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第2章 菜由美について
東日本大震災がきっかけで
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菜由美には持病があった。
結婚後、しばらくはアパートに住んでいたが、長男が1歳の頃に、菜由美の夫、北口雅史の実家に2世帯住宅を建て、雅史の両親と住むことになった。
その頃から、菜由美にとっては義理の両親からいろいろ言われることがあり、かなりのストレスを抱えていた。加えて、育児によるストレスもあった。そんな数々のストレスが原因で、心の病を患ってしまったのだ。いろいろ検索して、たどり着いたのは、パニック障害という病気だった。おそらく、菜由美の症状はこれに近い。
しかし、精神科や心療内科へ行くのはためらわれた。
症状が出やすい場面は限定的で、それ以外は普通であること、何より、そのあとに次男や三男の妊娠、出産、授乳とあったため、投薬治療はできないこと。
したがって、サプリメントなどで、調節してきた。
そのサプリメントが劇的な効果を示すわけではなかったのだが、悪くなるでもなかったので、しばらく続けてきた。
時は進み、2011年3月11日、東北を中心に日本中を恐怖に陥れた、未曾有の大災害、そう、東日本大震災。
菜由美の住んでいた地域も、大きな揺れがあり、義父が「大丈夫か?」と心配してきたり、ちょうどスイミングスクールに行っていた次男のことが心配だったり。。
菜由美は、心臓バクバクが止まらず、テレビで流れてくる津波の映像を祈るように見ていた。
「大丈夫だよー」
と何の根拠もなく、小学4年の長男が、母菜由美の手をぎゅっと握り、それが何の根拠もないけれど、菜由美にとって少しの安心になった。
その年の4月、次男は小学校に入学し、三男は幼稚園に入園。
新しい生活の門出とともに、菜由美のパニック障害は悪化していた。
家でリラックスしているときも、喉元から心臓が出てきそうな動悸に襲われ、度重なるその症状により、首や肩が凝り、しばらく整形外科に通うこともあった。また、循環器内科で心電図をとってもらったりすることも。しかし心臓は全く異常なし。
そして、とうとう、心療内科への受診を決意。その年の6月から、わりと開業したばかりの心療内科へ通うこととなった。
悪化のきっかけは、東日本大震災だったけれど、原因はおそらく、義両親との同居。でも、投薬治療を行うことで、少しでも症状がマシになってくれたら、と菜由美は考えていた。
主治医に言われたとおり服薬し、だんだんと発作の回数も減ってきた。幸い、主治医が処方した薬による副作用は、全くと言っていいほどなかった。
三男の通う幼稚園では、読み聞かせや合唱に参加して、幼稚園の数々の行事で舞台に立つなど精力的に活躍した。菜由美本来の出たがりな性格を遺憾なく発揮した。幼稚園の文化祭的な行事では、読み聞かせのお母さんたちによるペープサートや影絵といった劇を行い、そこで、効果音の打楽器を入れたり、ピアノを弾いたりした。
また、長男と次男の通う小学校でも、読み聞かせや器楽合奏の指導をするボランティアに参加して、とくに、長男の学年では、5年次に『ベト7』こと、ベートーヴェン作曲の交響曲第7番より抜粋、6年次に『ジュピター』こと、ホルスト作曲の組曲「惑星」より『木星』の合奏指導に貢献した。菜由美の長男は、5,6年次とも、ティンパニを担当。学校で指導しきれないため、菜由美に丸投げされたのだ。まあ、長男も好きでティンパニを希望したのだけど。
そんなわけで、菜由美は、子育てを思いきり楽しんでいた。
逆に、家にいると鬱々としやすいので、わざと外に出て、発散しているようにも見えた。
結婚後、しばらくはアパートに住んでいたが、長男が1歳の頃に、菜由美の夫、北口雅史の実家に2世帯住宅を建て、雅史の両親と住むことになった。
その頃から、菜由美にとっては義理の両親からいろいろ言われることがあり、かなりのストレスを抱えていた。加えて、育児によるストレスもあった。そんな数々のストレスが原因で、心の病を患ってしまったのだ。いろいろ検索して、たどり着いたのは、パニック障害という病気だった。おそらく、菜由美の症状はこれに近い。
しかし、精神科や心療内科へ行くのはためらわれた。
症状が出やすい場面は限定的で、それ以外は普通であること、何より、そのあとに次男や三男の妊娠、出産、授乳とあったため、投薬治療はできないこと。
したがって、サプリメントなどで、調節してきた。
そのサプリメントが劇的な効果を示すわけではなかったのだが、悪くなるでもなかったので、しばらく続けてきた。
時は進み、2011年3月11日、東北を中心に日本中を恐怖に陥れた、未曾有の大災害、そう、東日本大震災。
菜由美の住んでいた地域も、大きな揺れがあり、義父が「大丈夫か?」と心配してきたり、ちょうどスイミングスクールに行っていた次男のことが心配だったり。。
菜由美は、心臓バクバクが止まらず、テレビで流れてくる津波の映像を祈るように見ていた。
「大丈夫だよー」
と何の根拠もなく、小学4年の長男が、母菜由美の手をぎゅっと握り、それが何の根拠もないけれど、菜由美にとって少しの安心になった。
その年の4月、次男は小学校に入学し、三男は幼稚園に入園。
新しい生活の門出とともに、菜由美のパニック障害は悪化していた。
家でリラックスしているときも、喉元から心臓が出てきそうな動悸に襲われ、度重なるその症状により、首や肩が凝り、しばらく整形外科に通うこともあった。また、循環器内科で心電図をとってもらったりすることも。しかし心臓は全く異常なし。
そして、とうとう、心療内科への受診を決意。その年の6月から、わりと開業したばかりの心療内科へ通うこととなった。
悪化のきっかけは、東日本大震災だったけれど、原因はおそらく、義両親との同居。でも、投薬治療を行うことで、少しでも症状がマシになってくれたら、と菜由美は考えていた。
主治医に言われたとおり服薬し、だんだんと発作の回数も減ってきた。幸い、主治医が処方した薬による副作用は、全くと言っていいほどなかった。
三男の通う幼稚園では、読み聞かせや合唱に参加して、幼稚園の数々の行事で舞台に立つなど精力的に活躍した。菜由美本来の出たがりな性格を遺憾なく発揮した。幼稚園の文化祭的な行事では、読み聞かせのお母さんたちによるペープサートや影絵といった劇を行い、そこで、効果音の打楽器を入れたり、ピアノを弾いたりした。
また、長男と次男の通う小学校でも、読み聞かせや器楽合奏の指導をするボランティアに参加して、とくに、長男の学年では、5年次に『ベト7』こと、ベートーヴェン作曲の交響曲第7番より抜粋、6年次に『ジュピター』こと、ホルスト作曲の組曲「惑星」より『木星』の合奏指導に貢献した。菜由美の長男は、5,6年次とも、ティンパニを担当。学校で指導しきれないため、菜由美に丸投げされたのだ。まあ、長男も好きでティンパニを希望したのだけど。
そんなわけで、菜由美は、子育てを思いきり楽しんでいた。
逆に、家にいると鬱々としやすいので、わざと外に出て、発散しているようにも見えた。
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