60 / 66
ヒーラーの手
8
しおりを挟む
今回はサリサとともに指定された昨日の畑に行くと畦道に座り込む中年から高齢までの男女の姿が見えた。
「ヒーラ様!こっちだよ!来てくれて良かった!」
昨日、毒消しをかけた中年女性が小走りでこちらに向かってきた。
「おー、おばちゃん!こんにちは!」
「奥さん、こんにちは。お加減はいかがですか?」
「ええ、おかげでさまですっかり元気ですよ!うちの人も今日から張り切って仕事に出てますよ」
「効果があって良かったです。でも昨日の今日で指名で依頼されるとは思ってませんでしたわ」
そういわれて女性は大きくうなずきながら言った。
「そりゃあもう、一度で痛みがなくなる魔法をかけてもらったって話をしたら皆興味津々で!なかなか病院に行く時間もないし頼んだよ」
「できる限りのことはやってみます」
「それで何人くらい治すんだ?」
「六人お願いしたいのよ。頼めるかい?」
畦道にいる人はそれより多いようだが、付き添いか何かだろうとカメリアは思った。
「ええ、大丈夫だと思います」
ヒールの使いすぎでMP切れは起きないだろうと判断し、用意してくれていた折りたたみの椅子に座って一人ずつヒールをかけることにした。
******
用意された椅子に座ったカメリアの前におばあさんが立った。
「私は膝と肘に痛みがあって」
「わかりました。力を抜いてくださいね」
カメリアは痛みがあるという場所に手をかざしてヒールをかけた。するとおばあさんは肘を曲げたり伸ばしたりを始め、膝も動かすと「おおっ」と驚きの声をあげた。
「痛くない。治ってるよ」
「ばあちゃん、良かったな。次と順番変わってもらうな」
サリサが率先して誘導係となり、交代を促した。カメリアは他の5人も同じように治していくのだが、3人目を治したくらいからヒールを求める人の列が長くなっている。
(あら?付き添いの方も並んでいるような……?)
気がつくと後ろに10人以上並ばれていて、どうしようかと思っているとサリサに声をかけられた。
「なんか増えてるよな。」
「……確かに増えてますよね。どうしましょう。できるのはできますけども依頼された人は6人ですし……」
「じゃあ、断るか。」
「そうします?正式に依頼を受けたわけではないですし。あとから苦情が来たら困りますものね」
「あ、でも、こっちの話が聞こえたおばちゃんは残念そうな顔してるぞ」
「うっ。では、他の方には改めてギルドで依頼していただくよう伝えましょう」
結局、6人全員をヒールしたが付き添っていた人たちはギルドで依頼して欲しいと伝え。この日はそれで終わることができたのだが……翌日からはもっと大変なことになるのだった。
「ヒーラ様!こっちだよ!来てくれて良かった!」
昨日、毒消しをかけた中年女性が小走りでこちらに向かってきた。
「おー、おばちゃん!こんにちは!」
「奥さん、こんにちは。お加減はいかがですか?」
「ええ、おかげでさまですっかり元気ですよ!うちの人も今日から張り切って仕事に出てますよ」
「効果があって良かったです。でも昨日の今日で指名で依頼されるとは思ってませんでしたわ」
そういわれて女性は大きくうなずきながら言った。
「そりゃあもう、一度で痛みがなくなる魔法をかけてもらったって話をしたら皆興味津々で!なかなか病院に行く時間もないし頼んだよ」
「できる限りのことはやってみます」
「それで何人くらい治すんだ?」
「六人お願いしたいのよ。頼めるかい?」
畦道にいる人はそれより多いようだが、付き添いか何かだろうとカメリアは思った。
「ええ、大丈夫だと思います」
ヒールの使いすぎでMP切れは起きないだろうと判断し、用意してくれていた折りたたみの椅子に座って一人ずつヒールをかけることにした。
******
用意された椅子に座ったカメリアの前におばあさんが立った。
「私は膝と肘に痛みがあって」
「わかりました。力を抜いてくださいね」
カメリアは痛みがあるという場所に手をかざしてヒールをかけた。するとおばあさんは肘を曲げたり伸ばしたりを始め、膝も動かすと「おおっ」と驚きの声をあげた。
「痛くない。治ってるよ」
「ばあちゃん、良かったな。次と順番変わってもらうな」
サリサが率先して誘導係となり、交代を促した。カメリアは他の5人も同じように治していくのだが、3人目を治したくらいからヒールを求める人の列が長くなっている。
(あら?付き添いの方も並んでいるような……?)
気がつくと後ろに10人以上並ばれていて、どうしようかと思っているとサリサに声をかけられた。
「なんか増えてるよな。」
「……確かに増えてますよね。どうしましょう。できるのはできますけども依頼された人は6人ですし……」
「じゃあ、断るか。」
「そうします?正式に依頼を受けたわけではないですし。あとから苦情が来たら困りますものね」
「あ、でも、こっちの話が聞こえたおばちゃんは残念そうな顔してるぞ」
「うっ。では、他の方には改めてギルドで依頼していただくよう伝えましょう」
結局、6人全員をヒールしたが付き添っていた人たちはギルドで依頼して欲しいと伝え。この日はそれで終わることができたのだが……翌日からはもっと大変なことになるのだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる