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57 ユンネの悩み

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 旦那様が帰って来た!

 その日は王宮には行かず、ファバーリア家の屋敷で待機していた。
 もう直ぐ到着するという伝令の言葉に、玄関でウロウロと待っていると、今日は騎士団をお休みしたソマルデさんに椅子を持ってこられてしまった。
 そんなにやわじゃありません!

 蹄の鳴る音と、騒がしい喧騒。
 話し声に鎧の金属音が近付いてくる。
 執事が扉をゆっくりと開け、並んだ使用人達の間から、旦那様が悠然と歩いてきた。
 ふわぁぁ~~……。美麗です。しかも目が合ったら微笑んでくれてる!
 抱っこしているノルゼもキャッキャと喜んでいた。完全に俺の子だ。

「お帰りなさい。」

 旦那様が目を細めて笑った。

「ただいま。待たせてしまったようだな。」

「これは………、待ちきれなくて俺が早く出迎え過ぎただけです。」

 慌てて弁解すると、クスリと笑いながら抱き締められた。

「それは嬉しいな。」

 …………!?!?甘いっ!あっまぁーーーいっ!
 腰が抜けそう。
 ほっぺたにチューされたっ!

「エジエルジーン様、お帰りなさいませ。それ以上されますとユンネ様が昇天なさいますよ。」

 ソマルデさんが少し離れた所から注意してくれた。
 俺の魂は飛んでいきそうです。
 旦那様ってキス魔だったんですね………。









 旦那様が着替えを済ませ、俺達はその後の事態の説明を受けた。
 まずソフィアーネは騎士団が王宮の牢へ運んだこと。ファバーリア領地の立て直しは無事に軌道に乗り出したこと。行く先々で首のげ替えを行い、経営の見直しをやって、よく一月で帰ってきたなと思う。
 ボブノーラ元公爵親娘は国の法律から行くと斬首刑になるらしい。捕まえた理由を国家反逆罪にしている為、ちょっとあっさりになるけど処刑して晒し首にするのが一番安全なのだそうだ。
 王家の血筋が入る家系を処刑することに反対する貴族もいるらしく、幽閉案もあったけど、先々で何かしらの禍根になる可能性もあるのでいっそのこと一族全員根絶やしにすることにしたと言われた。
 養子になったサノビィスが新たに当主となり ボブノーラ公爵領を今は統治している。
 元公爵家の一族はむしろいない方がいいだろうという王太子殿下の考えだ。
 ファバーリア侯爵家の財産を使い込んだ損害金は、ボブノーラ元公爵親娘の私財を全て売っても足りなかったけど、三分の二程度にはなったらしい。土地や屋敷、宝石類など片っ端からサノビィスが売ってしまった。公爵家の財産が無くなるからと、旦那様はその半分だけを受け取っていた。
 サノビィスはいつか必ず返しますからと、サノビィスの所為でもないのに律儀にお礼を言って頭を下げていた。



「農園の方は大丈夫でしたか?」

「そちらは大丈夫だ。」

「食糧は自領だけでなく他領にも出していますからね。」

「馬鹿みたいに大量の契約数量を結んでくれたお陰で負債を抱える所だった。果樹園はいいが、作物類の来期分の種の確保が難しいかもしれない。」

 旦那様とソマルデさん二人で話が進んでいく。
 俺はまぁその話をのんびり聞くだけだ。決まった仕事を黙々とやるのは好きだけど、経営側はさっぱりだからね。
 でも種がないと次の作物を作りようがないよねぇ。

「ちっさい種なら俺の『複製』で増やせますよ。」

 何気に呟いた一言で、俺は延々と種作りをすることが決定してしまった。
 芋類は種芋になるので少し大きくて『複製』しても暫くしたら消滅する可能性があるので、小さな種から作れる作物限定で種の『複製』に励んだ。
 俺の『複製』は非常に早く大量生産可能。パラパラとあっいう間に増えて行く種はどんどん領地に運ばれていった。



「すまない。君には迷惑を掛けたくなかったのに、結局助けてもらって。」

 旦那様が申し訳なさそうだ。犬耳と尻尾が垂れて見える。

「大丈夫ですよ。種増やしてるだけですし。」

「ユンネ様。次はカボチャも宜しいですか?」

 ソマルデさんがカボチャの種をテーブルに置いた。

「はい、その大きさくらいなら消えないと思います。」

 一度に大量に『複製』すると消えるだろうけど、消滅しないように俺は高速で一つずつ増やしている。
 一秒に数百個は出来るのでぱっと見は一度に沢山作っているように見えるだろうけど、本当は一つずつ出現している。
 握って出しているだけなので、ゴロゴロと寝転がっていてもやれる作業なのに、旦那様は悲しそうだ。

「何かお手伝い出来ることがあって俺は嬉しいですから、気にしないで下さいね。」

 なんでもない事だと態と明るく言うと、旦那様は感謝のキスをするようになった。




 秋が来てもう直ぐ冬がやってくる。
 秋用の種も厳しかったらしいけど、俺の『複製』で間に合ったらしく、領地では俺のことが感謝されたと聞いて凄く嬉しい。

「芋も増やせたらよかったんですけど。」

「他の作物で代用するから大丈夫だ。あまり無理はしないで欲しい。」

 旦那様は優しいなぁ~。

 でも俺は今悩みがある。
 この悩みを誰に相談すれば…。
 やはりここは俺の親友ドゥノーに聞こう!





 という事で俺はノルゼの世話係をしているドゥノーの所にやって来た。
 
「ドゥノーさん、相談があります。」

「どうしたの?あらたまって。」

 うん、恥ずかしいのでちょい緊張気味でドゥノーの横に座る。
 ドゥノーは今ノルゼにオヤツをあげていた。
 
「ちょっと言いにくいことなんですけど……。」

「うんうん。」

 こしょこしょこしょ………。ドゥノーに近寄り耳元に口を寄せて小声で尋ねた。
 ドゥノーが停止する。

「ね?どう思う?」

「……………え?ええ~~?それってソマルデさんには聞いてみたの?」

 聞いてない。恥ずかしいもん。なので俺は首をプルプルと振った。

「それはちょっと、僕には難しいというか…。ラビノアは?聞いてみたの?」

「聞いてみてもいいかな?」

「いいんじゃない?他に適任者いないし。」

 ドゥノーはそう言うと、オヤツを食べ終わって満足したノルゼを抱っこして「さ、行くよっ!」と俺の手を引っ張った。







 そして俺達は頭を突き合わせて唸っている。

「そこはやっぱり年長者のソマルデさんに聞いてみてはどうでしょう?」

 ラビノアもソマルデさんに確認したらと言った。
 いや、恥ずかしいんだってば。
 あれだよ、友達には聞けるけど身内には言えない的な?

 ここは王宮の北離宮。ルキルエル王太子殿下のスキル研究所がある宮だ。
 と言っても研究してるのは相変わらず殿下とホトナルだけなんだけど。
 本日は部屋に二人ともいたし、サノビィスもやって来ていた。
 サノビィスがいるとノルゼの遊び相手をしてくれるので助かる。ノルゼはいつも大人に囲まれている所為か、サノビィスを見ると喜ぶようになった。歳が近いのはサノビィスだけなのだ。それでも十一歳差はあるけど。相手をしてくれるサノビィスには申し訳ないけど凄く助かる。

「ソマルデならここの警備のことできてるぞ。」

 ルキルエル王太子殿下が俺達の会話を聞いていたのか話しかけてきた。

「うわ、殿下、盗み聞きですか?そこは聞かなかったフリをすべきでしょう。」

 いや、ドゥノー、その人この国の王太子だから。次期国王だから。普通に友達のノリで突っ込んだらダメだよ。

「そうやってグダグダと悩むのは好きじゃない。」

 殿下も殿下で不敬だなんだと言わない人だからいいけど、人の話を聞く気もない。何もない空中に『絶海』を開くと、自分の手を入れて何かを引っ張った。
 ぐいっと取り出したのは人間。

「……殿下、呼び出すなら普通に呼び出していただいてもよろしいでしょうか?」

 ソマルデさんだった。
 ラビノアはキャワっと小さな悲鳴をあげている。
 


 そして振り出しに戻る。
 結局俺は悩みをソマルデさんに聞くことになってしまった。

「なるほど、エジエルジーン様が手を出してくれないと。出して欲しいんですね?」

「うわぁっ!」

 恥ずかしすぎて言えなかったのに、思いっきり確認された!
 真っ赤になって顔を両手で隠す俺に、真顔で聞かないで!

「ミゼミに『隷属』で興奮状態にしてもらうとか?」

 ホトナルが非人道的な助言をしてきた。本日ミゼミはアジュソー団長の授業に出ている。いなくてよかったよ。何言ってんだろこの人も。

「却下です。そもそもエジエルジーン様にはもうミゼミ様の『隷属』は効きません。子供もいる部屋で言うべき言葉ではありませんね。」

 ソマルデさんが絶対零度の目でホトナルを睨みつけた。直ぐそこにノルゼとサノビィスいるからね。聞いてなさそうで良かったよ。
 どこまでスキル耐性で『隷属』に耐えれるか見てみたいと尚も言い募るホトナルは、ソマルデさんのひと睨みで黙った。

「はい、はいっ!嫉妬させてみる!」

 ラビノアが良いことを思いついたとばかりに手を挙げて発言した。

「嫉妬かぁ。良いかもね!面白そう!」

 ドゥノーが賛同しているけど、なんか既視感を感じる。前もこの流れなかったっけ?

「ユンネは夜会には出たことはないのか?」

 ルキルエル王太子殿下に尋ねられて、俺は無いと首を振った。ファバーリア侯爵家宛に招待状はいっぱいきてるけど、俺は参加したことなかった。
 旦那様はどうしてもっていうのだけ出席している。俺は出なくていいのかと聞いたけど、今はゆっくりと休んでいるように言われてしまった。出たいわけでもないので安心して欠席してたけど、出た方が良かったのかな?

「なるほど、一度出てもいいかもしれませんね。」

 ソマルデさんが納得顔をした。

「やっぱり夫人も一緒に行った方が良かったんですね?」

 不安になってきた。旦那様に迷惑かけてたかも?

「いえいえ、そうではなく、エジエルジーン様とは別に違う人間とパートナーとなって出席するのです。ユンネ様を参加させない理由はたんに他人に見せたくないというだけの理由なので。」

 俺は人様に見せれるような人間ではないと…?
 があーーーんとショックを受けていると、ルキルエル王太子殿下が引き出しからカードを一つ取り出してきた。

「これに行くといい。仮面舞踏会だから他人には分かりにくい。だが黒銀団長ならユンネのことを見つけられるはずだ。」

 まだまだ先のパーティーだから用意もしやすいだろうと見せてくれた。

「仮面舞踏会っ!私がパートナーでもいいですか!?」

 ラビノアが食いついてきた。
 
「え?でも俺はエスコートなんてやったことないよ?」

 男性側はエスコートとやらをやるんだよね?

「私がやります!」

 ラビノアの青い瞳がキラキラと輝いている。

「おお!ラビノアやる気なんだね!僕も行ってみたいけど譲るよ!」

「え?ちょっと待って、ドゥノー煽らないで。」

 待って、ラビノアがエスコート役するということは!?

「エジエルジーン様はユンネ様にドレスを贈られましたよね?ちょうどよい機会ですよ。」

「うわぁ、そのドレス見せて下さい!衣装の色を合わせましょうね!」

 ああっ!誰か止めて!?
 俺の仮面舞踏会参加はほぼ決定してしまった。









 サノビィスは小さなノルゼの相手をしながら苦笑する。
 大人は楽しそうだ。
 サノビィスは幼いながらもボブノーラ公爵家当主だ。ここには仕事の話で来たのだけど、皆んな楽しそうなのでノルゼの相手をして今日はすごそう。

 ルキルエル王太子殿下にもファバーリア侯爵にもサノビィスは頭が上がらない。この二人が後ろ盾になり今は経営をバックアップしてくれるおかげでなんとかなっている。
 ファバーリア侯爵家にはどんな些細なことでも手を貸すつもりなので、ノルゼの子守だって喜んでやろうと思っている。

「さぁーの。」
 
 ノルゼには覚えてもらっているようで、サァノと呼ばれるようになった。
 流石にサノビィスは言いにくいらしく、小さな口と回らない舌で一生懸命名前を呼ぼうとしてくれる。
 燻んだ金髪と水色の瞳はファバーリア侯爵と全く違う色だ。
 サノビィスは詳しい話を聞いていないが、ノルゼは侯爵の実子として届けられたらしい。顔は侯爵夫人に似ているので、髪と瞳の色は先祖返りということにしたのだろう。
 別にそれでいいと思う。
 サノビィスだって生粋の貴族ではないのだ。元孤児で、どこの生まれかもわからない人間だ。

「うん、どうしたの?」

「んっ、んっ!」

 手を広げて抱っこポーズをした。笑って抱っこすると甘い匂いがする。
 サノビィスは孤児院から引き取られ養子になった子供だけど、早くに引き取られた為、孤児院のことは殆ど覚えていない。
 でも小さな子供がいっぱいいた気がする。
 だからかノルゼの匂いは懐かしかった。

「もし、ノルゼに困ったことがあったら、僕が助けてあげるからね。」

 大人達はファバーリア侯爵と侯爵夫人の仲を深めようと楽しげに笑っている。
 その結果として、本当の公爵夫妻の子供が産まれてくるだろう。きっとその子はファバーリア侯爵にそっくりなのではないだろうか。
 その時ノルゼはどう思うだろう?
 
 抱っこしたノルゼの頭をナデナデと撫でる。
 少し吊り目気味の水色の目が、侯爵夫人そっくりにふにゃりと笑った。

「ふふ。」

 思わずサノビィスも笑ってしまう。
 ノルゼが手のひらをサノビィスに見せてきた。
 どうしたのだろうと覗き込むと、小さな手のひらの中に小さな花が現れる。
 なんで花が………。
 小さな花はフワフワと浮かび、風に流されて飛んでいった。

「…………君のスキルは可愛いね。」

 そろそろノルゼのスキルを調べに行くと言っていたけど、何となく可愛らしいスキルではないかと思ってしまう。

 戦うことも利用されることもない、人を喜ばせるスキルであって欲しいと思いながら、小さな手のひらを優しく握った。









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