翡翠の魔法師と小鳥の願い

黄金 

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1章 俺のヘタレな皇子様

24 アーリシュリンとムルエリデ

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 夢の中にいるようで、それは現実だと理解していた。
 自分が放つ炎が家を焼き、人を焼き、村や町を滅ぼすのを、涙を流す事も出来ずに眺めていた。

 誰でもいいから止めて欲しい。
 この身が壊れてもいいから止めて。

 見知った魔力に安堵した。
 翡翠の小柄な可愛い弟。
 誰よりも強いのに、自分自身ではさっぱり分かっていない子。
 リューダミロ王家からは神の領域と恐れられ、幸せになりたいという願いを邪魔せぬよう、領地に押しやられた事もロルビィは知らない。
 その本質は、とても優しい。
 家族が幸せで有れと願う弟。
 
 私は多くの罪のない人を殺したから、今私は自分自身を許せないから、幸せでないから止めて欲しい。
 ロルビィは兄である私の幸せを願ってくれている事を知っている。
 だからきっと止めてくれる。
 身体は魔女の言いなりで、私では止めれないんだ。
 だから、この身を殺してもいいから止めて!
 こんな情けない兄でごめん。
 ごめん………。
 ごめんなさい…………。

 ………リディ、ごめん。
    会いたい………。







 会いたい。

「いる、ここに……アーリ、目を開けてごらん。」

 辛くて怖くて目を瞑ったんだ。

「いいよ、それならもう少し寝よう。」

 ごめん。
 ごめんなさい。
 リディ、会いたい。

「いるよ。ずっといる。自分で迎えに行けなくてすまない………。」

 貴方は身体が弱い。長距離は身体に負担が掛かる。

「でも、来たんだ。少しなら……早く君に会いたくて。帰ろう。一緒に……。」

 うん、……うん帰る。


 優しい、優しい貴方の魔力。
 貴方は私の魔力を甘いと言うけれど、貴方の魔力はとても優しい。味とか匂いとかでは無く、とても優しいんだ。
 寒い冬空の中で、暖かい布団に入って微睡むように、優しい。
 
「目を開けてごらん、私のアーリ。」

 黒い瞳が涙を浮かべていた。
 ずっと年上で、少し強面の美しい顔。
 耳に掛けた黒髪がサラリと一房落ちて、それを掬い上げてあげたいのに、手が持ち上がらない。

「…………リディ……?」

 彼があぁ……と感嘆の声を上げた。
 良かったと。
 目が覚めたねと。
 私が泣くのを貴方は優しく抱きしめた。
 涙を掬うようにキスをして、頬を撫でた。

 手には赤黒い斑点が動いている、気持ち悪い魔植が手を拘束していた。
 ロルビィの魔力がするので、何か意味があるのだろう。

「これか?これが魔力を少しずつ吸っているらしいんだ。君の魔力に絡まる魔女の魅了魔法を解く為に、ロルビィが付けたらしい。」

 寝てていいからねと、ムルエリデは額にキスを落とした。
 優しい魔力はムルエリデの魔力だ。
 普段魔力を作れない彼は魔工飴を舐めている。どうやって魔力を?
 
「実はカーレサルデ殿下も来てるんだ。一旦魔力を溜めるために治癒魔法をかけて貰ったんだ。」

 説明によると、私の魔力をロルビィの魔植が吸い、空になったところでムルエリデの魔力で補い命を繋ぐという方法を取っているらしい。
 ムルエリデのほんの僅かに回復する魔力では私の魔力容量には足らないので、本当は一日一個の魔工飴を舐めながら、カーレサルデ殿下に回復して貰い、魔力譲渡を繰り返したのだという。
 他の人間には魔力譲渡をさせたく無くて、カーレサルデ殿下には無理を聞いて貰ったのだとか……。

 私の中からムルエリデが出てしまった。ああ、もう少しそのままでいて欲しかったのに………。
 それが顔に出ていたのか、リディは待っててと言って頭を撫でた。
 私に上着だけを着せて寝床に寝かせ、自分は衣服を整えテントを出ていく。
 よくよく見ると、ここはテントの中で、何処か外なのだと理解した。
 戻ってくるとリディはカーレサルデ殿下と共に戻って来た。

「やあ、アーリシュリン。久しぶりだ。今回は災難だったな。魅了魔法が完全に解けているか見るから、手を出してもらって良いか?」

 聖魔法師は他人の魔力感知に優れている。聖魔法師も攻撃系と治癒系に分かれているが、カーレサルデ殿下は治癒系に属している。
 カーレサルデはアーリシュリンの体内の魔力を探り、にこりと微笑んだ。

「完全に解除されているようだ。君の弟が付けた魔植はなかなか使い勝手が良さそうだね。今はまだ明け方前だから、ゆっくり休むといい。ロルビィは恐らく夕方頃に着くだろうから。」

 そう言って、手に巻いた魔植をナイフで切った。
 手が自由になり手首を擦っていると、リディが布で綺麗に拭いてくれた。手のひらやら指やらまで丹念に拭いているのは何でなのか。魔植の粘液は手首にしか付いてなかったのだが……。

「ムルエリデは意外と嫉妬深いんだな。」

 笑いながらカーレサルデ殿下は出て行ってしまった。
 むすっとしたリディを見ていて、そういえばカーレサルデ殿下とはピツレイ学院で魔力譲渡をするペアを組んでいたのを思い出す。他にも何人かいたが、リディは当時なにも言わなかったし、学院では魔力譲渡をするペアを決めておくのは常識だったので、そんなものだと思っていたが、実は嫌だったのだろうか。
 
「リディは学院で魔力譲渡のペアいた?」

 ムルエリデの目が彷徨い、いないと言った。ムルエリデの自力での魔力回復は病的に少ない。アーリシュリンだからこそ、二人分の魔力を補えると言ってもいいし、だからこそ婚約者に選ばれたのだ。それくらいアーリシュリンは魔力容量と回復量が多い。
 今の自分の魔力は半分程度。
 今ならカーレサルデ殿下もいるし、魔力譲渡をしても問題ないだろう。闇魔法師は魔力を吸うと身体に異変が出るというが、聖魔法師に治癒を掛けてもらうことで正常になるという。
 ピツレイ学院時代は知らなかったが、後から王家との約束事で、カーレサルデ殿下に掛けて貰っていたと聞いた。

「リディ、ちょっと来て。」

 袖を引くと、大人しく横に座る。
 ムルエリデは公爵という立場と長身に合わせて、病気で痩せている所為か見た目で怖がられている。闇魔法師特有の黒髪黒眼も雰囲気を恐ろしくしているのだろう。しかし、本質は大人しく受け身な性格だった。
 アーリシュリンの言う事は素直に聞くし、言い負かされることが多い。

「私を慰めて欲しいんだ。」

 ムルエリデの眼を見てゆっくりと言う。魔女にキスをされ、言われるがままに人を殺した。戦は初めてではない。母に連れられて、ピツレイ学院に入る前まで何度も遠征に出向き、北の国との防衛戦に参加したので慣れていると言えば慣れている。だが無抵抗な一般市民を手にかけたのは初めてだった。
 今更傷つく程柔な心はしていないが、罪は感じる。
 だから愛する人に慰めて貰おう。
 そう言うと、ムルエリデは抱きしめてくれた。
 彼は優しい。
 とん、と押すとムルエリデは布団に落ちた。

「???アーリ、寝て方がいい。ゆっくり休めば魔力が回復するだろうし、身体も疲れてるだろう?」

 何故倒されたのか分からず、不思議そうにしながらも横に寝るように促してくる。
 白い掛布に黒い真っ直ぐな髪が広がり、懐かしい黒い瞳に上気した自分の顔が映っていた。
 上着を脱いで裸になると、ムルエリデは黙ってしまう。彼のボタンを外し、白い痩せた身体を露わにすると、少し恥ずかしそうにする。
 ムルエリデは背は高いが酷く痩せている。服を着ていれば骨格がいいので分からないが、身体を鍛えたこともなく、魔力がいつも足らないから病気にもなりやすい。
 魔工飴が手ばないせない彼の為にスワイデル皇国に行ったのに、とんでもない人間に捕まってしまった。
 私と性交を伴う魔力譲渡を行えば数日持つと言っていた。

「先にこっち。」

 しゃがんで彼の男根をパクリと咥えると、はうっと呻き声を上げた。

「まっって、アーリ!それは後からでも……!」

「うるしゃい……。」

 唾液を絡ませ上下に動かし、舌でカリをなぞると、直ぐに立ち上がってしまう。
 さっきまで自分の中に入っていたモノだが、気にしない。
 
「ああ………、アーリ…はぁ、あ……。」

 ちゅぽと口から出して、根本を握ったままあたりを見回す。
 目当ての瓶を見つけて中から透明な球を一つ出した。
 潤滑油と洗浄を兼ねた、性交時に使われる蜜の実という道具だ。自分の後孔に押し込み力を入れると弾ける。
 
「アー…………あぁぁぁっ……!」

 尚も止めようとするムルエリデを黙らす為に腰を落とす。ズブズブと奥まで埋め込み快感に身を震わせると、根本を握りしめたままの指を外そうと手を伸ばしてきたので、ペンッと弾く。

「ダメ。」

 まだダメ。
 アーリシュリンは器用に手を下に伸ばしたまま、自分が気持ち良い所へ擦り付ける。
 快感が熱を高め、魔力を練り上げていく。アーリシュリンの頬は上気し瞳は潤み、ムルエリデは眼が合うと金縛りにあったように目が離せなくなった。
 アーリシュリンの魔力回復は早い。
 あっという間に上り詰め、溢れていく。
 魔力はムルエリデの中に流れ出し、快感が二人を押し上げていく。
 アーリシュリンは握りしめた手を離し、自分をずっしりと奥へ押し込めるように落とした。

「あぁ、………アーリ……、君は!うぅ!」

 仰反るムルエリデの白い喉を、アーリシュリンは身を屈めてペロリと舐めた。

「はぁ、はぁ………。あぁ、リディだ………!」

 アーリシュリンは久しぶりのムルエリデとの性交に興奮していた。ソルトジ学院から戻ったらいっぱい出来ると期待に膨らんでいたのに、それを魔女に邪魔された。我慢が募って歯止めが効かない。
 アーリシュリンが軽く甘噛みしながら喉に舌を這わせると、ムルエリデはぞくぞくと身を震わせた。
 アーリシュリンの意識が無かった時は、ムルエリデが魔力を少しずつ譲渡していたが、今やアーリシュリンの魔力が二人の体内で暴れ回っていた。

「………はっ、はっ…、アーリっ出し…てい?」

 ムルエリデは眼を瞑って懇願する。
 真紅の瞳は愉悦と情欲に眼を細め、ムルエリデと指を絡めて紡ぎながら、まだ、ダメ、と言う。

「もう少し……、ね?」

 最初の頃こそムルエリデがリードしていた筈なのに、年々アーリシュリンは大胆になっていく。年に数回自国に帰省しては肌を重ねてきたが、若くて体力のあるアーリシュリンに翻弄されてばかりのムルエリデだった。

「…うぅ~~ゔぁ、無理………アーリ、お願い……っっっ。」

 顔を赤くして懇願する姿に満足したのか、アーリシュリンは軽くキスをする。

「………ふぁぁ…良いよ……。ちゅっ。」

 下から打ちつけるムルエリデをうっとりと見つめながら、アーリシュリンも自分の陰茎を扱いた。
 そのあられも無いアーリシュリンの姿に、ムルエリデは眦を染めて黒い瞳に涙を溜めて見つめる。

「もう、……でる!」

「……ん!」

 ムルエリデが出した暖かい熱に、アーリシュリンも我慢できずに白濁を出す。
 既に何回目なのか分からないが、量は多くない。
 息が上がり動けないが、体力のあるアーリシュリンの方が先に動いた。
 アーリシュリンは手近にあった布で、ムルエリデの腹に散った白濁を拭き、くたくたと倒れ込んだ。

「………はぁ、無茶をする。」

「ん~~、流石に一回しか出来ない。」

 シーツを引き寄せ潜り込むと二人で微睡む。まだ明け方で空気はひんやりとするが、太陽と共に空気は乾燥し暑くなってくる。
 ムルエリデは枕元に置いた魔道具を起動した。テントの中の温度を一定に保ってくれる装置だ。
 先程までは身体を動かして暑かったが、寝るならつけておかないと安眠できなさそうだ。

「良いモノ持ってきてる………。」

「カーレサルデ殿下が貸してくれたんだ。砂漠の寒暖差は激しいから体調を崩すと言って………。夜は布団をきたら平気だが、昼間は暑くて耐えられない。」

 ただでさえ身体が弱いのに無理をして来ている。
 
「熱出さないかな?」
 
 心配しておでこに手を当てるアーリシュリンへ、ムルエリデは呆れたように笑った。

「出したらアーリが殿下へ治癒を頼んでくれ……。」

 瞼を閉じるムルエリデへキスを送り、アーリシュリンも隣で眠る。ムルエリデの頬が少々赤い。最後の一回で無理させたかもしれない。普段魔力が足らない状態の身体に、魔力を思いっきり流し込んでしまった。休めと言われたのに、起きたらカーレサルデ殿下に怒られそうだ。
 治癒魔法使いのカーレサルデ殿下がいて良かったと、反省の色もなくアーリシュリンは眠りについた。




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