翡翠の魔法師と小鳥の願い

黄金 

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2章 俺のイジワルな皇子様

63 魔獣討伐訓練へ出発

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 リューダミロ王都の北は広大な森林と大きな深い谷が存在する。
 谷の奥深くはただの乾燥した大地だったり、森であったり水が流れる川であったりと様々だ。
 まだ学生ということで、俺達ピツレイ学院生は王都から一日離れた森の中の砦に来ていた。学年が上がるごとに距離が伸びて危険な場所に行くらしいが、まだ一年目なので比較的安全な場所に来ていると教えられた。
 確かに魔獣も魔植もいるにはいるが、小物が多い。

 俺、ユキト殿下、トビレウス兄、カーレサルデ殿下四人で組んだ班は、教師陣から決して無理はしないようにと厳重注意されていた。
 なにせ王族が二人もいるし、リューダミロ王家公認の神の領域までいる。
 何かあってからでは責任問題が生じるので、出来れば大人しくしていて欲しいようだ。
 だいたい四人から六人の偶数班を作って、更に二人でペアを組んで動くらしい。
 俺は勿論ユキト殿下と組むし、カーレサルデ殿下はトビレウス兄を捕まえて離さなかった。
 トビレウス兄は顔を引き攣らせていた。
 何故かというとカーレサルデ殿下と組みたがる人間が多かったからだ。
 カーレサルデ殿下は本来二年後に入学する予定だったのに、規定を変更して早期入学してきた。周りは皆んな歳上ばかりなのだ。
 皆んなお慕いしております、お守り致しますと言って近寄って来るのだが、カーレサルデ殿下はにっこり笑って追い払っている。
 ユキト殿下は王族の微笑みでやんわりと有無を言わせず断るが、カーレサルデ殿下は顔は笑っているが反論を許さない感じで断り方に圧力がある。
 皆んなペアを組みたがるのには理由がある。
 魔力譲渡だ。
 魔力の喪失具合によっては性行為にも発展する。王族と良い関係になりたいと思う人間、主に貴族の子息令嬢は熱心に言い寄っては弾かれている。
 
「ピツレイ学院の年齢制限は魔力譲渡にも関係しそうだね。」

 やれやれと首を振りながら今日も腕に縋り付いてきた貴族子息を、カーレサルデ殿下は追い払っていた。
 カーレサルデ殿下は十四歳ながら身長が高く、体格もソルトジ学院で鍛えたおかげか筋肉がついている。
 性格も落ち着いて思慮深い所為か、十六歳に混じっていても違和感が無い。そういうところも人気がありそうだった。
 トビレウス兄は逆に二十歳と周りより遅い入学となり、年長者なのだが小柄な体格と気弱そうな表情の所為か、これまた違和感なく周りに溶け込んでいた。
 トビレウス兄は魔力も少ないし、魔力の多いカーレサルデ殿下の負担になると言ってペアを辞退しようとしたのだが、カーレサルデ殿下が許さなかった。
 どっちが歳上だか分からない。

「部屋の鍵を貰ってきたよ。」

 ユキト殿下が鍵を二つ持ってきて、一つをカーレサルデ殿下に渡した。部屋は隣同士だが、石造りの砦は壁が厚くひんやりとした感じだ。1階には入り口と広めの大部屋と食堂、倉庫。2階から上は大量の部屋が有り、最上階に長がつく役職兵士、塔のてっぺんは見張の待機部屋で外に出て見張をするらしい。
 討伐は明日からで、野営になる場合もあるので野営の道具も持っていく。
 俺はコッソリ亜空間へ入れてしまった。
 トビレウス兄とカーレサルデ殿下の荷物も入れようとしたら、逸れた場合に無いと生死に関わるので本人が持った方がいいと言われ、亜空間へは俺とユキト殿下の分だけにした。

「ロルビィ、ユキト殿下と二人きりになるけど大丈夫か?」

 トビレウス兄が心配気に尋ねてきた。
 以前ユキト殿下が義眼を無理矢理入れた時のことを気にしているのだろうかと思ったが、あれは教えなかったから知らないはずだと思い直す。
 あれから変な事もしないし、普通に優しいユキト殿下なので、何を心配しているのだろう?

「はい、大丈夫だと思います…………。何か気になる事でもありますか?」

 何を気にしているのか分からず尋ねると、トビレウス兄はひっと小さく悲鳴をあげた。
 トビレウス兄の目線を追うと、ユキト殿下がこちらを見ていた。普通に微笑んでいる姿はいつも通りだ。以前の様に分かりやすい他人行儀な笑い方ではなく、普通に優しく笑っていると思うんだけど、何故トビレウス兄は青褪めるんだろう?

「ほら、トビレウス行こう?」

 カーレサルデ殿下は固まっているトビレウス兄を隣の部屋へ連れてってしまった。
 
「私達も入ろうか。夕食までにはまだ時間があるよ。」

 俺もユキト殿下に促されて部屋に入る。
 部屋の中は思ったよりも狭かった。そのかわり部屋には小さなシャワーとトイレがついていた。
 大風呂もあるらしいが、そちらは使用時間が決められている。
 ベットは二つ、簡易的な木のベットで、いつも高級布団に寝ているユキト殿下は大丈夫だろうか。
 
「ロルビィ、おいで?」

 片方のベットに座ったユキト殿下に、隣をポンポンと叩いて呼ばれた。
 なんだろうと思いながらも隣に座る。
 座って見上げて、ユキト殿下大きいなと思う。四歳差とはこんなにあるものだろうか。
 顔を両手で包まれて、右目を覗き込まれた。
 あれから義眼の調子は凄ぶる良い。
 自分の本来の目である左目と遜色ない色合いに、誰もこれが義眼だと気付かない。

「うん、調子はいいようだね。」

 義眼の調子を見たかったのか。

「身長もだいぶ伸びたね。体重は増えた?」

「伸びたし増えもしましたけど、同年代に比べるとまだ小さいって言われます。」

 苦笑いして答えると、ユキト殿下が身体をサワサワと触ってきた。
 
「ふ、ふふ、くすぐったいっ!」

 俺が笑うと、ユキト殿下もふふと楽しそうに笑った。
 トビレウス兄が心配そうに言ってきた所為で俺も少し不安になったが、ユキト殿下は普通に優しい。
 怖かったのも義眼を入れられた時くらいだ。あの時は一瑶兄ちゃんを思い出したが今は前回のユキト殿下のように優しい。
 ユキト殿下もあの時は麻酔を忘れてたんだろうか?
 義眼を入れてから一年以上経っていたので、俺はあの時の痛みをすっかり流してしまっていた。
 





 隣の部屋ではトビレウスが溜息を吐いていた。怖かった。心配でロルビィに話しかけていたら、視線を感じて横を向くとユキト殿下が笑顔で見ていた。
 笑顔は別に関係は無いのだが、あの色であの笑顔を出しているという事に恐怖を感じる。
 黒い?暗い?赤っぽい紫色。
 え?魔王?と、最近思っている。
 ユキト魔王だ。

「そんなに怖いなら下手に突つかなければ良いのでは?」

 カーレサルデ殿下が困ったように笑っていた。

「うう、だって………………。」

「私には兄弟仲良く話している姿を微笑ましく見ている様に見えたんだが、違ったのか?」

 あ~~~~そうか、そうだよね、そう見えるよね。
 自分のこの能力が恨めしい。
 う、うーんと唸るトビレウスを、カーレサルデはぎゅうと抱きしめた。

「まぁ、ユキト殿下に負けるつもりはないよ。困ってるなら私を頼るといい。」

 え?この子ほんとに十四歳?六歳歳下がとても頼もしい。既に身長もとうの昔に抜かされているし、抱きしめてくる身体は逞しく安心感バッチリだ。
 私が困っていると何も言わずとも助けてくれるし、ユキト殿下の対応をそれとなくやってくれる。
 
「ごめんね、頼りない歳上で。」

 謝るとオデコにちゅっとキスをされた。
 いや、ほんとにこの子年齢偽ってないよね?








 格子付きの窓の外は月明かりで薄っすらと明るいものの、夜の闇が落ちた広がる森の暗闇を、いっそう真っ暗に引き立てていた。
 シャワーを浴び部屋に戻ると、先に済ませたロルビィはスヤスヤと眠っていた。
 いつも一つに結んだ髪は解かれ、髪飾りは布部分を綺麗に畳んで紐と装飾品を布の上に乗せていた。
 とても大切にしているのか、毎日髪を結びディカの髪飾りをつけている。動く度にチリチリと鈴が鳴り、ロルビィの小さな身体によく似合っていた。
 ロルビィの傍らに座り、そっと頬に触れる。まだまだ同年代よりは二歳程度歳下に見えるが、運動をさせ食事内容を徹底させていたおかげで血色も良く、こけた頬もふっくらとしてきた。
 唇を撫で、耳を擦り、髪を一房持ち上げる。癖の無い真っ直ぐな亜麻色の髪は、窓から入る月の光を受けて真珠の様に滑らかに輝いていた。

「……………………。」

 義眼を入れた時、ロルビィの翡翠の瞳から落ちる涙が忘れられず、もう一度見たいと願っていた。
 しかしゼクセスト・オーデルド博士が常に間に入る様になってしまった。
 そして勘が良いのかロルビィの兄まで邪魔する様になり、トビレウスに常にくっついているカーレサルデ殿下まで何かと話し掛けてきて、ロルビィと二人きりになる機会が無くなってしまった。
 だから今回は本当に久しぶりに二人きりだ。
 何故こんなにロルビィが気になる様になったのか、自分でもよく理解出来ていない。
 元々翡翠の宝石が好きだったが、何故翡翠が好きなのか分からない様に、ロルビィが気になる理由も分からなかった。
 義眼を入れたおかげで眼鏡も不要になり、キラキラと光る翡翠の瞳を見れるようになったのは良いが、今度はそれをいつも側に置いておきたくなってしまった。
 一房とった髪はサラサラとロルビィの身体に落ちていく。
 ぷつぷつとボタンを三つ開けて、ロルビィの肌を露わにした。
 白い肌に小さな桃色の乳首がちょんちょんと乗った身体。子供特有の筋肉のない胸は肋が浮いて、呼吸に合わせて上下に動いていた。
 子供の小さな身体を見て、何故胸が高鳴るのか。
 息が浅くなり、鼓動が早まる。
 下腹部がゾワゾワと熱を持ち、膨らみ出した股間にユキトはふっと笑った。
 好きなのか?
 こんな小さな子供を?
 だが、同じ様な年頃の子供を見ても何も感じない。女性も男性も歳下も歳上も、そういう気持ちになれるかと言えば全くならない。
 ロルビィを見ると、何かを叫び出したい様な、心が騒ついて落ちつかなくなる。
 恋心が幸せなものばかりだとは思っていない。楽しくも有り苦しくもあるのが恋愛だろうとは思っているが、自分がいざそうなると、ユキトは迷ってばかりいた。 
 手に入れたい、だがこんな小さな子を?
 なんとか自分の手の内にいる様に努めてはいるが、ロルビィが他人と楽し気にするのを見るのは嫌だった。
 ユキト殿下、ユキト殿下と後をついて回るくせに、ロルビィは自分から愛情を貰おうとはしない。ただただ好意を見せ笑う。
 一番最初に自分が突き放した所為とは理解しているが、一度突き放した関係はなかなか修復出来ずにいた。
 どんなに優しくしてもロルビィは一線を置く様になってしまった。
 
「………………はぁ。」

 熱い吐息が出る。
 これ以上見ていると襲いそうだ。
 小さな身体を組み敷いて、桃色の唇も乳首も舐めて吸って赤く膨らむまで味わいたい。
 ロルビィのズボンに手を掛け、少し下にずらしたり。
 まだ下生えさえ生えていないツルンとした股間に小さな子供の陰茎がついていた。
 指でクリクリと弄ると、ピョコンと立ち上がる姿が可愛らしい。
 舐めたら起きるだろうか。
 ロルビィは年齢的にも体格的にも精通していないだろう。
 自分の手で性を味あわせ、一番最初の吐精を見たい。舐めとって翡翠の瞳に涙を浮ばせ、それを導いたのが自分だと分からせたい。
 ビギビキと立ち上がる自分の股間に、ユキトの息は上がり、頭に熱を持つ。
 今ロルビィが起きたら驚くだろうか。
 怒るか?
 許すか?
 起こしてみたい気もするし、拒絶されたらと考えると不安にもなる。
 見を屈め、小さな胸に顔を埋めた。
 チュウと吸い舌で舐めて押す。
 小さな子供の陰茎をクリクリと触りながら、無心になって何度も繰り返していると、ロルビィが小さく呻いた。

「…………んん、……ぅ、すう~。」

 ロルビィは体力がない。特に十六歳に混じってここまで歩いてきたので今日はかなり疲れているだろう。
 起きそうにない気配に少し安堵した。
 ロルビィの股の間に手を滑り込ませ、小さな秘部を撫でる。
 こんな小さなところに自分の陰茎が入るだろうか?
 いや、無理矢理割り開いて押し込めたい。
 足を持ち上げ指を入れて慣らすか?
 ゴクリと自分の喉がなる。
 背徳感と被虐心に心が傾きかけた時、目の前に突然ロルビィとの間を邪魔する様に緑の葉っぱが伸びてきた。
 桃色の花をフリフリと振りながら、葉を揺らして邪魔するのは、ロルビィが使役する魔植レンレンだ。

「………お前の忠誠心には恐れ入るよ……。」

 残念に思いながらも、止めてくれた事に感謝した。
 ここで襲ってしまえば、どうなるか分からなかった。
 襲われたロルビィも無事では済まさないだろうし、今まで築いてきた自分の立場も一気に傾くかもしれない。
 
「……………助かった。」

 レンレンはふりふりと蔓を揺らして返事した。
 この魔植は頭が良い。
 普通使役された魔獣も魔植も、ただ主人の命令に従うだけで忠実ではあるものの、善悪が必要な事柄など理解出来ない。
 攻撃も誰を攻撃するか明確に指示しないと、仲間を攻撃する場合も多々ある。
 だが、この魔植レンレンは細かく命令する必要もなく、独自に判断して主人の為に動く。
 ユキトがこうやって我を忘れて襲おうとした時は出てきたが、その前少しイタズラする程度では止めなかった。多分ユキトだから止めなかったのだろう。他の人間ならば即排除されたはずだ。
 主人の為に、主人が望む様に自分で思考している。
 それだけでもこの魔植は有り得ない存在だった。

「………君には是非私の仲間になってもらいたいね。…………お前が話せればもっとロルビィについて色々聞けただろうに、残念だよ。」

 ユキトはそう言って桃色の花をひとなでして、ロルビィの服を戻してシャワー室に入っていった。

 レンレンはクルクルとロルビィの周りを回って、ユキトが先程溢した一言を考えた。
 話し。
 言葉。
 それは魔植にはない機能だった。
 話せれば、便利。
 ユキトが何気なく溢した一言で、レンレンの進化はさらに進む事になる。





















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