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全てを捧げる精霊魚
74 ラワイリャンの身体
しおりを挟む「はぃ?!?!」
思わず大きな声が出たのか、すぐに謝る。
「も、申し訳ございません…」
動きが止まったニーナも素早く準備をし、お辞儀を部屋を出た。
「ふふ。逃げちゃった。」
はぁ…と、肘を足に付き手で顔を覆う。
「そんな時間ないのは、お嬢様もお分かりでしょう?」
「あら、時間は作る物よ。
カレルド殿下だって、忙しい忙しいって言いながらちょくちょく来るわよ。」
「…その時間を作る為の皺寄せを片付けているのは僕なのですが?」
「ふふ。そうね。」
2人の事だから。これ以上は言わなかった。
紅茶の横に置かれた、袋に入った焼き菓子を見つめるエノワール。
「はぁ…勿体なくて食べれる気がしないのですが…」
「それこそ勿体無いでしょ?」
「そうですが…。と、言うかいつこんなものを…」
「さっきだけど?」
「…だから、甘い物いるか。って聞かれたのですか?
…いや、違いますね。その前に何か指示されていた様ですし。」
自分で言った事を否定し考える。
「ふふ。食べて頭を働かせれば?」
クスクス笑う私にエノワールは首を振る。
「いえ!もっと考えなければいけない時に頂きます!
なので教えて頂きたいですね!
スッキリしたい。」
紅茶を口に運ぶ私にニコリと笑う。
「別に大したことではないわ。
セナを使いにやりたい。と伝えた時のカレルド殿下、少し考えてらしたでしょ?」
エノワールは頷きながら私の話しを聞く。
「普段なら、イリスかハンナを呼ぶのでしょうけど、無理だと少し考えられたのでしょうね。
あの2人は今日休みだと本人から朝聞いていたわ。
セナが私から離れるとなるなら、
ダメだと言われるか、アナタを置いて行くか、まぁ…可能性は低かったけどロベルトを呼びに行くか。の三択だった。
カレルド殿下は、朝から入れ替わり立ち替わり来ている貴族達の相手でしょうからね。」
そこまで言うと、あぁ。なるほど。と言った様な顔をする。
「1番可能性の高かったのが、疲れた顔してたアナタだった。
丁度厨房の前だったし、休憩がてらお菓子でも。っと思っただけよ。
アナタが甘い物好きではないと言うのなら、私が茶菓子にするだけだったし。」
「…はは。そんな顔してました?」
「少しね。昨夜から忙しかったのでしょ?」
「えぇ。全く聞いていないし、予想外の事を、昨夜の号外新聞で知りました。
策も全て練り直しです。もう数日寝ずに働いた気分ですよ…」
ため息を付き、エノワールも紅茶を口にする。
「ふふ。ドイムもマルセル殿下の『出掛ける』の言葉にそんな顔してたものね。」
「はい。あの意味が分かった瞬間、血の気が引きましたよ…
カレルド殿下の居場所も分からなかったですし。」
「大変ね。」
クスッと笑い、まるで他人事の様に言う。
そんな私をジッと見つめ、少し考える。
「…それは、お嬢様でしょう?」
「私?私は、いつもと変わらなく過ごしているけど?
まぁ、私にも何人か来てたようだけど、追い返したわ。」
何か言いたそうな顔をするエノワール。
だが、迷っているのか黙ってしまう。
「何か私に聞きたい事があるなら、今のうちよ?
私の周りには常に誰か居るから、この状況はとても貴重よ。」
少し微笑んで見せるが、しっかりエノワールの目を見て言う。
ピクリと反応をし、背筋が伸びる。
「…だから、ニーナさんまで部屋から出したのですか?応接室の準備なら1人でいいですよね。」
真剣な顔になり、エノワールも私の目を見て言う。
「えぇ。そうよ。ずっと機会を伺っていたでしょ?」
「はは…全てお見通し。ですか?」
「アナタは、私を買い被りすぎよ。
察しがついただけ。」
「そうですかね…。」
私から目を逸らしボソッと言う。
ふぅ。と息を吐きまた私の目を見て話す。
「では、お言葉に甘えてお聞きしても宜しいですか?。」
「えぇ。どうぞ。」
予想はついている。
エノワールが1番疑問に思っていただろうから。
「失礼な事をお聞きしますが…
一部の記憶がない。のではありませんか?」
“やはり、気づいているわね。”
前置きはしたものの、単刀直入で聞いてくる。
遠回しに聞くより確実で、いつ誰が帰ってくるか分からない今の状況なら最善だと私も思う。
だが、直ぐに答えは言えない。
「あら?どうしてそんな事思うの?」
分かっていた質問だが、少し驚いた風に見せる。
、
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