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オレ、傭兵団解散したから結婚するんだ 1
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オレが所属していた傭兵団が経営困難で解散になっちまった。元傭兵団の兵士だったオレと元傭兵団小隊隊長は最期の給料をもらったその足で酒場に来ていた。
「今までお世話になりました」
戦場ではいろんなことがあった。夜中に魔法弾が打たれる音がして眠れない時もあれば昼間に仲間だった奴らが帰ってこなくなることもあった。
それでも小隊長は生き残った団員達と駆け抜けてくれた。
「あぁ、お前たちには世話になった……最期は皆で呑みたかったが仕方ないな」
仲間思いの小隊長。オレにとっては最期に二人で呑めて幸せなんすよ。
「皆で集まるのは最期だからと誘ったんっすけどそれぞれ用事や国に帰る準備があるとかで、すみません……」
傭兵だから仕事が終わったら次の仕事に行く奴もいれば国に残した家族が心配で帰る奴もいる。オレの誘い方が悪かったのか皆に断られちまった。
「まぁいいさ、俺達に別れの言葉は似合わない! そうだろ? 兄弟!」
そう言って彼はジョッキを掲げる。オレもそれに倣うようにジョッキを掲げた。
「はい! こうして呑めて嬉しいっす」
俺が最期まで所属していた元小隊隊長の男はグラスに注がれた酒を飲み干すと寂しそうな表情を浮かべる。オレも自分のグラスに入った酒を一口飲むとため息をつく。
「まぁ、これで傭兵稼業ともおさらばだ。これからは堅気として生きていくしかないか」
前からこれで最期だと言っていた小隊長は本当に傭兵を引退するらしい。オレももう傭兵を続けるのに限界を感じていた。
「そうっすね……隊長はどうすんですか。故郷に帰るんすか?」
「帰っても居場所なんてないさ。俺の名前なんて覚えている奴はいないだろうよ」
彼は自嘲気味に笑うと新しい酒を注文した。オレも田舎に帰っても居場所がない方の人間だからそれ以上はなにも聞かなかった。
「隊長と同じでオレも帰る場所がないんすよね。今まで貯めた金を種銭にして商売できる柄なら傭兵になんてなってねーですし」
平均的な背丈よりチビな体を生かしたら活躍できんじゃないかとアホなことを思いついて傭兵の世界に飛び込んじまったオレ。結果は命があってマシなのか、そうじゃないのかまだ分からない。
「ハハッ違いないな!じゃあ、約束通り俺と結婚するか?」
「へえっ?」
唐突に言われた彼の言葉の意味がわからず首を傾げる。そんな様子をみて彼は呆れ顔を浮かべるとテーブルを強く叩く。
「おいおい、しこたま呑んでたとはいえまさか忘れたのか?五体満足で小隊長が傭兵を辞めることになったら結婚したいっすって一年前にプロポーズしてきたのはお前だぞ?」
「ああっ!? オレ、そんなこと……言ったような?」
確かにオレは結婚したいくらい小隊長が好きだ。でもそれは誰にも、小隊長にも言ったことはない、はずっす。
異世界の母ちゃんがいうには女という男と対になる存在がいるらしいっす。でもこの世界には女は女神ともども異世界に行ったという神話だけが残ってるだけ。どっちを向いても男ばかり多種多様な種族がいるのこの世界。
小隊長はオーガの血を引いているらしく背はでかいし横幅もでかい筋肉の塊だ。一方オレはエルフとのハーフだが淫魔の母ちゃん(異世界出身/ふたなり)に似て背が低くて華奢。
結婚を申し込むにはあまりにも不釣り合いなのはわかってる。それでも、オレはこの人が好きっす。でもプロポーズなんて恐れ多いことをした覚えはまったくないんっすけど、でも……
「そろそろ思い出したか?」
オレを庇ってくれた大きな背中も、怪我したオレをゴツい腕で抱えて基地に運んでくれたことも、欲求不満の男たちをぶっ飛ばしてオレを守ってくれたことなら何度でも思い出せるけど……
「オレ……その……小隊長のこと好きなんで結婚したいっす」
記憶にないけど一回プロポーズしてるならもう二回したって同じ。それに結婚するか?って言ってきたのは小隊長。だから恥ずかしいけど勇気を出して気持ちを伝える。
「おう、よろしく頼むぜ兄弟!」
こうしてオレの片想いはめでたく結ばれたわけだが、この後の展開は予想外だった。なんせ、あれよあれよと言う間に二階の宿に連れ込まれ、水も浴びずにベッドに放りなげられ服を全部剥かれた。
そしてオレは元傭兵団に入る前にいた傭兵団での出来事が体に残っているのを小隊長に見られてしまった。
「今までお世話になりました」
戦場ではいろんなことがあった。夜中に魔法弾が打たれる音がして眠れない時もあれば昼間に仲間だった奴らが帰ってこなくなることもあった。
それでも小隊長は生き残った団員達と駆け抜けてくれた。
「あぁ、お前たちには世話になった……最期は皆で呑みたかったが仕方ないな」
仲間思いの小隊長。オレにとっては最期に二人で呑めて幸せなんすよ。
「皆で集まるのは最期だからと誘ったんっすけどそれぞれ用事や国に帰る準備があるとかで、すみません……」
傭兵だから仕事が終わったら次の仕事に行く奴もいれば国に残した家族が心配で帰る奴もいる。オレの誘い方が悪かったのか皆に断られちまった。
「まぁいいさ、俺達に別れの言葉は似合わない! そうだろ? 兄弟!」
そう言って彼はジョッキを掲げる。オレもそれに倣うようにジョッキを掲げた。
「はい! こうして呑めて嬉しいっす」
俺が最期まで所属していた元小隊隊長の男はグラスに注がれた酒を飲み干すと寂しそうな表情を浮かべる。オレも自分のグラスに入った酒を一口飲むとため息をつく。
「まぁ、これで傭兵稼業ともおさらばだ。これからは堅気として生きていくしかないか」
前からこれで最期だと言っていた小隊長は本当に傭兵を引退するらしい。オレももう傭兵を続けるのに限界を感じていた。
「そうっすね……隊長はどうすんですか。故郷に帰るんすか?」
「帰っても居場所なんてないさ。俺の名前なんて覚えている奴はいないだろうよ」
彼は自嘲気味に笑うと新しい酒を注文した。オレも田舎に帰っても居場所がない方の人間だからそれ以上はなにも聞かなかった。
「隊長と同じでオレも帰る場所がないんすよね。今まで貯めた金を種銭にして商売できる柄なら傭兵になんてなってねーですし」
平均的な背丈よりチビな体を生かしたら活躍できんじゃないかとアホなことを思いついて傭兵の世界に飛び込んじまったオレ。結果は命があってマシなのか、そうじゃないのかまだ分からない。
「ハハッ違いないな!じゃあ、約束通り俺と結婚するか?」
「へえっ?」
唐突に言われた彼の言葉の意味がわからず首を傾げる。そんな様子をみて彼は呆れ顔を浮かべるとテーブルを強く叩く。
「おいおい、しこたま呑んでたとはいえまさか忘れたのか?五体満足で小隊長が傭兵を辞めることになったら結婚したいっすって一年前にプロポーズしてきたのはお前だぞ?」
「ああっ!? オレ、そんなこと……言ったような?」
確かにオレは結婚したいくらい小隊長が好きだ。でもそれは誰にも、小隊長にも言ったことはない、はずっす。
異世界の母ちゃんがいうには女という男と対になる存在がいるらしいっす。でもこの世界には女は女神ともども異世界に行ったという神話だけが残ってるだけ。どっちを向いても男ばかり多種多様な種族がいるのこの世界。
小隊長はオーガの血を引いているらしく背はでかいし横幅もでかい筋肉の塊だ。一方オレはエルフとのハーフだが淫魔の母ちゃん(異世界出身/ふたなり)に似て背が低くて華奢。
結婚を申し込むにはあまりにも不釣り合いなのはわかってる。それでも、オレはこの人が好きっす。でもプロポーズなんて恐れ多いことをした覚えはまったくないんっすけど、でも……
「そろそろ思い出したか?」
オレを庇ってくれた大きな背中も、怪我したオレをゴツい腕で抱えて基地に運んでくれたことも、欲求不満の男たちをぶっ飛ばしてオレを守ってくれたことなら何度でも思い出せるけど……
「オレ……その……小隊長のこと好きなんで結婚したいっす」
記憶にないけど一回プロポーズしてるならもう二回したって同じ。それに結婚するか?って言ってきたのは小隊長。だから恥ずかしいけど勇気を出して気持ちを伝える。
「おう、よろしく頼むぜ兄弟!」
こうしてオレの片想いはめでたく結ばれたわけだが、この後の展開は予想外だった。なんせ、あれよあれよと言う間に二階の宿に連れ込まれ、水も浴びずにベッドに放りなげられ服を全部剥かれた。
そしてオレは元傭兵団に入る前にいた傭兵団での出来事が体に残っているのを小隊長に見られてしまった。
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