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全てを捧げる精霊魚
82 今夜のデートは
しおりを挟むネリティフ国は竜の住まう山の東側にある国だ。山を挟んで西側にヤイネの故郷があるのだが、ヤイネ曰く大きく広い山を挟んで反対側にある国のことはよく分からないのだという。
元々ネリティフ国はあまり他国と親交を深めない閉鎖的な国で、大陸外周を回っていた天空白露の通り道からも外れていた為、天空白露の神聖力の恩恵にあやからずに独自に発展した国だった。
だからか天空白露もあまり干渉したことがない。
かろうじてファチ司地がいる建物だけが許可されたらしい。
そしてアオガとトステニロスはマドナス国産小型飛行船で直ぐに向かったのだが、到着後連絡がとだえた。
「探しに行こう。」
俺は提案した。
「ダメです。妖霊がどのような存在なのか分かりません。それに色々と疑問点もあります。」
「疑問点?」
クオラジュはサティーカジィから説明された後、話の内容を整理した。
まず真っ先に思ったのはホミィセナの髪色が黒かったことだ。サティーカジィは黒は妖霊の色だといった。サティーカジィはそれを知ってはいても元々予言通り夜色の髪の神子が現れるのだと思っていたので、妖霊とは関係なく先祖返りのように生まれてくるのだろうと思っていた。ツビィロランとホミィセナ、どちらが本当の予言の神子までかは分からなかったらしい。予言は意図して見れるものではないのが難点なのだという。
ホミィセナがロイソデ国の王族だったのは確かだ。クオラジュはロイソデ国の王族を唆し透金英の花を食べさせ天上人になりうる存在を作らせた。
ホミィセナは元々銀髪だった。たまたま黒になったのではなく、故意に黒にさせられたのだとしたら?
スペリトトが万能薬を作る為に用意した材料の中に、妖霊の生血が入っていた。それはシュネイシロが妖霊だったからだとすると、夜色の神子を作る為には妖霊の生血は必須だったことになる。
ホミィセナが黒髪になったのは誰かがホミィセナに妖霊の生血を与えたから?クオラジュが透金英の花を与えるのと同時に、気付かれないようにやったのだとしたら、身近な人間にしか出来ない。
「ホミィセナに妖霊の生血を与えたのが誰かということです。ニセルハティかと思いましたが、ニセルハティがホミィセナにあったのは天空白露に来て開羽してからです。その前に誰が近くにいたのでしょう。」
「その前…。」
てことはロイソデ国にいる間と、天空白露に来てから暫くの間?ツビィロランの記憶を探ってもホミィセナとはあまり会わないようにしていたので、ホミィセナが誰といたのか知らない。
俺が考えても分かるとも思えないけど、クオラジュばかりに考えさせるのも申し訳ないので、うーんと頭を悩ませていた。
ゴソゴソと寝巻きが捲られる。
「…………何やってんだ?」
夜、寝ようとしていたらクオラジュがやってきた。
ラワイリャンは一人になったヤイネが寂しそうだからと、ヤイネの部屋に泊まりに行っている。
ラワイリャンの部屋も用意されているのだが、よく俺の部屋にいることが多い。クオラジュが遊びに来ると自分の部屋か誰かの部屋に逃げ込んでいるのだが、今日は先にヤイネの部屋に泊まりに行ってしまっていた。
俺の上の寝巻きを捲ったのはクオラジュだ。
氷銀色の瞳が上目遣いに見てくる。寝る前だったので明かりは小さなランプ一つだけで、布団に入るところだったと言うと、一緒に寝ましょうと潜り込んできた。
え?と思ったがトステニロス達の行方について話しだしたので、てっきりこのまま話しながら寝るかと思ったのに…。
「透金英の花を食べる前のホミィセナは王族ではありましたがほぼ継承権の無いような王族でした。王族の血筋に希少な女性ということで大事にはされていましたが、ただそれだけだったのです。しかもロイソデ国は政治腐敗が激しく、賄賂さえ渡せばホミィセナに近づくことなど簡単だったでしょう。そう考えると怪しい者を特定するのは難しい。寧ろファチ司地かニセルハティしか状況的にいない、と考えたのです。」
「それは、まぁそうだな?」
それにもうホミィセナはいないしな。お前が埋めちゃったし。結局ホミィセナって利用されまくりの人生だったんだな。
「それよりさ、やっぱ探しに行こう。」
俺はいなくなった二人が心配だ。
「流石に私も心配です。」
心配しているのは分かるけど、俺の着ている服を捲るのには繋がらない。
いや、え?今までも際どいことはされてたけど………。え?まさかな?
「少しだけ…。」
ね?と眉を垂らしてお願いされ、何を少しだけなんだろうと思いつつ仕方なく頷いた。
なんか最近クオラジュにお願い攻撃をされている気がしてならない。
ぺろっとお腹が丸出しになり、ヒヤッとした空気にブルっと震えると、寒いですねと言って掛け布団を引き上げた。クオラジュごと布団の中に潜り込んでしまう。
「す、少しだけ……あっ、ちょっ、少しだけって………!」
腹を撫でていると思ったので傷口を見ているのかと思ったら、何か温かいものが傷ができて少しへこんだ皮膚を舐めた。
舌で舐められている!
柔らかい舌がグッグッと傷口を押したり、へこんだ部分をなぞったりしている。普通の皮膚の部分より敏感になっている部分なのに、そんなことされたらくすぐったいと言うかゾクゾクするというか、なんとも言えない感覚になる。
パッと布団を開けたらクオラジュの笑った目と視線があった。氷銀色の瞳が仄かに輝いて、まるで野生動物の様に感じでゾクリとする。
「少し我慢して下さい。」
なんで?という暇もなく今度はクルリとうつ伏せにされてしまった。腹同様服は捲られまた舐められる。
なんだろうか。クオラジュの舌が動くとゾゾゾッと何かが這う感覚がする。
「…………あっ、んっなに!?なんかしてる!?」
下から上にズウ~と何かが這い上がってきて、思わず丸まり我慢してしまった。
上まで来た舌がバッテンになった傷の上で止まり、チュウと吸われて離れた。
「…………あっ……!」
思わず出てしまう声に慌てて口を塞ぐ。
「気持ちいいですか?今、私の神聖力を流してみたのですが。」
「……え?なんでぇ?」
尋ねて舌が回らず、舌足らずになってしまった。なんでこんなに力が入らないのか。それに腰がゾクゾクして抜けた感じがする。
「貴方の世界の話を聞いていて思ったのです。貴方の魂には神聖力がないのです。だからこの世界にすんなりと来れました。それは戻る時も同じことが言えるのですよね?それに神聖力のない世界だからこそ、私達が知る番というものが存在しない。動物にはそういう感覚があるものはいても、精神がつながるということはないのですよね?貴方が、マナブがいた世界はそういう世界だったのですよね?」
俺は首だけ背後を、というか俺の腰あたりに潜ったままのクオラジュを振り返った。お尻から下はクオラジュが乗っかってしまっているので動けない。
「そう、だけど?」
俺は何が言いたいのか分からず首を傾げた。その仕草にクオラジュが笑みをつくる。
そして俺の背中にチュチュとキスをしながら話し出した。
「神聖力のない世界だから番がない。だから今の貴方とは番うことが出来ない。」
「え!?」
思わず驚いて声が出て出てしまったが、それは俺が無意識にクオラジュと番う気でいだのだということの証明になってしまった。いつの間にか自分でもそこまで考えていたのだと気付き顔に熱が集まる。
きっと顔が赤くなったに違いないと思い、小さなランプの明かりだけだから気付かれないはずなのに顔を隠してしまった。
その様子にクオラジュが背中で嬉し気に笑っている。
「笑うな………。」
文句を言うと背中に額を擦り付けてきた。今度はスリスリしながらまた背中の傷口に何度もキスをしている。
「嬉しいのです。」
本当に嬉しそうな声で言っているのが分かり、俺はされるがままになってしまった。こんなに嬉しそうにしているのに、恥ずかしいからと邪険には出来ない。
「それで、俺はどうしたらいい?」
ぶっきらぼうに尋ねるとクオラジュは何も、と答えた。
「私はマナブの為に全てを私の手でやりたいのです。しかし今は妖霊の動向が分からない。トステニロスとアオガの行方も………。」
ですが、必ず捕まえます。
ボソリと低く小さくクオラジュは呟いた。
捕まえる?トステニロスとアオガを見つけ出し助けるじゃなくて?この状況だとあの妖霊に捕まっている可能性だってある。
俺の背中の上でクオラジュがハァと息を吐いた。その息が熱い。
「こうやって私の神聖力を貴方の中に流します。この前貴方の魂に私の神聖力を巻きつけたのです。だからこうやって徐々にマナブの魂に私の神聖力を少しずつ入れます。馴染んで定着させるのです。そうして番になりましょう?」
ギュウゥと背後から抱き締めてきた。長い腕を回しこれでもかと包み込んでくる。
「う、うん。わかった。」
そうか、今の俺では番になれないのか…。それに少しだけショックを受けている自分がいたことに驚いた。
俺は知らず知らずのうちにクオラジュの存在をかなり受け入れてしまっている。
クオラジュは二人きりになると俺のことを本名の学で呼ぶようになった。津々木というのは苗字だと教えたら、この世界には苗字というものがなかったので不思議な顔をされてしまい、学が名前だから、そっちで呼ぶように言った。
二人きりの時に「マナブ」と呼ぶクオラジュは本当に嬉しそうにするので、教えてあげて良かったなと思っている。
暫くそうやってクオラジュは俺を抱き締めていた。そしてまた本題を話し出す。
「今サティーカジィと共にトステニロス達を追跡しています。このまま見つからないならイツズにも手伝ってもらうしかありません。」
「イツズに?」
「重翼ですので。側にいるだけでもサティーカジィの神聖力を増幅してくれます。本来は番になった方がより強く作用するらしいのですが。」
ということはサティーカジィは魂の契約で縛りたくないと言っていたけど、結局はしなければならないということか。
俺がイツズにも魂の契約をすることによって、イツズが危険にならないだろうかと思案していると、クオラジュが今度は身体を弄り出した。
「え?ちょ…………あ、ちょ、待って、なにして……。」
俺のない胸をグニグニと触り、先端をキュッと摘んだり揉んだりしている。くすぐったい。
「はぁ……。本当はこの身体を完全に貴方のものに作り変えてからと思ったのですが、こう側にいては我慢が出来ません。」
ズボンの中に手が入ってくる。
俺はビクンと身体を跳ねさせた。
「ふふ、少し硬くなっていますね。」
「いや、そりゃ……、んっ……。あっ、待て待てっ!」
グイッとズボンを下ろされ腰を持ち上げられた。上に着ていた布団はいつの間にか剥ぎ取られている。
「ん、…ふふ、可愛いです。」
クオラジュにお尻を舐められた。舐められたことに思考停止する。だって舐められたことなんてないし!?
「あっ、変な…………、とこ。」
舐めるなと言いたいのに、クオラジュの動く舌があろうことが俺のお尻の窄まりを舐めた。
え?舐めた?
グチュグチュと音がする。
え?なんでそんなに濡れた音が?
「マナブの世界では男性は妊娠しないのでしたね。そして女性しか濡れないのですよね?」
お尻の窄まりに何かがズズッと入ってくる。
「…………っ!………ひっ、あ?え?なに、指……?」
「確かに女性ほどは濡れませんが、男性も興奮すれば濡れますよ。それに神聖力があってそれなりに使える者ならば濡らしてあげることも、綺麗に浄化してあげることも出来ます。出来ない者でも道具さえあれば可能です。」
そう説明しながら入った指がゆっくりと動く。
「…あっ待っ………………あっ、んん!」
前の陰茎にも手が伸びてきた。大きな手が長い指がスッポリと包みこみ、上下に動き刺激してくる。
「ほら、中から擦りながらこうやって外も刺激してあげると気持ちがいいですよね。」
そう言ってクオラジュは背中の傷口にまた舌を這わせながら、お尻の穴に入れた指を抜き差ししつつ、俺の陰茎を扱いた。
背中を這う舌からは何かよく分からないものがゾゾっと舌の動きに合わせて動き回り、お尻の後ろも前もきもちがいい。
「………………っっ!ぁ、……だめ………っ!」
ギュウと拳を握って我慢する。前から射精そうだ。
どういうわけか指がもう一本増やされた。そんなにお尻の穴が早く広がるのかと驚愕する。
俺は勿論お尻の穴を使った経験なんてない。津々木学だった頃は恋愛対象は女性で入れる側だったのだから当たり前だ。こっちに来てからは恋愛なんてしてる暇がなかったから、女性だとか男性だとか考えたこともなかった。向こうに戻りたい、でも戻れなかったらどうしたらいいのかという焦りばかりだったのだ。
俺、俺、今から入れられる?
お尻にギュウーと力が入る。
背中に舌を這わせていたクオラジュが、フッと止まった。
「……………嫌ですか?」
クオラジュが不安そうに尋ねてきた。
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🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
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そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
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