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3章 俺の愛しい皇子様
88 大切な記憶
しおりを挟むそれから暫くはロクテーヌリオン公爵家でのんびりと過ごしていた。
ヨジュエスが産まれて一ヶ月経った時、紅龍ノジルナーデと水龍ソギラが訪れた。ムルエリデ・ロクテーヌリオン公爵の闇属性の因子を取り除きに来たのだ。
「この世界から闇属性が生まれない様にする事は不可能ですが、公爵家の血筋に入れた闇属性の因子は取り除く事が出来ます。公爵家には態と闇魔法師を誕生させる為に黒龍ワグラの因子を入れていますので、それを排除すれば普通に色んな属性の子供を授かる事が出来ます。」
水龍ソギラはそう言ってムルエリデ・ロクテーヌリオン公爵と産まれたばかりのヨジュエスに手を触れた。
それは一瞬の事で、何をしたのかは分からなかったけど、ロクテーヌリオン公爵の姿に皆驚いた。
「リディ!髪が!」
公爵の髪は黒から綺麗な金髪になっていた。瞳は王家と同じオリーブ色。
「別人…………。」
誰とも無く呟いた。髪と瞳の色が違うだけでこんなに印象が変わるのかと。
「同時にリューダミロの血筋でも有りますので、二属性持ちが発生しても魔力に飲まれて狂わない様に龍の特性を入れています。龍種が人の様に狂わないのは龍気の核が強いから。なのでリューダミロの血筋には魔力が溜まる核の強化を施していきます。非常に魔力の強い人種が誕生してしまうので、過ぎた力は持つべきでは無いと思っていましたが、狂って暴走するより、この対処法の方が良いのだと判断しました。公爵とご子息は対応済みです。」
魔力生成が出来ないのは生まれ付きですので治せません。とソギラは謝ったが、ロクテーヌリオン公爵もアーリシュリン兄もこれで充分だと喜んでいた。
闇魔法で他者の魔力を吸収すると身体が崩れるのは、魔力吸収に本人の魔力の核が耐えられないかららしく、リューダミロ王家の血筋に限ってにはなるが、闇魔法師が産まれてもこの弊害に悩まされる事が無くなった。
それだけでも嬉しいとロクテーヌリオン公爵が笑うと、キラキラの金髪と生まれ持った貴族の気品の所為か、神々しささえ感じる。
本人だけ気付いていない。
「リディ…………女神…っ!」
「?アーリ??」
水龍ソギラはマイペースなのか、そんな二人を終わったとばかりに無視して、ロルビィの方へ向き直した。
ノジルナーデに何か言うと、ノジルナーデが手をスッと出す。
指にはオレンジ色の鳥。
「え!?ピィ!?」
ロルビィはピィだぁ!と喜んで指を出した。
「ワグラと繋がってたらしくて帰って来てたぞ。」
ピィはピーピーと鳴いてロルビィの肩に飛んで止まった。
レンレンがロルビィの影から出て来て、ピィに近付くと仲良さそうに戯れ出した。
「レンレンとピィは仲良かったの?」
レンレンは桃色の丸い花をフリフリと振っている。
「小鳥、仲間。」
「ピーピー!」
レンレンはまだ片言だけどお喋りする様になった。
「ピィ、俺は幸せそうに見える?」
ロルビィは小鳥ピィに尋ねた。
ピィは大きく葉を伸ばしたレンレンの枝に止まって、オレンジの頭をクリッと傾げる。
「ロルビィ、しあわせ、小鳥、しあわせ。」
レンレンが代弁してくれた。
「………そっか。」
ロルビィはいつか来た空中回廊に来ていた。
小鳥は魂が繋がるワグラの元で過ごす事になり、仲良しになっているレンレンがたまに遊びに行っている。レンレンは今やロルビィから離れて好きに動き回ったりしているし、お喋りの上達具合も早い。
空には煌々と輝く白銀の月。
雲もなく、薄く星が見えるのは地上の灯りが明るいからか。
思い出した遠い昔の記憶。
見えない事に疑問も持たなかったあの時。
世界は全て耳から入る音と、肌に受ける感触だけで生きていた。
見えない事が不幸だと知らなかった。
あの人を見たいと、心から望んだ。
世界には色があり、いっぱい生き物がいて、一つ一つ形が違うと教えられた。
『また外にいる。冷えるぞ。』
ぶっきらぼうに話す言葉と暖かい手が来るのを、いつもあの小さな家で待っていた。
何で家が小さいって知ってるかというと、あの人が小さい家だと言ったからだ。
お互い名乗ったこともない。
だって名前持っていなかったから。
言葉と知識は、スイッチを押すと聞こえる音で身につけた。だからあの人とお喋り出来て良かったと思った。
『うん、まってたんだ。』
こうやって待っていると来てくれると知ったから、どんな日でも玄関の外に椅子を置いて待つ様にした。
流れる風も、暑い陽射しも、凍てつく冷気も、雨に濡れる感触も気にならなかった。
それが見えない自分に感じ取れる唯一だったから。
生きているのだと実感出来た。
自分以外に人がいることも知らず、一人取り残されて孤独であるとも知らず生きていたのに、あの人が来て自分の世界は変わってしまった。
どうやったら毎日来てくれるのか、どうやったら長く居てくれるのか、そればかりになった。
一人一人違う形をしているのだと教えられて、あの人を見れない事が悲しかった。
触って良いかと聞けば、どうぞと了解してくれる。
ペタペタ触って一生懸命形を思い浮かべては、灯る熱に浮かされる様だった。
『毎日会いたいです。』
『ああ。』
『ずっと一緒にいたいです。』
『わかった。』
えへへと笑うと、あの人も低い声で笑う。
あの穏やかで何もない日々は幸せだったのだ。
何も知らないからこその幸せ。
あの世界が何であったのか今でも知らない。
家の外がどうなっていたのかも知らない。
あの人以外と話したこともない。会ったこともない。
全てがあの人を中心に回っていた。
何かが弾ける衝撃と、多くの気配に怯えるまで、幸せだった。
大勢の誰かの手に捕まって、音もない所に閉じ込められ、叫んでも暴れても逃してくれなかった。
なぜ金の目かと聞かれても知らない。
自分が金の目だということさえ知らないし、金が色だと言うことも知らなかった。
怖くて怖くて、あの人を呼んだけど、名前を知らない事に涙を流した。
身体から力が無くなり、動けなくて、息もできなくて、痛くて痛くて、いつの間にか死んだのだろうと思う。
そんな事も気付かずに、やっぱり自分はあの人を追いかけた。
知らなくても、覚えてなくても、会えた感動が心を支配していた。
遠い記憶に、ロルビィは目を瞑った。
「レンレン、俺の記憶を保管しといて……。」
ロルビィとレンレンは今や感覚も記憶も繋がっていた。ロルビィが意識して切り離せば、感覚は離れているが、望めば繋がる。
だからこの大切な記憶が薄れてしまわない様に、レンレに預ける。
あの人の声。
あの人の温もり。
手の感触。
吐息の匂い。
抱きしめるととても甘い匂いがした。
「こら、そこら中レンレンを生やすんじゃない。」
コツンと頭を小突かれる。
ロルビィが目を開けると、ユキト殿下が後ろに立っていた。
レンレンは空中回廊の廊下をレンゲ草だらけにしていた。
「あ、アイスきた!」
笑って喜ぶロルビィに、呆れた顔でユキトはアイスを渡した。
ロルビィが感動した様にスプーンでアイスを掬い、パクりと口に入れてうーんと打ち震える。
髪飾りの鈴がチリチリと鳴り、ユキトはロルビィの一つに巻かれた髪の束を掬い上げ口元に寄せる。
「何をしてた?」
ロルビィはユキトを満面の笑顔で見上げた。
「忘れないように、レンレンに記憶の保管をしてました。アイス美味しい!」
ユキトはロルビィに口付けて、含んだばかりのアイスを舌で奪い取る。
「甘い……。」
「むうっ、甘いの食べないくせに取らないで!」
文句を言いながら食べ続けるロルビィの前に、ユキトは膝立ちで座った。
何してるんだろう?と首を傾げながらも、ロルビィはアイスをモグモグと食べる。
アイスは此処に来ないとなかなか食べれない贅沢品だった。早く下町でも食べれるくらい量産してと頼んでる最中だ。
「………何してるの?」
靴を脱がされ、ズボンとパンツを下ろされて、ロルビィは慌てた。
でもアイスの器とスプーンは落とさない。
「アイスちょうだい。」
ユキトが口をあーんと開けるので、仕方なし一掬い掬って口に入れてあげる。
歯並びのいい口の中にアイスは収まり、ユキトはロルビィの発達途上の様な子供の陰茎をパクリと咥えた。
「うひぁあ!?冷たい!」
アイスを含んだ口の中は冷たかった。
口の中でロルビィの陰茎がもごもごと咥えられ、ロルビィは背中をガラス壁に寄り掛かって股を閉じて身悶えた。
「…………あっ、やぁ!……ふぅ、ん、ん。」
もごもごされるうちに口の中は温まり、だんだん気持ち良さで勃ち上がってくる。
なんて事するんだと睨みつけると、ユキトは面白そうに目が笑っている。
ペッと舌を出してピクピクと震える陰茎を吐き出した。
「こっちなら食べていいでしょ?」
ふわっと皇子様然と笑って見せる。
絶対わざとこの表情をしている!
ロルビィは何となくこの温和で人の良さそうな顔に弱い。
普段はちょっと偉そうにしてるくせに、エッチする時だけユキトはこの顔をする様になった。
「ほらほら、早く食べないとアイス溶けちゃうよ?」
そう言いつつ、またパクリと咥えられる。
片手が上に伸びてきて乳首を弄り、後孔の周りもクリクリと弄り出した。
「……あ、はぁ……待って……。先に、食べ………んんん……るからぁ~~~。」
この長い手が恨めしい。
膝が笑って座り込みそうになるのを、ガラス壁に押し付けて座らせてくれない。
咥えたまま見上げてくる紫の瞳が、さあどうぞと言わんばかりに語ってくる。口の動きが止まったので食べろと言う事らしい。
でも後孔に入った指は動いてはいないけどそのままだ。
震えながら急いでアイスを食べる。
冷たい。味わって食べたかったのに……。
食べ終わったのを確認すると、ロルビィのピンク色の陰茎を指で持って亀頭を舐め出した。
態とらしくペロペロと舌を出して舐められ、ロルビィは恥ずかしくて身を縮こませる。
此処は空中回廊なのだ。
外から見えない様に保護魔法がかかっているし、高さもあるので誰かに見られないとは思うが、廊下側からは外は丸見えなのだ。
凄く恥ずかしい。
空中回廊の端と端にある扉はガラス張りで、見張に立つパルと護衛兵士がいるはずである。
羞恥心でキュウと瞑る目を、ユキトは楽しそうに眺めながら執念く舐めた。
尿道口を舌先で突くように刺激すると、ロルビィは身体中で震えている。
立っていられないのか、足をガクガクとさせながらユキトの頭に体重が掛かってきたが、気にせず続けた。
赤く快感と羞恥に悶える顔が可愛くて、ユキトの息も興奮で上がってしまう。
アイスの器とスプーンを落とさないようにしっかり握っている手が可愛かった。
「あっ!あっ!」
ピュピュと出てくる白濁をユキトはゴクリと飲み干した。奥まで残った汁をジュウと吸い尽くすと、ロルビィは腰が抜けてズルズルと身体が沈んでいく。
「まだ、だぁめ。」
倒れそうな細い身体を抱き止めて無理矢理立たせると、ピンクの亀頭をまた舌で舐め出した。
「……あっ!やっ………ダメ!だめだめぇ~~~~!」
グリグリ、スリスリ。
温かい舌がカリ首を舐め上げ、手のひらで亀頭を揉み込むように刺激される。
ユキトの意図を察知して、ロルビィはやめてと叫ぶが、止めてくれるユキトではない。
ヒクヒクと何かが律動する。
ロルビィの唇がフルリと震え、羞恥で顔を真っ赤にして視界がボヤけた。
ドピュ、ピューピュッー
勢いよく出たものが、正面に座るユキトに飛び散る。ユキトの白い頬を、銀色の髪を、上等な服を濡らし、ロルビィは翡翠の瞳を濡らして呆けたように見ていた。
「~~あぁ、あ~~~~~。」
快感と、高貴で美しい愛する人を汚した背徳感に、ロルビィの頭の中は真っ白になっている。
「ふふふ、いっぱい出たね。」
ユキトの股間は興奮でビキビキに痛い程誇張していた。
翡翠の瞳からポロポロと涙が流れるのを、恍惚と見上げている。
毎度毎度、ユキトは潮を吹かせようとしてくるので、最近は癖になりつつある。
よろけた身体がガラス壁によりかかり、今度こそ座り込んだ。
足と言わず腰も力が入らない。
震える手がなんとか持っていたアイスの器とスプーンを、カラーンと手放した。
「あっあっ、…ひぐっ、ふっふぇ………。バカァ~~………。」
ロルビィは恥ずかし過ぎて声を上げて泣き出した。
ユキトは濡れた身体も気にせずに、ロルビィにキスをしてくる。上向かせて舌を入れ込み、息も絶え絶えの小さな口を味わった。
先程食べた甘いアイスの味がする。
自分も服と下着をずらして聳り立つ陰茎を出すと、隣に座ってロルビィを抱え上げた。
後ろ向きに腹の上に跨らせると、力を無くした華奢な身体は力無く寄り掛かってきた。
ロルビィの後孔はぐっしょりと濡れて、柔らかい。
片手でロルビィの上半身を抱え上げ、片手で後孔に指を入れて確認する。ペロリと唇を舐めた。
「うーん、これだけ濡れてたらいいかな?」
片足を持ち上げ、ゆっくりとロルビィを腰に落としていった。
「~~~~んぁ゛~~~っ!」
ズブゥと穿つ逞しいユキトのものが、奥へと遠慮なく入ってくる。
ユキトの腕がもっともっとと力を入れてくるので深く刺さり、ロルビィは声も出さずに痙攣した。
ドピュピュと押し出されたような射精が飛び出て、腹の中が気持ち良くて自分でも動いているのが分かった。
意識を飛ばしかけている顔を無理矢理横向かせ、グチュグチュと口を塞がれると、ロルビィは無理な体勢とキスの所為で息が出来ない。
頭と視界が酸欠でボウとしてくると、漸く解放されたが、グッタリとした身体はユキトの陰茎が埋まったままだ。
「………ああ、ロルビィ、ロルビィ、このまま離れたくないね。ずっとこのままがいい………。」
ロルビィの萎えた陰茎を手で弄りながら、ユキトは浮かされた様に、小柄な身体を揺さぶり離すまいと抱きしめている。
「………ん、…ぁ……あ、ふ、ぅん。」
ドロリと中に熱い欲望が放たれても、ユキトは離すつもりが無いのか、後ろから抱きしめ入れっぱなしで揺らし続けた。
空には白銀の月が輝き、ユキトの三日月のように笑う瞳と同じだなと、ロルビィは回らない頭でそう思った。
ロルビィは何度かお互い欲を吐き出した記憶はあるが、途中で気を失った。
起きた時は朝でちゃんと身体も綺麗になって布団に寝かせられていた。
「………………。」
上体を起こしチラリと横を見ると、パルが朝の支度待ちをしていた。
最近ユキトは回復魔法まで習得している。
身体はおそらく治されている。
だからどこも痛くないし、少々怠いくらいだ。
「そろそろ起きましょうか。ユキト殿下は先に執務に出られました。」
「…………、はい。」
パルは空中回廊の外側で待っていたはずである。
だから何をしていたか知っている思う。
かなり恥ずかしくて、何も言われない事もまたそれに拍車をかけ、ロルビィは赤い顔を俯かせながら布団から這い出した。
「…………ロルビィ様。」
「……っ!ははははぃ!」
ロルビィはビクゥと肩を揺らした。
「せめて寝室でと進言したのですが、私も命が大切ですので言質は取れませんでした。」
申し訳ありませんと頭を深々と下げられ、ロルビィは布団に突っ伏した。
応援ありがとうございます!
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