲鳴をあげた。
 琥珀色の瞳からジワリと涙が出て、抱き込んだ枕に縋りついた。今二人は迎えに来た飛行船の中の客室にいた。外は暗く遠くの星が微かに見える程度だ。
 ジワジワと流れてくる神聖力は少し熱くてピリピリと刺激を与えてくる。
 ツビィロランのうつ伏せになった白く細い背中には、大きなバツ印の傷がある。傷痕に舌を這わせた後、クオラジュは同じ所ばかりを舐めたり噛んだりしていた。

「…はぁ……、やはりこの針が抜けませんね…。」

 ツビィロランの上に乗ったクオラジュが舌を這わせながら呟いた。自分が噛んだ歯形を舐めながら、ツビィロランの身体を背中から抱き込んで、ツビィロランの小さな胸の先をぐりぐりと弄る。
 長い指がない胸を揉むせいか、最近は敏感になってきた気がする。最初は触られすぎて痛かったのに、乳首を引っ張られてスリスリ擦られると下半身がゾワゾワしてくるようになった。
 自分の陰茎の先っぽからタラリと落ちる先走りに、ツビィロランは興奮しすぎだと赤くなり枕に顔を埋めて隠した。
 女じゃあるまし……、そう心を落ち着けようとしても、胸の鼓動は早いままだ。
 
 クオラジュが言うには俺の背中に黒い小さな針が刺さり、その先から細い糸でどこかに繋がっているらしい。それはどこまでも続いていて、クオラジュにも先が分からないという。
 少しずつツビィロランの神聖力が抜かれている。
 妖霊の王ジィレンが刺した針と思われ、恐らく糸の先は万能薬を作る器の中に繋がっているのではと言っていた。
 この針は目に見えない。
 かと言って神聖力で出来ているわけでもないらしい。妖霊の血を凝縮して特別に作ってある、ジィレンのみが使える力で、クオラジュでも外せずにいた。
 これが見えるのはクオラジュとアオガだけらしい。
 サティーカジィには薄くしか捉えることが出来ず、他に至っては存在も確認出来ない。
 神聖力を枯渇させるほど抜き取っているわけでも、命を脅かしているわけでもない針だが、妖霊の王が意味もなく刺すわけもないので、クオラジュは何とか抜こうとしていた。

「も、あ………、むりぃ~~……っ。」

 ツビィロランは音を上げた。
 クオラジュが触るたびに身体の中を何かが這い回るのだ。それがピリピリと快感を与えてくるものだから、ガクガクと身体が震えて上手く動けずにいた。
 頭の先から足の爪の先まで、痺れのような快感がずっと襲ってくる。
 針を抜くと言いながら舐められ続け、グッタリと布団の上に倒れ込んだ。
 大体なんで背中を舐めるし胸を触るのか。

 飛行船の中はとても静かだ。だからクオラジュが舐める音がよく聞こえる。
 天空白露の飛行船は帆船型が多いのだが、動力部だけマドナス国産を導入したらしく、予想より早く迎えが到着した。マドナス国産の飛行船技術は目まぐるしく進化している。
 乗り込む時は予想通りファチ司地はいなかったが、それについては誰も何も言わなかった。
 ファチ司地については、ただ都合よく妖霊の王ジィレンに使われただけだと教えられた。
 何故妖霊側についたのかなとクオラジュに尋ねても、欲しいものを手に入れる方法がわからなかったのだろうと言っていた。

 うつ伏せに転がっていた身体をコロンと上向かせられる。疲れすぎて為されるがままだ。
 クオラジュの氷銀色の瞳がツビィロランを熱く見下ろしてくる。少しだけ開いた口が降りてきて、ツビィロランの唇を塞いだ。
 抵抗するつもりなんかないので、すんなりと入ってきた舌を迎え入れる。口の中を動き回り、舌を突き出すと絡めてきた。

「………ふぅ………ん、………んん~~~、ぁ、ふぁ。」

 気持ち良くて声が鼻から抜けていく。
 クチュクチュと音を鳴らしてお互いの口の中を貪り合う。
 ちゅパッと離れると吐息が漏れた。

「…ふぁ、あ……。」

「ふふ、マナブはいやらしい。」

 そう言うクオラジュの方が目の下を赤くして微笑む姿が妖艶だ。
 ハムっと唇を噛んできた。噛んで、舐めて、下に降りていく。
 先程まで弄っていた乳首をハムっと咥えて吸って甘噛みされると、ビリビリと電流が走った。

「んんんんんっ!」
 
 チラリと下から見上げてくる氷銀色の瞳は仄かに輝き、ツビィロランの喘ぐ姿を嬉しそうに見ていた。それでもその奥にある不安が垣間見える。

 クオラジュはマナブの魂に自分の神聖力を巻き付け浸透するよう、時間があればこうやって肌を合わせ性交に及ぶようにしている。
 性交時が一番番になりやすい。それは神聖力は感情の昂りによって交わりやすいからだ。だからクオラジュはマナブの魂に神聖力を送る時、必ず交わるつもりだ。
 より効率的に、深く、クオラジュを刻みつけなければ気が済まなかった。
 口付けを落としながら下に降りていき、ツビィロランの勃ち上がった陰茎で止まった。ピクピクと震えながら涎を垂らしている。
 ペロリと舐めるとビクッと震えた。

「ぁ……、だめ、クオラジュ…………あっ、あんっ、やっ!」

 クププと咥えて口の中で陰茎を舌で擦り上げると、ツビィロランの細い腰が浮き上がり震える。
 同時に後孔に指を当て、クルクルと回し濡れてふやけた穴にツプッと潜り込ませた。

「ひうっ…………っ!あ、そん、…な、だめ、だめっ!」

 口の中でぎゅうと硬くなりヒクリと出そうになっているのを感じて、ちゅぽっと口から抜いた。

「……はえっ、あ、あぅ……。」

 イキそうなところで寸止めされて、ツビィロランは口をパクパクさせていた。

「今日は疲れたようですから、射精したら寝てしまうでしょう?」

 ツビィロランの琥珀の目がクオラジュを非難がましく見る。いつもより長く背中を舐め回したのはクオラジュじゃないかと言いそうな目だ。
 クオラジュよりも小さな腰を抱えて自分のものにあてがった。
 まだそこまで広げていないが、最近慣らされ続けたツビィロランの後孔ならば大丈夫だろう。
 ぬぷぷぷと自分の陰茎を沈めていく。

「…………はぁ。」

 思わず笑みを浮かべて溜息がでる。
 包み込まれて暖かくて気持ちがいい。自分が入った場所はここら辺だろうかと、薄い腹に手を添える。
 クオラジュのものがここに入っていると思うと満足感が湧いてきた。
 ズルルルル~~………と陰茎を抜いて、ギリギリで止める。
 ヒクヒクと収縮する後孔に、クオラジュの目が笑に細まる。

「…あ、あっ、……………………ん、は、はぁ…クオラジュの、方が、やらし……。」

 ツビィロランの憎まれ口に、クオラジュは瞳を輝かせてバチュンと押し込んだ。

「あああああ゛ぁぁーっ!」

 奥まで思いっきり押し込まれて、ツビィロランは激しく喘いだ。ぎゅうううと腹にお尻に力が入りクオラジュを締め付ける。
 ツビィロランの陰茎からビュビューと白濁が飛び出て、一気に来た快感と開放感に力が抜ける。

「ああ、ダメですよ。まだ私が終わってません。」

 そう言ってまたズルルルル~と抜いていく。
 もう、無理だってばっ!そう言いたいのに、口からは喘ぎ声しか出てこない。クオラジュは喋らせるつもりがないのだ。

「あ、あ、あ、まっ、あ゛、あ゛ぁっ!」
 
 何度も繰り返され、何も考えきれずに意識が飛びそうになる。奥を突かれるたびに足が、腰がビクンと痙攣したように跳ね、クオラジュが繋いできた手を必死に握った。
 ゴリュッと奥を突かれて暖かい感触が広がる。
 自分の腹に広がる白い精液が最初より増えているのに気付いて、知らぬ間に出していたのだとボンヤリ眺める。
 ボーと脱力するツビィロランの頬を両手で挟んで、チュチュとクオラジュが口付けを落としてまだ芯の残ってそうな陰茎を引き抜いた。
 用意されていた布で、腹や下腹部に散った白濁を綺麗に拭き取ってくれる。
 クオラジュは几帳面な性格だなと思う。
 いつも先に寝てしまうが、起きたら身体は綺麗にしてあるし布団も変えられている。この世界には浄化という力はあるけど、その場しのぎ的な完全に綺麗にというわけでもないらしく、基本身体を洗ったり服やシーツを洗ったりは人力だ。
 クオラジュって洗濯してるのかな?と不思議になる。
 起き上がらせて水まで飲ませてくれるという至れり尽くせりだ。
 
「マナブ………。」

 クオラジュが少し言いにくそうにしている。氷銀色の瞳が窺うようにツビィロランを見つめて覗き込む。
 あ、これ、いつものパターンだ。
 今日は疲れていたけど寝落ちしなかったよなと思い至った。

「もう一回、ね?」

 ………う。

「む、無理って言ったら止まれよな?」

 どうもこう言われると俺は弱い。
 バアッとクオラジュの顔が輝く。ぐっ、眩しい。
 
 まぁ、一回で終わるとは思ってないけどな…。








 眠りに落ちたツビィロランの黒髪に、クオラジュは自分の長い指を絡ませる。
 ちょっとやり過ぎてしまったなと思いつつ、ツビィロランはクオラジュに甘いので怒られないだろうとあまり反省はしていない。
 ツビィロランはクオラジュを恐れない。
 クオラジュがやることを理解しても嫌悪しない。
 マナブがいた世界はこんなに戦ったりしないと言っていた。喧嘩くらいはあっても、命の奪い合いのようなことはしないし、法で裁かれるのだと言って、最初はこの世界が怖かったのだと言っていた。
 まさかツビィロランの身体に入ってきて、殺した時には中にいたのだとは知らず、知っていれば自分はどうしただろうかと考えてしまう。
 知っていて、中にいるマナブをまた好きになるだろうか?
 いや、なるかもしれない。
 生きることを諦めない強い眼差しが好きなのだから、きっと直ぐにツビィロランの意識と交代していれば、あの瞬間にでも殺すのを止めていた。
 まずツビィロランと違うと感じ、戸惑い、そして止めただろう。
 そして?そして、天空白露を落とすにしても、ツビィロランだけを助けるようにまた計画を練り直す。
 絶対にそうする。
 そして二人で生きていく場所を探すのだ。安全で安住な場所を。
 本当なら直ぐ様そうしたいのに。
 次から次へとツビィロランの身体を狙う輩が現れる。鬱陶しいくらいに。
 横向いてスヤスヤと眠るツビィロランを抱き締めると、眉を顰めてうむぅと唸った。
 背中に刺さった針が抜けない。
 痛くはないと言う。苦しくもないと言う。
 酷く害を与えているわけではないが………。

 この先に繋がる暗闇が恐ろしくて仕方ない…。
 
 













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