翡翠の魔法師と小鳥の願い

黄金 

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2章 俺のイジワルな皇子様

69 魔力譲渡したい?

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 ロルビィは十四歳になった。

 ロワイデルデ殿下は無事聖魔法師として王都に戻ってきた。ピツレイ学院には入らず、直ぐに王太子としての政務に取り組みだし、直ぐに周りからも認知されるようになった。
 不在の間も霊峰周辺地域の活性化に努めており、その話が入ってきていたので誰もロワイデルデ殿下を否定する者はいなかった。

 ロルビィは相変わらずユキト殿下とは魔力譲渡をする様な仲にはなれていない。
 ユキト殿下はロルビィの事を子供として扱うし、自分もどうやって子供と思われないようにしたら良いのか分からなかった。
 十四歳はアーリシュリン兄が公爵を押し倒した年齢だけど、自分にはそんな方法とれる気がしない。
 
 アーリシュリン兄は予定通りロクテーヌリオン公爵家へ嫁いだ。
 白い花婿衣装の公爵と、レースとフリルがいっぱいの花婿衣装?を着たアーリシュリン兄はとても幸せそうだった。
 元々暮らしていたので違和感もなく、アーリシュリン兄は夏の終わりにはさっさと妊娠をした。
 まだ産まれていないしお腹も大きくなっていない。でも凄く嬉しそうなアーリシュリン兄を見ると、ロルビィもとても嬉しかった。
 二人を引き合わせて良かったのだと、心から安心したからだ。
 
 ピツレイ学院は最終学年になった。
 年の半分は討伐演習になり、学院にいる時は座学を詰め込み、後数ヶ月で卒院できるという時に、事態は動き出した。

「カーンドルテ国と北のヴィアシィ国が同時にスワイデル皇国へ侵攻して来ている。私も行かなければならないからロルビィはリューダミロで待ってて欲しい。」

 ユキト殿下は十八歳になっていた。
 十歳でカーンドルテ国が侵攻してきた過去が、今起こったという事だろうか?でもヴィアシィ国は前回名前すら上がらなかった。
 未だに魔女サグミラと思われる聖女オッルはヴィアシィ国に留まっている。
 ヴィアシィ国が戦争の準備をしているとは、シゼから報告が上がっていた。てっきりヴィアシィ国だけ南下するのかと思っていたのに、カーンドルテ国まで同時に動くとは思っていなかった。

「俺もついて行きたいです。」

 縋り付いて頼んでみる。
 これは魔女が起こした戦争だとしか思えない。まだ魔女サグミラはスワイデル皇都に来た形跡が無いので、ユキト殿下の存在を知らないかもしれない。
 でも会えばきっと欲しがるだろう。
 前回のユキト殿下よりも、更に磨きがかかって美しい美丈夫となったユキト殿下の魔力は、清廉に研ぎ澄まされ魔力容量も広がっていた。
 
「ダメだよ。危ないから、待っていて欲しい。」

 いつまで経っても子供扱いだった。
 大好きなのに、ずっと側に居たいのに、魔力譲渡だって他の人として欲しく無いのに…………。

「ユキト殿下、俺は神の領域と言われる人間です。魔力だってレンレンだって誰にも負けないつもりです。危ない事なんてないから連れて行ってください!」

 誰もいない庭園に声が響いた。
 話があると言って王宮に呼ばれたのだが、通されたのはユキト殿下が暮らす離宮ではなく、離れた庭園の東屋だった。
 もう直ぐ本格的な冬が来て、北の大地は雪が降る。
 ここリューダミロ王都は過ごし易い気候で冬もチラチラと雪は降るものの、積もることはない。
 きっと戦地は積もるだろう。

「ダメだよ。君は成人してもいない。それに最近は元気になったとはいえ、身体だってまだ小さいんだ。怪我でもしたら大変だろう?」

「嫌です!」
 
 いつになく力強く否定するロルビィに、ユキトはどう説得したものかと悩んだ。
 いつもはあっさりという事を聞くのに、今回は頷く気配がない。

「ロルビィ、必ず帰ってくるから。心配しなくてもスワイデル軍の方が兵数も多い。」

「それでも、ダメなんです!」

「ロルビィ……。」

「だって、もし、ユキト殿下が…っ!」

「ロルビィ、リューダミロの魔法師も何人か出てくれるんだ。だから安心して……。」

 魔法師…?
 ロルビィの口がそう言いながら固まった。

「ユキト殿下はその魔法師達と魔力譲渡をするんですか?」

 ユキトは少し驚いた。
 今までロルビィが魔力譲渡に対して口に出した事が無かったからだ。
 勿論そのつもりはあった。ロルビィを連れて行けばまた以前の様に魔力譲渡中を見られてしまうかもしれない。だがロルビィを遠くへ一人で離しておくのも不安でならない。
 だったら安全なリューダミロ王都にいてもらうのが一番だと思っていた。

「………ロルビィは十四歳になってるもんね。学院にいれば理解もするか……。」

 そもそもロルビィは元から理解している。
 ただ言えなかっただけだ。

「あの、パルがまだ小さいからダメだって言うけど、でも少しくらいなら……、俺でも…………。」

 尻すぼみに最後は聞こえないくらいの小さな声になっているが、ユキトの耳にはちゃんと届いた。
 少し、という意味が分かってるのだろうか?
 それにまたあの従者かとユキトは苛ついた。ロルビィはあのパルとかいう従者を頼りにしている。
 
 ユキトは反対側に座ったロルビィの横に移動した。

「ロルビィは少しがどの程度だと思ってるの?」

 キョトンとする翡翠の瞳が愛らしい。
 だいぶ大きくなった。自分の胸くらいまでしかなかった身長がここ最近急に伸び出して、肩の辺りまできたのだ。
 まだ細いとは思う。腹だって薄い。
 自分のはどこまで入るだろうか?
 つい舐める様にロルビィの身体に視線を這わせると、何か感じたのかロルビィがモゾモゾと恥ずかしそうに動いた。

「えと……、キスとか?」

「…………ふーん。」

 ユキトは東屋の長椅子にロルビィを押し倒した。
 
「じゃあ、少し……ね?やってみようか。」

「え?」

 ロルビィの後頭部を片手で押さえ込み、小さな唇を覆う様にキスをした。
 下唇を吸って舐めあげ、驚いて開いた口の中へ舌を入れる。
 歯列をなぞって上顎を擦りながら喉の奥に舌を突っ込んだ。ジュポジュポと音を立てて抜き差しすると、苦しそうにロルビィが手足をバタつかせるが、構わず続ける。

「…………っ!…っ!」

 声も出さず、息も出来ずに顔を赤くして苦しみ、翡翠色の瞳から涙が溢れ出した。
 それをユキトは目を開いて、何一つ見逃すまいとジッと見つめた。
 溢れて飲み込めない唾液がロルビィの頬に流れ亜麻色の髪を濡らす。
 バタついていた手と足が力無くダラリと垂れたのを確認してから、ユキトは口を離した。
 力無くダラリと脱力し、漸く解放された事によりゴホゴホと涎を吐き出しながら息をするロルビィを、ユキトはジッと見下ろしていた。
 どうしてこんな事したいのか分からない。
 自分の手で苦しめたいわけではないのに、その姿を見ると興奮する。
 ロルビィの脇に手を入れて起き上がらせ、膝の上に座らせた。

「ねえ、ロルビィ。少しってこれでも良い?本当はもっとしたいんだけど………。」

「???」

 ロルビィは予想とは全く違う事をされ、頭が混乱していた。
 経験があまりないし、今回の人生では初めてキスをした。
 ユキト殿下は大好きだけど、前回のユキト殿下とのキスとなんか違う様な気もする。
 
「そうだよね、分からないよね。」

 クスクスと笑うユキト殿下が図れずにいた。
 
「今は魔力を混ぜてないけど、本当は魔力の混ざった唾液は飲んで欲しいな。」

 優しい声で言われているのに、何故かロルビィは怖くなった。
 あの量の唾液を飲み干すの?
 
「もう聞いちゃうけど、精通はきてる?」

 ロルビィはカァと顔を赤らめた。
 それはパルにも言われていた。せめてそういう行為は精通がきてからにしましょうと。
 男性ならば精液でも魔力を摂取出来るので、その方が良いと。
 恥ずかしかったが、ロルビィは正直にプルプルと首を振った。髪飾りの鈴も勢いよくチリチリと鳴る。
 今回のロルビィの身体は虚弱児で生まれ、身体が弱く小さい所為か、なかなかこないのだ。

「ちょっと試そうか?」
 
 楽しそうにロルビィのズボンが下着ごと下ろされた。

「……ひゃっ!?」

 外はもう寒い。
 スウとする外気に晒された下半身が、羞恥心を増した。

「ああ、寒いから縮こまってるね。」

 ユキト殿下の魔力で作った暖かい風に包まれる。
 暖かい空気は嬉しいが、ユキトの片手がロルビィ股間を揉みしだいている。

「…あっ、ちょ……だめっ!」

 クリクリと弄られ芯を持ち出すと、皮をゆっくりと上下に動かされ、気持ち良さにロルビィの身体から力が抜けていく。
 
「うーん、滑りが良くないか。」

 ロルビィはもう一度長椅子の上に転がされた。そしてパクりと咥えられる。

「…!!!………あ、やぁ~っ!!咥えたらダメ!」

 唾液に塗れた口内でロルビィの小さな陰茎は根元まで咥えられていた。
 暖かな水気と蠢く舌が、ロルビィの快感を下半身に集めていく。
 思わず力が入って上がった腰を、ユキトが支えて更に喉の奥に当たるように包み込んだ。
 少しだけ皮から飛び出た亀頭が、ユキトの口の中でツルリと滑らかに感じる。少し塩辛い味と共に魔力の甘みが広がり、ユキトは唾液に混ぜて舌と舌奥を使ってグチャグチャと刺激した。
 硬さを持ち、ヒクヒクと震え出す。
 ああ、可愛い。
 ユキトは今か今かとロルビィの快感が増す様に、口の中で甚振った。

「………っあ!あっ!やっダメ、ダメ、あっっ~~~~~んん、ん~~~~っ!!」

 ロルビィはピュピュと出た感覚が信じられなかった。
 ジュウと力強く吸われて全身がビクビクと痙攣する。
 激しく揺れて髪飾りの鈴がチリチリンと鳴った。
 全てを飲み干すようにジュッポと音を立てて漸く離されたが、ロルビィの頭は呆然として、翡翠の瞳を見開いていた。溜まった涙がツウっと流れる。
 ドクドクと激しく心臓は鳴り響くのに、息は上手く吸えずにはっはっと短く息を吐いて苦しい。

「ふふ、もしかして初めてかな?」

 ロルビィの腰を抱えたまま、とても嬉しそうにユキト殿下は笑っている。いつもの優しい微笑みではなく、男らしい情欲をのせた顔で笑う姿を、ロルビィは初めて見て震えた。
 怖いのか、嬉しいのか、驚いているのか、自分でもよく分からない。
 ユキトは汚れるのも構わずもう一度ロルビィを膝の上に乗せた。
 見下ろしていたユキト殿下の首元から、細い鎖がシャララと落ちて、座り直した時にロルビィの目の前にぶら下がったペンダントトップが見えた。
 ………これは。
 見覚えのある物だが、今は精を吐き出した衝撃で頭が回らなかった。
 ロルビィが呆然とする姿を、ユキト殿下は可愛いと言っている。

「いいかい?私が望むのはこれ以上だよ。それでもいいの?」

 大きく開いた翡翠の瞳からはポロポロと涙が溢れている。それを舌で掬い取ると、ピクリと震えた。

「さあ、どうする?ついてくるかい?」

 アメジストのように深く輝く紫の瞳が、ロルビィの心の中まで覗き込むように問い掛ける。
 久しぶりに感じた射精の快感と、ペンダントにぶら下がった緑紫銀色の二つの弾丸に、ロルビィの頭は混乱していた。

 涙がポロリとまた一粒流れる。

 快感による生理的な涙なのか、懐かしくも悲しい物を見た悔恨の涙なのか。

 最後に見たのはガラスの様に透明になった紫の瞳。緑のガラスを握って遠くを見て、もうロルビィを見ない空虚な瞳。

「………ぁ、俺、は………。」

 ユキトの目が細まり笑みが深まる。
 その奥にあるのは歓喜か焦燥か。
 顔が近付き、更に追い込もうと唇が開いた時、ユキトは驚いて咄嗟に剣で何かを弾いた。
 
 ーーチュィィィィン、という甲高い音と剣戟に、ロルビィの意識も一気に覚める。
 ガギンという剣と剣が合わさる音に見上げれば、日差しを浴びて輝く金髪と真紅の瞳が見下ろしていた。

「こんな所で息子の下半身晒して何しておられる?」

 硬質な女性の声はセリエリア・へープレンド、ロルビィの母のものだった。
 お互い剣の鍔を交差させ、ギリギリと拮抗している。身体強化の重ねがけに空気が魔力で重くなる。

「………是非、次の戦いで魔力譲渡の相手をお願いしたいのだが?」

 紫と真紅の瞳がバチバチと音を立てている錯覚が起きそうな程、瞳孔が開き瞳が輝いている。

 下から見上げるロルビィは動けずに固まっていた。怖い。

「ロルビィは未成年ですのでご容赦を。この子はまだ保護者の管理下におりますので。それに、リューダミロ王家からヴィアシィ国との戦闘に参加するよう言い使っております。」

 ユキト殿下の眉がピクリと動いた。

「了解した。保護者の管理下のもとよくよく見張られるといい。」

 いつにない高圧的な物言いで、ユキト殿下はロルビィを降ろした。
 降ろされたロルビィは急いで下着とズボンを上げる。
 親に見られるとは恥ずかしいものなのだ。
 
「またね。」

 ちゅっと頬にキスを落とし、ユキト殿下は立ち去ってしまった。
 何で急に手を出されたのか分からず、ロルビィはホケーと惚けるしかなかった。
 今までキスも、ましてやあんな事までされた事が無い。急にどうしたんだろう?

「ロルビィ様、ただでさえ脆い自制心をそんなに突ついたら駄目ですよ。」

 ガサガサと音がして低木の植え込みからパルが出てきた。人払いされた時にパルも建物の方に待機させられていた筈だ。

「え?何のこと?」

「慌ててレンレンに呼びに行ってもらったんですよ?」

 レンレンは何故かパルの横に出てきてクルクルと回っていた。
 何となくパルに怒られてるのは何でだろう。

「王達を置いてきてしまった。急いで戻るぞ。おそらく今度の戦闘に参加するよう言われるだろう。」

「ん?既に言われてたんじゃ無いですか?」

「嘘だ。まぁ、言われるはずだから先に言っただけだ。」

 カラカラと笑いながらセリエリア母は言い切った。

「お前はあの皇子様に股を裂かれても良いと思ってたかもしれんが、親として見過ごすわけにもいかんからな。」

「股が裂く……………。」

 裂けちゃうのかな…………?
 以前ユキト殿下の魔力譲渡の最中を見てしまった時、ユキト殿下のアソコが丸見えになった。
 ズボッと抜けて勃ち上がった部分は確かに大きかったかも…?
 入る?裂ける?
 うんうん唸りながら流されるようにセリエリア母について行き、流れるように戦闘参加を言い渡された。
 因みに王宮内で戦闘はしないように厳重注意もセリエリア母は言い渡されていたが、あまり応えていなさそうだった。





 後からパルに確認された。

「ロルビィ様、とうとう出たんですか?」

「何が?」

「精通です。気にされてたでしょう?」

「…………あ、うん。……たぶん?」

「なぜ、たぶん?」

「だってユキト殿下が飲んじゃったし……。出たとは思うんだけど……。」

 パルの目が半眼になる。

「…………そうですか。とりあえずおめでとうございます。」

「………あり、がとぅ。」

 気不味い沈黙が訪れた。





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