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第1章 奏でる二人
アンサンブル・アリオーソとの出会い
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山内美加と北口菜由美は、長い付き合いになる。
遡ること、1994年。菜由美は、教員1年目で、吹奏楽部の副顧問。美加は、そのときの吹奏楽部員で打楽器担当。
「ドラム上手いね」
って、菜由美が美加に声をかけたのがきっかけで、二人は、美加が在学中から、親しい間柄になっていた。
いや、時には衝突することもあったかもしれない。
美加の恋愛に菜由美が振り回されることもあったし、菜由美の恋愛に美加が振り回されることもあったし、お互いに語り合うこともあった。
あれから、20年以上が経った2016年。
美加は、菜由美の昔の恋人だった人と婚姻関係にあったが、彼の浮気が原因で離婚し、2男児のシングルマザー。
菜由美は、結婚して3男児の母。
お互い、子供が成長して、そろそろ好きなことをしたいと思っていた。
二人の原点は、やはり「音楽」。とくに「吹奏楽」。
「ねぇ、どこかいい吹奏楽団ない?」
「ここは?若い人多いからガチ勢なんじゃ?」
「ガチでは出来ないよ。ブランクあるし。」
「私もだよ。毎週練習とか無理。」
「ここは?」
「隔週土曜日だって。どう?」
「隔週なら、ゆるくていいんじゃない?」
二人は、市民吹奏楽団を探していた。
お互い、そろそろどこかで楽器をやりたいと思っていたのだ。
その隔週でやってる楽団にメールして、二人で体験に出かけたのが、2016年夏のことだった。
とある商店街の一角にある古びた建物の2階がスタジオになっていて、そこで練習を行なっている。
二人とも打楽器ということで、大歓迎だった。なぜなら、現在、打楽器の団員がいないというのだ。
菜由美は、以前、美加の母校に勤めていた頃、今は無き、別の市民吹奏楽団に入っていた。そのとき一緒だったメンバーが何人かいて、驚きの連発だった。
トロンボーンの望月進一もその一人だ。菜由美の元彼だったことは、ここではさらっと流しておく。
「ご家庭の都合は大丈夫なの?」
進一は、菜由美にそう声をかけてきた。そう、前の楽団は、菜由美が第一子を授かったことにより退団したのだが、それがきっかけで、潰れてしまったのだ。
菜由美の存在って、一体。。
まあ、もう、16年も前の話です。
「もう。大丈夫です。下の子も小学生なので。」
と、お互い歳はとっていても、なんだかあの頃のまま。
いざ、合奏となると、「ブランク」の4文字が二人に覆いかぶさった。
「あと2小節‥あ、ここ!」
「え?え?」
秋にイベントがあり、その曲をいきなり初見で合奏参加。無謀にも程がある。
また、翌年2月に定期演奏会も予定されていて、その曲も少し練習した。
『たなばた』『3つのジャポニスム』など。コレ、打楽器いない状態でやろうとしてたの?
練習後に、この楽団の音楽監督の望月俊和と話をする二人。
「打楽器はね、一人は先生呼んで、あとドラムに松田くんを呼んで、あとは、うちの若い子たちに練習させて出させてる。鍵盤とか。」
うちの若い子たち、というのは、俊和が運営している、音楽教室型の吹奏楽団「Ka's」の打楽器メンバーのこと。あ、読み方は「カズ」です。「カス」ではありません、怒られますよ~。
でも、打楽器いなくて、そんなんで、あんな大曲何曲もやるとか、無謀にもほどがある。(2回目)
しかも、びっくりしたのは、このスタジオにある打楽器は、すべて「Ka's」の所有楽器であること。つまり、「アンサンブル・アリオーソ」としては、打楽器は一つも所有してないのである。
何から何まで驚きと新鮮でいっぱいだったが、美加と菜由美は、何度か合奏練習を体験したのち、正式に入団することにした。
遡ること、1994年。菜由美は、教員1年目で、吹奏楽部の副顧問。美加は、そのときの吹奏楽部員で打楽器担当。
「ドラム上手いね」
って、菜由美が美加に声をかけたのがきっかけで、二人は、美加が在学中から、親しい間柄になっていた。
いや、時には衝突することもあったかもしれない。
美加の恋愛に菜由美が振り回されることもあったし、菜由美の恋愛に美加が振り回されることもあったし、お互いに語り合うこともあった。
あれから、20年以上が経った2016年。
美加は、菜由美の昔の恋人だった人と婚姻関係にあったが、彼の浮気が原因で離婚し、2男児のシングルマザー。
菜由美は、結婚して3男児の母。
お互い、子供が成長して、そろそろ好きなことをしたいと思っていた。
二人の原点は、やはり「音楽」。とくに「吹奏楽」。
「ねぇ、どこかいい吹奏楽団ない?」
「ここは?若い人多いからガチ勢なんじゃ?」
「ガチでは出来ないよ。ブランクあるし。」
「私もだよ。毎週練習とか無理。」
「ここは?」
「隔週土曜日だって。どう?」
「隔週なら、ゆるくていいんじゃない?」
二人は、市民吹奏楽団を探していた。
お互い、そろそろどこかで楽器をやりたいと思っていたのだ。
その隔週でやってる楽団にメールして、二人で体験に出かけたのが、2016年夏のことだった。
とある商店街の一角にある古びた建物の2階がスタジオになっていて、そこで練習を行なっている。
二人とも打楽器ということで、大歓迎だった。なぜなら、現在、打楽器の団員がいないというのだ。
菜由美は、以前、美加の母校に勤めていた頃、今は無き、別の市民吹奏楽団に入っていた。そのとき一緒だったメンバーが何人かいて、驚きの連発だった。
トロンボーンの望月進一もその一人だ。菜由美の元彼だったことは、ここではさらっと流しておく。
「ご家庭の都合は大丈夫なの?」
進一は、菜由美にそう声をかけてきた。そう、前の楽団は、菜由美が第一子を授かったことにより退団したのだが、それがきっかけで、潰れてしまったのだ。
菜由美の存在って、一体。。
まあ、もう、16年も前の話です。
「もう。大丈夫です。下の子も小学生なので。」
と、お互い歳はとっていても、なんだかあの頃のまま。
いざ、合奏となると、「ブランク」の4文字が二人に覆いかぶさった。
「あと2小節‥あ、ここ!」
「え?え?」
秋にイベントがあり、その曲をいきなり初見で合奏参加。無謀にも程がある。
また、翌年2月に定期演奏会も予定されていて、その曲も少し練習した。
『たなばた』『3つのジャポニスム』など。コレ、打楽器いない状態でやろうとしてたの?
練習後に、この楽団の音楽監督の望月俊和と話をする二人。
「打楽器はね、一人は先生呼んで、あとドラムに松田くんを呼んで、あとは、うちの若い子たちに練習させて出させてる。鍵盤とか。」
うちの若い子たち、というのは、俊和が運営している、音楽教室型の吹奏楽団「Ka's」の打楽器メンバーのこと。あ、読み方は「カズ」です。「カス」ではありません、怒られますよ~。
でも、打楽器いなくて、そんなんで、あんな大曲何曲もやるとか、無謀にもほどがある。(2回目)
しかも、びっくりしたのは、このスタジオにある打楽器は、すべて「Ka's」の所有楽器であること。つまり、「アンサンブル・アリオーソ」としては、打楽器は一つも所有してないのである。
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