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序章~水舟篇~
第1話「四九度目の目覚め」
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不意に訪れた目覚め。
遠い、いつかの夢を見ていた。
私は目を瞑り、ただ静かに一筋の涙をこぼす。
鮮やかな血が右眼に滴り、激痛が全身を覆うと、私はようやく我が身の所在を知った。
脳裏に焼き付く声とともに、湧き上がる憎悪が胸を焦がす。
それは感情ではなく機能のようなもので。
ある鬼を憎み傀となったこの身は、心臓が脈を打つように、呼吸を止められないように、己が身に宿した定めからは逃れられない。
幾度も人の身を切り捨てたとて、曲げられないモノがあった。
その是非は今の「私」には、おそらくわからない。
ただ、望む結末にはたどり着けないと、人の身であった頃に気づけなかっただけだ。
だから願わくは、この道の行き先で答えが見つかりますように。
揺らいで滲む道の果てを眺めながら、「私」は長い旅路の供に双刀を携え、再び歩き始めた。
そうして歳月は流れ、四九度目の目覚めを迎える。
時は文久3年。
西暦にして1863年となっていた。
始まりからずいぶん遠く離れ、原初の想いはおぼろげに揺らめいている。
変わらないものなどどこにもないけれど、いつかの想いは今なおここに。
「あと5年、か。」
「私」はなまじり強く、前を見据えた。
救うも、殺すも、その最後のけじめは自らの手でくだすために。
二人が再び出会うのは、もう少しだけ後の話———
***
「私と、家族にならないか。」
男はそう言って僕の右手を両手で握った。
遠い雨の夜、冷えた病床で深い眠りから目を覚ました僕にかけてくれた、とても暖かい言葉だった。
十五の頃、人斬りに遭い生死を彷徨った僕は、蘭方医である男の治療で蘇り、彼の好意で身寄りのない僕をこの村で引き取ったのだと、そう聞かされていた。
けれど僕は、たぶんその事実は半ば真実ではないのだろうと思っていた。
なぜなら僕は、左手から上半身を覆うように巻かれた奇妙な柄の包帯や盲滅した右目など、疑問を持つには十分なほどに不可解な身体つきをしていた。それに、十五までの記憶はなく、両親の顔や名前、兄弟がいたのかさえ何一つ思い出せないほど、僕は「僕」という存在を証明するものを何も持ち合わせていなかった。
――それでも、僕は今まで「僕」を知ろうとはしなかった。
それは、僕にとってはこの男が、この村での生活が全てだったからだ。遠い雨の夜、僕は彼の手によって命を救われた。だから、この村での穏やかな日々を、男のその笑顔を、たった一片の問いが壊してしまうのではないかという不安もあった。
いつもどこかけだる気で、それでいて温かな微笑みを向ける男の瞳から光が消え、僕の目に映るのは、凍てついた、まるで人ではないモノを見るような哀れ気な視線だけ。そうして浮かべる想像は、僕にとって耐え難いほどに辛いものであった。
けれどもう一つ。
僕はこの真実と、不気味な身体の正体と向き合う「覚悟」というものがなく、自信がなかったのだと思う。だからこそ、見知らぬふりをして波風を立てず、張り付いた笑顔の奥に感情を潜ませておく方が都合がよかったのだ。
だが、今でも時折思い出すことがある。
『――はずっとそばにいるからね』
名も顔も思い出せぬ「あなた」を。
こうした夢想も、すぐさま首を横に振ってかき消していく。何をバカな。記憶がなく、身寄りのない僕だからこそ男はそばにいてくれたのだ。そうでなければ、きっと手を差し伸べてはくれなかっただろう。だから、このままでいいんだ。過去を思い出せなくても、こんな体つきでも、男とこの村で穏やかに暮らせるなら、それで僕は十分幸せな人間なんだ。
成年には、このまま穏やかな生活が続くのであれば「過去の自分を知りたい」という自分の願いでさえ、どうでもよいと思えてしまう。
「――これでいいんだ」
自分に言い聞かせるように放った言葉は、やり場のなくし心中へと重くのしかかってくる。
しかしその重圧が、成年にとって《今を生きること》への実感、存在の証明になっていた。
考えに疲れ、畳の上に寝転がる。しばらくそうして時間を過ごしていると、がらりと部屋の戸が開いた。
「志、ちっと頼まれてくれんか」
***
秋風の香る夏の夜
――薬草を摘みに祈雨(キウ)の森へと行った、その帰り道のことだった。夏から秋へと変わる晩夏の街道は、時に神秘さえ醸し出すほどに見事である。程よく冷えた夜風が成年の頬を逆なでし、心なしか空が重くなったように思えた。
成年の名は志(ユキ)という。
年は二十ほどになるが、五尺二寸の小柄で、左胸から右脇腹にかけて大きな傷跡のある細身の体であった。
腰には二尺三寸ほどの刀を差し、右眼は人斬りに遭った際に斬られたのか、その眼に光を通すことはなかった。
ポツ、ポツ――
不意に雨が降り出してきた。傘もなくて、ずぶ濡れになりながら暗くて先の見えぬ夜道をかける。
だが、ほんの少しの不注意だった。
屋敷に向かう途中、階段をあと三歩というところで足を滑らせ、僕は地面まで転がり落ちていった。
***
地面にぶつかっても、予想に反して衝撃は感じなかった。
けれどふいに、むせかえるような花の香りとともに誰かの手が額に触れる感触がして、僕は一気に目を覚ました。目を開けようと試みたが、目覚めていることが気づかれぬように、眠っている状態のまま、あたりの気配を全身でさぐった。転落の衝撃でケガの一つでもしているかと思ったが、不思議と体の痛みはなかった。
ひんやりとした土の匂いと、カサコソと揺れる草葉の音。
触れるほどの距離に人がいたはずなのに、気配はまるでなかった。
(…ここは…夢…なんだろうか…僕は死んだのか)
志はゆっくりと全身の力を抜き、そっと目を開いていく。すると、自分が薄青い闇の中で横たわっていることに気がついた。
やがて暗さに目も慣れ、むくりと体を起こし再び左右に頭を巡らすと、薄闇の中にぼんやりと人影が見えた。
『やっと目覚めたね』
不意に呼びかけられたかと思うと、いつの間にかそこは月明かりが揺れる湖の前へと姿を変え、奇妙な仮面を被った男が腰掛けていた。
「あの…ここはどこかご存知でしょうか」
男はゆるりと笑う。
微かに見える姿から、細身で小柄な出で立ちの少年であろう。
『ここは、人の世でいうところの“あの世”というやつだ』
〈あの世〉――
それは、死した者が行くとされる世界。
であるならば僕はやはり、あの時死んだのか――。
少年は、まるでこちらの考えなど見通しているかのような、得意げな笑みを浮かべてみせた。
『ああ、すまない。君があまりにわかりやすくて』
「…あの、あなたは?」
『いやはや。忘れられるとは、存外寂しいものだね』
意外な返答であった。少年の口ぶりからして、僕は彼と面識があるということになるではないか。
志は少し動揺しながらも、どうにかこうにか言葉を絞り出していく。
「…すまないが、私にはあなたのような知り合いは…」
そよ風に揺られてこぼれ桜がひらひらと舞散り、湖面の青白い月影が微かにおどった。そして、風に運ばれてするりと鼻腔を抜ける少年の香りに僕は、ほんの少しだけ、胸の苦しさと切なさと、“懐かしさ”を感じた。それは、先ほどまでの花の香とは違う、甘美ともいえる《死の匂い》であった。
僕は束の間目を閉じると、ふと耳の奥底から“ある声”がこだました。
『――はそばにいるからね』
…今でも時折思い出す。
顔も名前も分らぬ「あなた」。
(もしかしたら、失ってしまった記憶の中に、あなたはいたのかもしれない)
『君は案外、冷静だね。ほら、周りをよく見てみなよ』
目を覚ました時、確かに僕は薄青い暗闇の中にいた。それに、先ほどまでぼんやりとしか見えなかった少年の姿が、今ははっきりと目視できている。
「ここはなにか、変じゃないか…」
空にかかる月は、確かに三日月だ。けれど、湖面に映る月影は、月の光で映っているにしてはあまりにも鮮明で、しかもかなり膨らみを帯びた満月に近い紅月だった。
それに気がついた志は、静かに深く息を吸い、再び目を閉じた。
――懐かしい彼岸花の香、僕を知る少年、そして変化する世界。
(どうやらこの世界は、ゆがみを帯びた幻想のようなもので、あの少年とかなり細部にまで結びついているらしい)
自分でも甚だ信じがたいが、この不可思議な状況を何よりも正確に示すならば、それはやはり、《精神世界》といったたぐいものではなかろうか。
そうして僕は、目を開け少年を見つめる。すると、今まで眠らせていた何かが、むくりと上体を起こすような、そんな感覚に襲われた。
――もしも、この見当が間違っていないのであれば、僕には問わねばならないことがある。
「君は、私が知らぬ私を知っているかい?」
自分でも、正直意味が分からない問いだとはわかっている。それでも――。
途端、「僕」が見せていた幻は消え去り、古びた祠の前へと変わった。
『ああ。もちろん。ずっと君のそばにいたからね』
月明かりに照らされた少年の表情はとても穏やかで、安堵したような面持ちのように見えた。
そうか。
今、僕の目の前にいるのは、分かれ道の後ろに捨ててきてしまった自分自身であった。
ずっと知らぬふりをし続けた自分。抗い続けた自分。向き合うことを恐れた自分。
「僕」は、こうしてこの暗闇の中で、気づかれぬまま一人ぼっちだったんだ。
もしも、突然闇の中に一人放りこまれたとしたら、その張り付いた仮面(えがお)の奥で、「僕」は何を思っただろうか。
生きる道を閉ざされて、もうこれ以上進めないというのに、目の前に見えるのはそれでもまだ生きているという絶望と渇望の齟齬――死の誘惑と生への先導。
そうして「僕」の心はゆがみ、正しい笑い方さえも忘れて、死と生の狭間でどちらにも行けない哀しみを抱えながらもなお、矛盾した選択を繰り返し、來るやもしれぬ僕(かのうせい)を待ち続けてくれていた。道を繋いでいてくれていた。
――暗闇む世界で、たった一つの光を求めて。
***
「僕」は僕に向かい合って腰を下ろし、静かに語り始めた。
『僕は十五の時に殺される前の僕。僕はある凶夷(マガツイ)に殺されたんだ』
凶夷とは、人ならざる異形の存在のことだと、以前男から聞いたことがある。
東西南北に敷かれた四封門で護られた都とは違い、領域外の地域では今でも見かけることがあり、度々人里が襲われていた。
『でも僕は、生かされたんだ。傀ものとなって』
「くぐつもの…?」
志は、聞きなれない言葉に思わず眉をひそめた。
『君に一つ、昔話をしよう』
『この日ノ本には、昼の力を持つ人間のほかに、夜の力を持つ者たちがいたんだ。人間はその者たちを鬼と呼び、互いに協力し合って暮らしていた。時が経ち、やがて人の世を治めていた巫女に恋をする鬼王が現れた。鬼の名を――という。けれど、人である巫女の寿命は、鬼王にとってはほんのまばたきをする程度の時で、それを心から憐れんだ鬼王は巫女に、“ある力”を預けた。』
『人ノ身ナリテ、鬼ナル道ヲ歩マントスル者、ソレ即チ傀ナリ』
『人の肉体を持ちながら、心臓の代わりに結界魂っていう仮受けた魂で生き続ける者、つまりね、彼は彼女に永遠の命を授けることで生きた屍を作ったんだよ』
「生きた屍…それが…くぐつもの」
「僕」から聞いた話は、驚くほど理解しかねるものばかりで、正直今でも状況を呑み込めてはいない。まだ何も理解はできていないけれど、一つだけわかったことがある。
それは、僕がその傀ものであるならば、当たり前に息をして、飯を食べ、鍛錬をしたこの体も、誰かに生かされてここにあるものだと。
僕は僕の想像を遥かに超えて、たくさんの《繋がり》に支えられながら生きていたのだと。
『志、君は真実を知らなければならない』
***
僕はいつか、僕の全てを知ることになるだろう。そして、僕は自分の運命を心底恨むかもしれない。それでも、今ここで前に進まねばならないと思った。
『僕は、光を見つけることができるかな』
「必ず見つけるよ。僕がいつか、これでよかったのだと心から思えるように」
『そっか。それならよかった。』
「僕」はふと、身に着けていた仮面を外した。
そして笑った。今度はまっすぐに。
(僕はこんなにも温かな笑顔ができたんだな。)
「泣くなって」
『泣いてないよ、悲しくないのに涙が出るんだ』
『こういうの、“嬉しい”っていうのかな』
「僕」の心がじんじんと伝わってくる。
思わず僕は、「僕」の左手を両手でぎゅっと握った。
僕は初めて「僕」を知りたいと思った。暗闇で怯える「僕」に、光を与えたいと思った。
そして、自分自身の運命と向き合いたいと思った。
「僕」は右手の腹で涙をぬぐい、僕の目を見つめ直す。
『僕は君に必ず会えると信じてよかった。さあ、君は間もなく目覚めるよ』
「えっ…まって」
(まだ聞きたいことがあるんだ…!)
『大丈夫。僕は僕だから。最後に忘れないでいて。僕はずっと孤独だったけど、決して一人じゃなかったよ』
目の前が再び闇に包まれ、振り向くと少年は空に消えていた。
そして、気がつけばそこは男と過ごすあの家だった。
***
乾いた手が頬に触れ、志は目を覚ました。
「まだ意識は戻らないのかい?」
「あぁ。ケガもひどいし、今は弱っているけれど、死ぬほどじゃあないよ」
ワーン、ワーンと、耳元で音が小玉し上手く聞き取れなかったが、男の声だ、と志は思った。
すると、意識が徐々に鮮明となり、全身の感覚が一気に走って、思わずうめき声を上げた。
「゛うぅアッ!!!!」
痛いというよりは、全身が鉛のように固く、とても起き上がれる状態ではなかった。
「志!?気がついたかい?」
声は聞こえるが、返事ができない。
「うめいてるけど、大丈夫なの?」
「問題ないさ。体が痛くてきついんだろう。姉さん、お前らしくないな。そんなに心配な顔をするんじゃあないよ」
「そりゃ心配するさ。あんたこそ、なにか痛みを取ってあげるような薬はないのかね?」
お初さんのハツラツとした声が響く。
「今用意しているよ。目を覚ましたから、飲ませてみようか。姉さん、志を起こしてあげてくれんか」
お初さんの手だけでなく、がっしりとした誰かの手が触れ、ゆっくりと上体を起こしてくれた。
そっと起こしてくれたけれど、それでも途端にひどいめまいが襲ってきた。
徐々にぐるぐると回っていた視界が収まってきて、ようやくはっきり目が見えるようになった。
「志、薬を飲むんだ。むせないように、ゆっくり水を飲むんだよ」
薬の苦味がじわじわと口の中に広がっていく。
志は薬を飲み終えると、再び深い眠りへと落ちていった。
次に目が覚めた時は、太陽が西の方角へと沈む、夕暮れ時であった。格子越しから入ったそよ風が、志の頬をそっと撫でた。
「気分はどうだい?」
男の声が聞こえた。
「薬が効いたみたい」
志はそう答えると、今度ははっきり男の顔を見た。毎日のように見ているはずなのに、変わらぬその顔に不思議と安堵の笑みがこぼれた。
「そうかい」
居心地の良い、のどかな低音の声。男も思わず微笑んだ。
「志、ケガは大丈夫…?」
これはお初さんの声だ。それと、隣にいるのは夫の千春さんだとすぐに分かった。
「…はい」
志はくやしいほど小さな声しか出せなかった。
けれど日々の家事で鍛錬された固い指先が、優しい仕草で志の髪をそっと撫でてくれた。
「そう、よかったわ。もう丸三日も起きないから心配になるじゃない。もう少し元気になったら、またいつでも遊びにおいで。とりあえず、今は精のつくものをよく食べて、よく寝ときなさいね」
志はこくりとうなずき、この小さな幸せにあふれんばかりの感謝の気持ちを感じていた。
(…ありがとう)
***
志は再び目を閉じ考えた。
とても不思議な、長い一夜を過ごしたこと。
人に命を借り、死してもこうして生きている傀ものだった自分は、記憶を失う前の自分と出会った。今こうして、また人の世で生きていけるのは、偶然なのか、必然なのか―――。
果てのない問いは、手を伸ばしても、空に浮かぶ雲をつかむようなもので、その指の先には答えなどない。そこにあるのは、これから待ち受ける遥かなる道がただ広がっているだけだ。
志は心の中に、とても大きななにかを感じた。
それは、運命と似ているが、少し異なるもので、けれどほかの誰でもなく、自分だからこそ巡って来たような気がした。
生と死は、ともにふれあいながら、脈々と生命を巡っている。僕は、生と死の狭間に取り残された哀しき者かもしれない。けれど、壮大な巡りの中の小さな結び目として、自分という存在がいるのではないかとも思った。
それは、「僕」が、男が、そして「あなた」が命を繋いでくれたように。
もしもひとりで生きていたならば、きっとこんな気持ちにはならなかっただろう。理不尽な運命もあっけなく許せたかもしれないし、もしかしたら孤独という不安に押しつぶされていたかもしれない。けれど、僕はひとりで生きていないから、こんな運命もまるまま飲み込んで、真っ直ぐに向き合おうと思えた。
思い浮かぶ「あなた」と記憶と、ともに笑い合える人々のために。
僕はこだわって生きていく。
―――再び訪れるかもしれぬ最期の日まで、それだけは譲らずに。
遠い、いつかの夢を見ていた。
私は目を瞑り、ただ静かに一筋の涙をこぼす。
鮮やかな血が右眼に滴り、激痛が全身を覆うと、私はようやく我が身の所在を知った。
脳裏に焼き付く声とともに、湧き上がる憎悪が胸を焦がす。
それは感情ではなく機能のようなもので。
ある鬼を憎み傀となったこの身は、心臓が脈を打つように、呼吸を止められないように、己が身に宿した定めからは逃れられない。
幾度も人の身を切り捨てたとて、曲げられないモノがあった。
その是非は今の「私」には、おそらくわからない。
ただ、望む結末にはたどり着けないと、人の身であった頃に気づけなかっただけだ。
だから願わくは、この道の行き先で答えが見つかりますように。
揺らいで滲む道の果てを眺めながら、「私」は長い旅路の供に双刀を携え、再び歩き始めた。
そうして歳月は流れ、四九度目の目覚めを迎える。
時は文久3年。
西暦にして1863年となっていた。
始まりからずいぶん遠く離れ、原初の想いはおぼろげに揺らめいている。
変わらないものなどどこにもないけれど、いつかの想いは今なおここに。
「あと5年、か。」
「私」はなまじり強く、前を見据えた。
救うも、殺すも、その最後のけじめは自らの手でくだすために。
二人が再び出会うのは、もう少しだけ後の話———
***
「私と、家族にならないか。」
男はそう言って僕の右手を両手で握った。
遠い雨の夜、冷えた病床で深い眠りから目を覚ました僕にかけてくれた、とても暖かい言葉だった。
十五の頃、人斬りに遭い生死を彷徨った僕は、蘭方医である男の治療で蘇り、彼の好意で身寄りのない僕をこの村で引き取ったのだと、そう聞かされていた。
けれど僕は、たぶんその事実は半ば真実ではないのだろうと思っていた。
なぜなら僕は、左手から上半身を覆うように巻かれた奇妙な柄の包帯や盲滅した右目など、疑問を持つには十分なほどに不可解な身体つきをしていた。それに、十五までの記憶はなく、両親の顔や名前、兄弟がいたのかさえ何一つ思い出せないほど、僕は「僕」という存在を証明するものを何も持ち合わせていなかった。
――それでも、僕は今まで「僕」を知ろうとはしなかった。
それは、僕にとってはこの男が、この村での生活が全てだったからだ。遠い雨の夜、僕は彼の手によって命を救われた。だから、この村での穏やかな日々を、男のその笑顔を、たった一片の問いが壊してしまうのではないかという不安もあった。
いつもどこかけだる気で、それでいて温かな微笑みを向ける男の瞳から光が消え、僕の目に映るのは、凍てついた、まるで人ではないモノを見るような哀れ気な視線だけ。そうして浮かべる想像は、僕にとって耐え難いほどに辛いものであった。
けれどもう一つ。
僕はこの真実と、不気味な身体の正体と向き合う「覚悟」というものがなく、自信がなかったのだと思う。だからこそ、見知らぬふりをして波風を立てず、張り付いた笑顔の奥に感情を潜ませておく方が都合がよかったのだ。
だが、今でも時折思い出すことがある。
『――はずっとそばにいるからね』
名も顔も思い出せぬ「あなた」を。
こうした夢想も、すぐさま首を横に振ってかき消していく。何をバカな。記憶がなく、身寄りのない僕だからこそ男はそばにいてくれたのだ。そうでなければ、きっと手を差し伸べてはくれなかっただろう。だから、このままでいいんだ。過去を思い出せなくても、こんな体つきでも、男とこの村で穏やかに暮らせるなら、それで僕は十分幸せな人間なんだ。
成年には、このまま穏やかな生活が続くのであれば「過去の自分を知りたい」という自分の願いでさえ、どうでもよいと思えてしまう。
「――これでいいんだ」
自分に言い聞かせるように放った言葉は、やり場のなくし心中へと重くのしかかってくる。
しかしその重圧が、成年にとって《今を生きること》への実感、存在の証明になっていた。
考えに疲れ、畳の上に寝転がる。しばらくそうして時間を過ごしていると、がらりと部屋の戸が開いた。
「志、ちっと頼まれてくれんか」
***
秋風の香る夏の夜
――薬草を摘みに祈雨(キウ)の森へと行った、その帰り道のことだった。夏から秋へと変わる晩夏の街道は、時に神秘さえ醸し出すほどに見事である。程よく冷えた夜風が成年の頬を逆なでし、心なしか空が重くなったように思えた。
成年の名は志(ユキ)という。
年は二十ほどになるが、五尺二寸の小柄で、左胸から右脇腹にかけて大きな傷跡のある細身の体であった。
腰には二尺三寸ほどの刀を差し、右眼は人斬りに遭った際に斬られたのか、その眼に光を通すことはなかった。
ポツ、ポツ――
不意に雨が降り出してきた。傘もなくて、ずぶ濡れになりながら暗くて先の見えぬ夜道をかける。
だが、ほんの少しの不注意だった。
屋敷に向かう途中、階段をあと三歩というところで足を滑らせ、僕は地面まで転がり落ちていった。
***
地面にぶつかっても、予想に反して衝撃は感じなかった。
けれどふいに、むせかえるような花の香りとともに誰かの手が額に触れる感触がして、僕は一気に目を覚ました。目を開けようと試みたが、目覚めていることが気づかれぬように、眠っている状態のまま、あたりの気配を全身でさぐった。転落の衝撃でケガの一つでもしているかと思ったが、不思議と体の痛みはなかった。
ひんやりとした土の匂いと、カサコソと揺れる草葉の音。
触れるほどの距離に人がいたはずなのに、気配はまるでなかった。
(…ここは…夢…なんだろうか…僕は死んだのか)
志はゆっくりと全身の力を抜き、そっと目を開いていく。すると、自分が薄青い闇の中で横たわっていることに気がついた。
やがて暗さに目も慣れ、むくりと体を起こし再び左右に頭を巡らすと、薄闇の中にぼんやりと人影が見えた。
『やっと目覚めたね』
不意に呼びかけられたかと思うと、いつの間にかそこは月明かりが揺れる湖の前へと姿を変え、奇妙な仮面を被った男が腰掛けていた。
「あの…ここはどこかご存知でしょうか」
男はゆるりと笑う。
微かに見える姿から、細身で小柄な出で立ちの少年であろう。
『ここは、人の世でいうところの“あの世”というやつだ』
〈あの世〉――
それは、死した者が行くとされる世界。
であるならば僕はやはり、あの時死んだのか――。
少年は、まるでこちらの考えなど見通しているかのような、得意げな笑みを浮かべてみせた。
『ああ、すまない。君があまりにわかりやすくて』
「…あの、あなたは?」
『いやはや。忘れられるとは、存外寂しいものだね』
意外な返答であった。少年の口ぶりからして、僕は彼と面識があるということになるではないか。
志は少し動揺しながらも、どうにかこうにか言葉を絞り出していく。
「…すまないが、私にはあなたのような知り合いは…」
そよ風に揺られてこぼれ桜がひらひらと舞散り、湖面の青白い月影が微かにおどった。そして、風に運ばれてするりと鼻腔を抜ける少年の香りに僕は、ほんの少しだけ、胸の苦しさと切なさと、“懐かしさ”を感じた。それは、先ほどまでの花の香とは違う、甘美ともいえる《死の匂い》であった。
僕は束の間目を閉じると、ふと耳の奥底から“ある声”がこだました。
『――はそばにいるからね』
…今でも時折思い出す。
顔も名前も分らぬ「あなた」。
(もしかしたら、失ってしまった記憶の中に、あなたはいたのかもしれない)
『君は案外、冷静だね。ほら、周りをよく見てみなよ』
目を覚ました時、確かに僕は薄青い暗闇の中にいた。それに、先ほどまでぼんやりとしか見えなかった少年の姿が、今ははっきりと目視できている。
「ここはなにか、変じゃないか…」
空にかかる月は、確かに三日月だ。けれど、湖面に映る月影は、月の光で映っているにしてはあまりにも鮮明で、しかもかなり膨らみを帯びた満月に近い紅月だった。
それに気がついた志は、静かに深く息を吸い、再び目を閉じた。
――懐かしい彼岸花の香、僕を知る少年、そして変化する世界。
(どうやらこの世界は、ゆがみを帯びた幻想のようなもので、あの少年とかなり細部にまで結びついているらしい)
自分でも甚だ信じがたいが、この不可思議な状況を何よりも正確に示すならば、それはやはり、《精神世界》といったたぐいものではなかろうか。
そうして僕は、目を開け少年を見つめる。すると、今まで眠らせていた何かが、むくりと上体を起こすような、そんな感覚に襲われた。
――もしも、この見当が間違っていないのであれば、僕には問わねばならないことがある。
「君は、私が知らぬ私を知っているかい?」
自分でも、正直意味が分からない問いだとはわかっている。それでも――。
途端、「僕」が見せていた幻は消え去り、古びた祠の前へと変わった。
『ああ。もちろん。ずっと君のそばにいたからね』
月明かりに照らされた少年の表情はとても穏やかで、安堵したような面持ちのように見えた。
そうか。
今、僕の目の前にいるのは、分かれ道の後ろに捨ててきてしまった自分自身であった。
ずっと知らぬふりをし続けた自分。抗い続けた自分。向き合うことを恐れた自分。
「僕」は、こうしてこの暗闇の中で、気づかれぬまま一人ぼっちだったんだ。
もしも、突然闇の中に一人放りこまれたとしたら、その張り付いた仮面(えがお)の奥で、「僕」は何を思っただろうか。
生きる道を閉ざされて、もうこれ以上進めないというのに、目の前に見えるのはそれでもまだ生きているという絶望と渇望の齟齬――死の誘惑と生への先導。
そうして「僕」の心はゆがみ、正しい笑い方さえも忘れて、死と生の狭間でどちらにも行けない哀しみを抱えながらもなお、矛盾した選択を繰り返し、來るやもしれぬ僕(かのうせい)を待ち続けてくれていた。道を繋いでいてくれていた。
――暗闇む世界で、たった一つの光を求めて。
***
「僕」は僕に向かい合って腰を下ろし、静かに語り始めた。
『僕は十五の時に殺される前の僕。僕はある凶夷(マガツイ)に殺されたんだ』
凶夷とは、人ならざる異形の存在のことだと、以前男から聞いたことがある。
東西南北に敷かれた四封門で護られた都とは違い、領域外の地域では今でも見かけることがあり、度々人里が襲われていた。
『でも僕は、生かされたんだ。傀ものとなって』
「くぐつもの…?」
志は、聞きなれない言葉に思わず眉をひそめた。
『君に一つ、昔話をしよう』
『この日ノ本には、昼の力を持つ人間のほかに、夜の力を持つ者たちがいたんだ。人間はその者たちを鬼と呼び、互いに協力し合って暮らしていた。時が経ち、やがて人の世を治めていた巫女に恋をする鬼王が現れた。鬼の名を――という。けれど、人である巫女の寿命は、鬼王にとってはほんのまばたきをする程度の時で、それを心から憐れんだ鬼王は巫女に、“ある力”を預けた。』
『人ノ身ナリテ、鬼ナル道ヲ歩マントスル者、ソレ即チ傀ナリ』
『人の肉体を持ちながら、心臓の代わりに結界魂っていう仮受けた魂で生き続ける者、つまりね、彼は彼女に永遠の命を授けることで生きた屍を作ったんだよ』
「生きた屍…それが…くぐつもの」
「僕」から聞いた話は、驚くほど理解しかねるものばかりで、正直今でも状況を呑み込めてはいない。まだ何も理解はできていないけれど、一つだけわかったことがある。
それは、僕がその傀ものであるならば、当たり前に息をして、飯を食べ、鍛錬をしたこの体も、誰かに生かされてここにあるものだと。
僕は僕の想像を遥かに超えて、たくさんの《繋がり》に支えられながら生きていたのだと。
『志、君は真実を知らなければならない』
***
僕はいつか、僕の全てを知ることになるだろう。そして、僕は自分の運命を心底恨むかもしれない。それでも、今ここで前に進まねばならないと思った。
『僕は、光を見つけることができるかな』
「必ず見つけるよ。僕がいつか、これでよかったのだと心から思えるように」
『そっか。それならよかった。』
「僕」はふと、身に着けていた仮面を外した。
そして笑った。今度はまっすぐに。
(僕はこんなにも温かな笑顔ができたんだな。)
「泣くなって」
『泣いてないよ、悲しくないのに涙が出るんだ』
『こういうの、“嬉しい”っていうのかな』
「僕」の心がじんじんと伝わってくる。
思わず僕は、「僕」の左手を両手でぎゅっと握った。
僕は初めて「僕」を知りたいと思った。暗闇で怯える「僕」に、光を与えたいと思った。
そして、自分自身の運命と向き合いたいと思った。
「僕」は右手の腹で涙をぬぐい、僕の目を見つめ直す。
『僕は君に必ず会えると信じてよかった。さあ、君は間もなく目覚めるよ』
「えっ…まって」
(まだ聞きたいことがあるんだ…!)
『大丈夫。僕は僕だから。最後に忘れないでいて。僕はずっと孤独だったけど、決して一人じゃなかったよ』
目の前が再び闇に包まれ、振り向くと少年は空に消えていた。
そして、気がつけばそこは男と過ごすあの家だった。
***
乾いた手が頬に触れ、志は目を覚ました。
「まだ意識は戻らないのかい?」
「あぁ。ケガもひどいし、今は弱っているけれど、死ぬほどじゃあないよ」
ワーン、ワーンと、耳元で音が小玉し上手く聞き取れなかったが、男の声だ、と志は思った。
すると、意識が徐々に鮮明となり、全身の感覚が一気に走って、思わずうめき声を上げた。
「゛うぅアッ!!!!」
痛いというよりは、全身が鉛のように固く、とても起き上がれる状態ではなかった。
「志!?気がついたかい?」
声は聞こえるが、返事ができない。
「うめいてるけど、大丈夫なの?」
「問題ないさ。体が痛くてきついんだろう。姉さん、お前らしくないな。そんなに心配な顔をするんじゃあないよ」
「そりゃ心配するさ。あんたこそ、なにか痛みを取ってあげるような薬はないのかね?」
お初さんのハツラツとした声が響く。
「今用意しているよ。目を覚ましたから、飲ませてみようか。姉さん、志を起こしてあげてくれんか」
お初さんの手だけでなく、がっしりとした誰かの手が触れ、ゆっくりと上体を起こしてくれた。
そっと起こしてくれたけれど、それでも途端にひどいめまいが襲ってきた。
徐々にぐるぐると回っていた視界が収まってきて、ようやくはっきり目が見えるようになった。
「志、薬を飲むんだ。むせないように、ゆっくり水を飲むんだよ」
薬の苦味がじわじわと口の中に広がっていく。
志は薬を飲み終えると、再び深い眠りへと落ちていった。
次に目が覚めた時は、太陽が西の方角へと沈む、夕暮れ時であった。格子越しから入ったそよ風が、志の頬をそっと撫でた。
「気分はどうだい?」
男の声が聞こえた。
「薬が効いたみたい」
志はそう答えると、今度ははっきり男の顔を見た。毎日のように見ているはずなのに、変わらぬその顔に不思議と安堵の笑みがこぼれた。
「そうかい」
居心地の良い、のどかな低音の声。男も思わず微笑んだ。
「志、ケガは大丈夫…?」
これはお初さんの声だ。それと、隣にいるのは夫の千春さんだとすぐに分かった。
「…はい」
志はくやしいほど小さな声しか出せなかった。
けれど日々の家事で鍛錬された固い指先が、優しい仕草で志の髪をそっと撫でてくれた。
「そう、よかったわ。もう丸三日も起きないから心配になるじゃない。もう少し元気になったら、またいつでも遊びにおいで。とりあえず、今は精のつくものをよく食べて、よく寝ときなさいね」
志はこくりとうなずき、この小さな幸せにあふれんばかりの感謝の気持ちを感じていた。
(…ありがとう)
***
志は再び目を閉じ考えた。
とても不思議な、長い一夜を過ごしたこと。
人に命を借り、死してもこうして生きている傀ものだった自分は、記憶を失う前の自分と出会った。今こうして、また人の世で生きていけるのは、偶然なのか、必然なのか―――。
果てのない問いは、手を伸ばしても、空に浮かぶ雲をつかむようなもので、その指の先には答えなどない。そこにあるのは、これから待ち受ける遥かなる道がただ広がっているだけだ。
志は心の中に、とても大きななにかを感じた。
それは、運命と似ているが、少し異なるもので、けれどほかの誰でもなく、自分だからこそ巡って来たような気がした。
生と死は、ともにふれあいながら、脈々と生命を巡っている。僕は、生と死の狭間に取り残された哀しき者かもしれない。けれど、壮大な巡りの中の小さな結び目として、自分という存在がいるのではないかとも思った。
それは、「僕」が、男が、そして「あなた」が命を繋いでくれたように。
もしもひとりで生きていたならば、きっとこんな気持ちにはならなかっただろう。理不尽な運命もあっけなく許せたかもしれないし、もしかしたら孤独という不安に押しつぶされていたかもしれない。けれど、僕はひとりで生きていないから、こんな運命もまるまま飲み込んで、真っ直ぐに向き合おうと思えた。
思い浮かぶ「あなた」と記憶と、ともに笑い合える人々のために。
僕はこだわって生きていく。
―――再び訪れるかもしれぬ最期の日まで、それだけは譲らずに。
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